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【コンパクトカーの革命児!!】トヨタ ヴィッツ 20年間の「栄光と挫折」

掲載 更新 9
【コンパクトカーの革命児!!】トヨタ ヴィッツ 20年間の「栄光と挫折」

 新型ヤリスに託し、20年の歴史に幕。トヨタ ヴィッツが20年間の歴史で掴んだ栄光と挫折とは?

 2020年2月に日本で新型ヤリスが発売されるとともに、ヴィッツの名は姿を消す。1999年に初代モデルがデビューしてから2019年まで、20年間・3代にわたってトヨタのコンパクトカーとしてヴィッツは歴史を歩んできた。

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 そもそもヴィッツは海外で従来からヤリスとして販売されていた。そうした意味では車そのものが消滅するわけではない。

 しかし、車名には名づけたメーカーにとってもユーザーにとっても様々な想いがこもっている。

 そこで、コンパクトカーの一時代を築いたヴィッツの栄光、そして挫折を今一度振り返る。

文:渡辺陽一郎
写真:編集部、TOYOTA
ベストカー 2019年12月26日号

【画像ギャラリー】3ドアからGRMNまで!! 歴代ヴィッツを写真で見る

初代ヴィッツは先進的な本格コンパクトとして1999年デビュー

初代ヴィッツ(1999-2005)/全長×全幅×全高:3610×1660×1500mm

 トヨタは1970年代から1990年代にスターレットを販売していたが、欧州などの海外にも本格的に投入できる新型コンパクトカーを模索していた。

 これを最初に発信したのが、1997年のフランクフルトモーターショーに出展されたコンセプトカーのファンタイムだ。その後に熟成を重ね、1999年に初代ヴィッツが登場した。エンジンからプラットフォームまで新開発され、丸みのある外観も含めて先進的に仕上げた。

 発売時点のエンジンは直列4気筒1Lのみだが、車両重量が800kg少々に収まるから運転しやすい。洗練された内外装と相まって人気車になった。

 発売翌年の2000年には、1カ月平均で1万3394台を登録され、カローラシリーズに迫る売れゆきだ。2018年に登録車の販売1位になったノートが1万1360台だから、初代ヴィッツは少ないグレードで好調に売れたことがわかる。

ヴィッツのライバルとして立ちはだかった初代フィット。カローラの販売首位記録を止めるほどの大ヒット車となった

 ところが2001年6月に、宿敵の初代フィットが発売される。1.3Lエンジンの3グレードのみながら猛烈に売れて、2002年の登録台数は1カ月平均で2万台を超えた。カローラは33年間続いた小型/普通車販売1位を、フィットに明け渡している。

 この時にトヨタの取った対応が凄かった。フィットの発売から半年後には、ヴィッツに1.3Lの買い得グレードを設定して、フィットで売れ筋の「A」と同じ114万5000円で発売した。

 さらに上級のイスト 1.3Fを125万円、デュエット 1.3Vを114万3000円に設定して「フィット包囲網」を完成させている。

競争激化のなか人気を復活させた2代目ヴィッツ

2代目ヴィッツ(2005-2010)/全長×全幅×全高:3750×1695×1520mm

 2000年代の中盤になると、日本車ではフィット、マーチ、デミオ、海外ではVWポロやプジョー 206など、コンパクトカーの競争がいっそう激化した。

 2代目ヴィッツは、この流れを受けて2005年に発売。外観は初代に似ているが、機能を幅広く向上させた。ホイールベースを90mm拡大して後席の足元空間を広げ、インパネの中央にはシルバーのパネルを装着して、質感をミドルセダン並みに高めた。

 メカニズムではサスペンションとブレーキを新開発している。衝突安全性とボディ剛性も高まり、走行安定性、乗り心地、操舵感などを改善させた。

 荷室の広さとシートアレンジは、燃料タンクを前席の下に搭載するフィットが優れていたが、車両全体の満足度は2代目ヴィッツが上まわる。2005年の登録台数は1カ月平均で1万995台になり、人気を復活させた。

販売現場を悩ませた現行ヴィッツ

3代目ヴィッツ(2010-2019)/全長×全幅×全高:3945×1695×1500mm

 しかし、2010年に発売された3代目ヴィッツには落胆させられた。

 ホイールベースをさらに伸ばして後席と荷室を広げたが、内外装の質、乗り心地、ノイズが全般的に悪化したからだ。2008年に発生したリーマンショックの影響で、過剰なコスト低減を強いられ、商品力に悪影響が生じた。

 特に直列3気筒1Lエンジンを搭載する14インチタイヤ装着車は、エンジンの透過音が大きく乗り心地は粗い。ネッツトヨタ店のセールスマンが「これでは先代型のお客様に、乗り換えを提案できない」と悩むほどだった。

 それでも発売直後は好調に売れたが、2011年12月にハイブリッド専用車のアクアが登場すると、ヴィッツは顧客を奪われた。2012年と2013年は、登録台数が2年連続で20%近く減少している。

 アクアとプリウスを下まわり、2014~2016年にはヴォクシーにも抜かれた。2017年にハイブリッドを加えたが、遅きに失した印象が強かった。

 また、この時期には、トヨタ車全般のフロントマスクが変更され、ヴィッツも2014年と2017年に顔立ちを大きく変えた。ボディ側面の形状は基本的に同じだから、外観のバランスが悪化している。

新型ヤリスは「ヴィッツの反省に基づく車」

2020年2月に発売される新型ヤリス。ヴィッツの歴史も背負いコンパクトNo.1モデルを目指す

 ちなみに2010年頃までのトヨタは、自社製品よりも販売台数の多いライバル車を許さなかった。

 そのためにフィット包囲網も生まれたが、今のトヨタはライバル車に優しい。よいことのように思えるが、実際は他メーカーの天敵が不在になって緊張感が緩み、商品開発力と国内販売が低迷する一因になっている。

 新型ヤリスは、3代目ヴィッツの反省に基づく車だ。開発者は車名をヤリスに変えた理由に、3代目の需要が従来型からの乗り換えにとどまり、新規顧客を獲得できず売れゆきを下げたことを挙げている。

 そこで新型ヤリスは、走行安定性、乗り心地、操舵感、内装の質などを向上させ、名誉挽回に乗り出す。ヤリスを皮切りに、再びトヨタ車の商品力を高め、日本のクルマ界に緊張感を蘇らせてほしい。

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みんなのコメント

9件
  • 3代目はアクアに喰われちゃったね

    そして中途半端な位置づけの車になった

    新型に期待だな
  • 初代が一番エポックメーキングだった。
    2代目以降は、トヨタ色が強くなるにつれて魅力が薄くなっていったような気がする。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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