トラフィックジャムパイロットとは
text:Hajime Aida(会田肇)
【画像】【図解】改良新型レジェンドの条件付き自動運転【カラーラインナップも】 全51枚
ホンダは3月4日、自動運転レベル3での走行を可能にする「Honda SENSING Elite(ホンダセンシング・エリート)」を搭載した改良新型レジェンドを発表した。
高速道路上での渋滞時にシステムがドライバーに代わって運転操作を行うもので、国土交通省より同レベルの「自動運行装置」として初めて型式指定を取得している。
「ホンダセンシング・エリート」は、現在ホンダ車で展開されている「ホンダセンシング」の中でも、“エリートな”(精鋭・優れた)技術の象徴として命名された。
とくにトラフィックジャムパイロットは、自動運転レベル3の自動運行装置として実現した先進技術であり、限定領域で作動する「条件付自動運転車」のカテゴリーに含まれるもの。
作動時はシステムがドライバーの代わりに運転操作を行うため、ドライバーは走行中でもTV放送やDVDなどの動画を視聴したり、目的地検索などのナビ操作が可能となるわけだ。
「安全性・信頼性」を最優先
車両制御においては、3次元高精度マップや全地球衛星システム(GNSS)の情報を用いて、自車位置や道路状況を正確に把握。
新型レジェンドに搭載された多数のセンサーで周囲360°をセンシングしながら、レベル3での自動運転走行を実現する。
同時に車内のモニタリングカメラでドライバーの状態を見守り、こうした様々な情報をもとにメインECUが認知・予測・判断を適切に行い、アクセル、ブレーキ、ステアリングを高度に制御して上質でスムーズな運転操作を支援するのだ。
本田技術研究所/先進技術研究所のエグゼクティブチーフエンジニアである杉本洋一氏は事前の内覧会の席上、「システム開発においてもっとも重視したのは安全性・信頼性だ」と話す。
そのためにリアルワールドでのシチュエーションを想定できる専用シミュレーターを使い、約1000万通りのシーンを再現。
全国の道路約130万kmをリアル走行し、そのデータをシミュレーションに反映させて検証を重ねて来たという。これにより、万が一いずれかのデバイスに何らかの不具合が生じた場合でも安全性・信頼性に配慮できる冗長設計へとつなげているわけだ。
では、トラフィックジャムパイロットはどのように作動するのか?
作動するための条件は?
具体的には、ハンズオフで高速道路本線上を走行中、渋滞に遭遇して時速30キロになると自動的にシステムが作動。
そして、速度域が時速50キロを超えるとトラフィックジャムパイロットは終了し、システムから運転を引き継ぐように車両側から促される。
そのあとは、車線維持支援システム(LKAS)を伴ったアダプティブ・クルーズコントロール(ACC)へと引き継がれるといった流れだ。
この作動にあたってはまず、高速道路の本線上にいて自分の位置が正確に分かる状態にあり、その上で前後に車両が走行していることが基本条件。
さらに道路上の白線を認識できる状態にあることが必要で、そのために強い雨や雪などによる悪天候でないことや、濃霧や強い逆光など著しく視界が悪くないことが求められる。
また、ドライバーがいつでも運転を引き継げる状態にあることは言うまでもない。こうした条件をクリアして初めてトラフィックジャムパイロットは作動するのだ。
遅い先行車 ハンズオフで追い越し
「ホンダセンシング・エリート」ではトラフィックジャムパイロットとも関わる機能として、高速道路や自動車専用道路でのハンズオフ機能を搭載する。
システムが、ハンズオフの状態であっても車線内の走行や追従を支援し、ドライバーが周囲の安全を確認してウインカー操作をするとシステムが車線変更に伴う運転支援を行うことができるのだ。
さらにハンズオフ機能付き車線内運転支援機能で走行中、高度車線変更支援スイッチをONにすると、前方に車速の遅い先行車を検知するとシステムが状況を判断。
ドライバーに告知したうえで、追い越しや車線復帰を支援することも可能となっている。
運転継続が困難 左車線へ
また、「ホンダセンシング・エリート」では、トラフィックジャムパイロットの機能を活用して、体調不良などで運転継続が困難になったときにも対応ができる。
ドライバーがシステムからの操作要求に応じ続けなかった場合、左車線へ車線変更をしながら減速・停車を支援するのだ。
トラフィックジャムパイロットでは、ハンズオフ機能の終了でシステムから操作要求が行われるが、万一その要求に反応がないと警告音を強め、シートベルトに振動を加えて視覚、聴覚、触覚によってドライバーに応じるよう促す。
それでもドライバーが操作要求に応じ続けなかった場合は、ハザードランプとホーンで周辺車両への注意喚起を行いながら、減速・停車を支援するのだ。路肩がある道路上では、左側車線に向かって減速しながら車線変更を支援することも行うという。
また、このレベル3の「自動運行装置」として初めて型式指定を取得するにあたっては、車両後方に、自動運転走行することを示す専用のステッカーを貼ることになる。
これは自動運転中は常に法定速度で走行するため、それを周囲に知らせる必要があるからだ。さらに今後、自動運転車が増えてきた際に、歩行者がその存在を怖がる可能性もある。
また、走行中に動画を見ていて、それが警察からの取り締まりに遭わないようにするにも役立つ。
新型レジェンドのラインナップは、ハイブリッドEXホンダセンシング・エリートのモノグレード。価格は税込1100万円。3月5日より全国で100台限定で販売されている。
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みんなのコメント
ETCゲートの入り口から出口までの自動運転レベル3を実現して欲しい。