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なぜ!? EU連合が2035年「EV以外売らない」宣言! 欧州が電動車シフトに急ぎ出した「理由」とは

掲載 更新 138
なぜ!? EU連合が2035年「EV以外売らない」宣言! 欧州が電動車シフトに急ぎ出した「理由」とは

■HEVやPHEVもNG!? 厳しすぎるEUの「ゼロエミッション」宣言

2月中旬、「欧州では2035年、事実上ガソリン車だけではなくハイブリッド車(HEV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)も新車販売できなくなる!」とのニュースが日本で一気に増えました。

欧州では一体何が起こっているのでしょうか。

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これらのニュースは、欧州連合(EU)が2023年2月14日に報道発表したものを受けて、各種報道やSNSでの個人の意見などが広まったからです。

こうした報道やSNSでの情報では、「事実上」という表現が使われる場合が多い印象があります。

ここで注目したいのが、今回の報道の根拠である、欧州連合が公開した新しい法案「FIT for 55: zero CO2 emission for new cars and vans in 2035(以下FIT for 55)」です。

EU議会ではこの法案について投票が行われ、賛成340、反対279、棄権21によって法案は可決されました。

FIT for 55の詳細を知ると「事実上」という一連の報道での書き方の意味が分かります。

FIT for 55の「55」とはCO2排出量の削減率を指す数字です。欧州域内で2030年時点に販売する乗用車について、1990年比でCO2排出量を55%削減することを目指します。

また、VAN(小型商用車)は、2030年に50%削減と定めました。

さらに、2035年には乗用車と小型商用車のそれぞれで1990年比100%削減となります。

この100%削減とは、いわゆるZEV(ゼロエミッションヴィークル)と「事実上、同じ」だと考えられるため、現時点での自動車技術の中では、EV電気自動車〉またはFCV(燃料電池車〉のいずれかに該当します。

そのため、ガソリン車のみならず、ガソリンエンジンとモーターを融合して使うハイブリッド車やプラグインハイブリッド車も販売できなくなる、という解釈です。

エンジンを発電機として使う、シリーズハイブリッド車の日産「e-POWER」や、これから市場導入されるロータリーエンジンを発電機として使うマツダのプラグインハイブリッド型シリーズハイブリッド「e-SKYACTIV R-EV」も2035年以降は欧州で新車販売できないことになります。

なお、FIT for 55では、販売台数が乗用車では年間1000台から1万台、また小型商用車で年間1000台から2万2000台と比較的小規模なメーカーについては、2035年末まで規制の適用を考慮する可能性があります。

例えば、スーパーカーブランド「ランボルギーニ」の2022年販売総数は9233台であり、この対象になります。

同社のステファン・ヴィンケルマン社長は2022年11月、筆者の質問に対して「2028年にEVを量産するが、プラグインハイブリッド車を含めて(内燃機関も継続するため)カーボンニュートラル燃料の活用を考えていきたい」と欧州規制を踏まえた発言をしています。

そのほかEUは、年間1000台以下の小規模メーカーについては、2035年以降も対象外になる可能性があるとしているため、富裕層向けの超高級ブランドやスーパーカー/ハイパーカーでは当面の間、内燃機関が存続するでしょう。

あくまでも筆者の私見による発想ですが、例えばマツダの2シータースポーツカー「ロードスター」の開発や製造について、FIT for 55や他の国や地域への電動化規制への法的な対応をしっかりクリアすることを前提に、「ロードスター」事業をマツダ本体から完全に分離させ、台数限定で次世代化していくという道筋も考えられるかもしれません。

マツダは現時点で、今後の新車ロードマップにロードスターが組み込まれていることを対外的に認めています。

しかしマイルドハイブリッド車などで法規制をクリアするという発想ではなく、内燃機関の継続という観点でロードスター事業を見直すことも一考の余地があるように筆者には思えます。

■欧州でEVシフトがここまで一気に加速し続ける2つの理由とは

それにしても欧州ではなぜ、FIT for 55による事実上のEVシフトが一気に加速しているのでしょうか。

背景には、大きく2つの理由が考えられます。

ひとつは、ESG投資です。

従来の財務情報だけではなく、E(エンバイロンメント:環境)、S(ソーシャル:社会性)、そしてG(ガバナンス:企業統治)を重要視した投資のことを指します。

2010年代後半からESG投資に対する考え方がグローバルで一気に広がる中、欧州連合が掲げていた欧州グリーンディール政策がより強固な形に変化していったように感じます。

それまでも、地球温暖化について協議するCOPを筆頭に、SDGs(持続可能な達成目標)という考え方が欧州内でも徐々に広まっていきました。

それがESG投資の躍進によって、自動車産業に対する経済対策と金融対策が融合するようになり、これが欧州にとっての強みになるという考え方が広まり、欧州の一部の国や地域でのEVシフトに向けた政治的な判断が強まった印象です。

もうひとつは、エネルギー安全保障(エネルギーセキュリティ)です。

言うまでもなく、ロシアのウクライナ侵攻が大きなきっかけとして挙げられます。ロシアからの天然ガス供給を受けていた欧州では、電力を含めたエネルギー価格の高騰が庶民を直撃している状況です。

こうした「万が一」の状況に備えて、エネルギー全体のあり方についても欧州の国や地域で様々な動きが生まれています。

その中で、社会全体における、バッテリーや燃料電池を使う移動体の役割についても、抜本的な政策転換の議論が高まってきたと言えるでしょう。

元来、世界的に見てEVシフトと言えば、1990年に施行された米カリフォルニア州のZEV法(ゼロエミッションヴィークル規制法)を筆頭に、同州との技術的な連携を基盤として考案された中国のNEV(新エネルギー車)政策が目立つ存在でした。

日本の自動車メーカーも、こうしたアメリカと中国の動きの両方を睨みながら、EVやFCVを含めた将来の電動化戦略を練ってきたという経緯があります。

もちろん、欧州でのCO2規制は世界で最も厳しいということは、日本の自動車メーカーも十分に理解していました。

とはいえ日本の自動車産業界では今でも「まさか、欧州でここまで急に話が進むとは想定外だ」という人が少なくないでしょう。

欧州ではバッテリーの資源採掘や製造工程における人権問題も含めたバッテリー規制が、アメリカでは対中政策も含めたインフレ抑制法がそれぞれ強化されるなど、欧州でのEVシフトは多方面に飛び火しており、日本メーカー各社は対応に追われている状況です。

こうした中、日本は「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」や「GX実現に向けた基本計画」を明らかにしています。

その上で、自動車メーカーや二輪車メーカーによる業界団体である日本自動車工業会は「日本市場はもとより、国や地域の規制や社会情勢によって、電動化や環境対応は適材適所で行うべき」という姿勢を貫いているところです。

そのため日本市場では、モデルラインアップの今後の変化を含めて、欧州メーカーと日本メーカーの間でもEVシフトに対する温度差があるのが実状です。

欧州でのEVシフトは今後、日本市場に対しどのような影響を与えるのか、これからの市場動向を注視していきたいと思います。

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みんなのコメント

138件
  • でもさ、
    槍玉に挙げているのはクルマだけだよね。

    そんなに環境ガーって言うなら、
    どうして船や飛行機、それに鉄道は
    ノータッチなの?
    それらだって燃料を燃やしてるじゃん。

    特に鉄道は、日本ならハイブリッドも充電式も
    燃料電池もやってるけど、そういった国は
    やれたところでハイブリッドではなく、
    全く連携していない二つの動力を持つ車両が
    せいぜい限界でしょ。

    そういうところで、
    環境保護というフレーズを便利な言い訳にして
    金儲けしてるのがバレバレなんだよ。
  • 愚かな行為。日本は追随しないで堂々としてるべき
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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