レクサス欧州がLCの2024年モデルに世界で初めて、フロントバンパーの側面にカナードを成形によって組み込まれたバンパーを採用した。このカナードを量産車に装着することでどんなメリットがあるのか、レーシングドライバーとしての知見から語ってもらった。
文/松田秀士、写真/レクサス、三菱自動車、ベストカー編集部
レクサスLCが市販車で初採用! エアロパーツ「カナード」のメリットっていったい何よ!?
■カナードの装着効果とは何か?
2023年4月、レクサス欧州がLCに市販車で初めてカナードをフロントバンパーに採用している
レクサス欧州は2024年モデルに世界で初めてフロントバンパー側面にカナードを成形によって組み込まれたバンパーを採用する。では、カナードを装着するとどんな効果があるのだろう?
筆者自身、これまでグループCやツーリングカー、さらにGTマシンなどさまざまなカテゴリーでカナードを装着したレーシングマシンでレースをしてきた。確かにフロントの接地感が増し、アンダーステア対策に効果的だったカナードもあれば、まったく何の変化も感じなかったカナードもあった。
レーシングカーに装着するカナードは、大きく弓状に反った見るからにフロントバンパーを空気の圧力で押さえつけそうなイメージを持つが、実は押さえつける力はそれほどでもない。
カナードを装着する本当の意味はフロントフェンダーサイドの空気の流れに変化をもたらし、正圧でフロントを押し上げようとするフェンダー内の空気(揚力)を外に逃がして負圧にすることで、フロントを押し下げる効果を生むことにある。
同時にフロントディスクブレーキの冷却効果も上がるのだ。左右のフロントフェンダー上にスリットの開口部を設けて空気を上方に抜くタイプのものもあるが、これも同じ効果を狙ったものだ。
■日本では2017年4月以降、カナード装着は車検通過が不可?
欧州仕様ではカナード装着OKではあっても日本では法規上、まだ厳しいか
ところが、このカナードを装着すると車検を通らない。2017年4月1日以降、乗用車の外部突起に係る新基準が適用されていて、これはそれまでの猶予処置の終了と合わせて「曲率半径が2.5mm未満である突起物を有してはならない」となった。なんだかわかったようなわからない新基準であるが、要するに鋭利な突起物はダメよ、ということである。
で、レクサスのカナードは欧州向けではあるが日本の基準もクリアするのではないか? と見ていて、レクサス国内モデルにも採用されることを期待させるのだ。
そこで、これまでに国内市販車で採用されたカナードを含めたエアロパーツを検証してみよう。2017年4月1日以前のモデルは新基準適用前で、さらに2011年5月31日施行の保安基準以前のモデルはなかなか激しいエアロパーツを装着していた。
1999年暮れに発表され、2000年に発売開始となった第2世代ランエボ最後のモデル、トミー・マキネンエディションのフロントマスク
当時の国産車で思い切ったエアロを装着していたモデルといえば、真っ先に浮かぶのがランサーエボリューションだ。2000年にデビューしたランエボVIトミー・マキネンエディションにはカナードというよりは空気をフロントバンパー全体ですくい上げるような形状でエアインテークも巨大。リアウイングは上下2段式だった。
ランエボVIトミーマキネンエディションの二段式リアウイング。このリアウイング自体はエボVIから採用されていた
筆者の感想としては小舵角でピーキーに曲がり、アンダーステアを感じさせない非常に俊敏なハンドリングだったと記憶している。それがこのエアロの効果によるものかは「?」だったが、高速域ではリアウイングの効果で若干リアの落ち着きがあった。
■ボーテックスジェネレータの威力を発揮したエボVIII MR
2004年に登場したランエボVIII MR。ルーフエンドに突起状のボーテックスジェネレータを採用していた
そして、その後非常に注目したのがランエボVIII MRのルーフエンドに装着されたボーテックスジェネレータだ。8つの縦フィンが縦渦を発生させてリアの揚力と空気抵抗を同時に低減するというもの。
この技術は少し前になるが、ホンダアクセスが現行シビックタイプR用に開発したリアウイングの裏面に鋸歯状の突起がデザインされている。直進状態では空気の流れを整流してダウンフォースを増すが、コーナリングに入ると徐々にダウンフォースが減少し、フロントの切れがよくなるというもの。
ホンダアクセスが開発したシビックタイプR用のリアウイング。裏面には鋸歯状の突起が装着されている
筆者も群馬サイクルスポーツセンターで試乗したが、明らかにリアが落ち着き余計な上下動を起こさなくなり、しかもコーナーへのターンインが素直になることを鋸歯状が施されていないノーマルのウイングとの比較試乗で実感した。
しかし、それよりも驚いたのはN-BOXのルーフエンドにこの鋸歯状の突起物を張り付けたもののあるなし比較。60km/hレベルの速度でも驚くほどリア、そして車体全体が安定するのだ。つまりエアロダイナミクスは我々が普段走らせている速度域でも充分に効果を出しているということ。当然、燃費にも影響する。
■実際のインディでもボーテックスジェネレータは効果絶大!
ランエボVIII MRのルーフエンドに採用されていたボーテックスジェネレータ
そこで筆者が長いレース人生で一番驚いた空力パーツの話をしよう。それは1994年から出場したインディ500でのこと。練習走行中にメカがフロントサスペンションとサイドポンツーンの間のモノコック両横に縦に小さなウイングを付けたのだ。メカはこれをボーテックスジェネレータと呼んでいた。
筆者は疑心暗鬼だった。なんといっても平均速度360km/h以上のインディ500。こんなものを付けたら抵抗になって遅くなるんじゃないかと。しかし、走らせるとすぐに感じた。驚くほどマシンが安定し、すぐにタイムアップしていったのだ。
筆者はインディカーをドライブしていた経験を持つ。カナードの効果をレースの現場で実感していた
当時のインディカーはF1よりも大きなタイヤを採用するフォーミュラカー。露出したタイヤはそこら中で乱れた空気の流れを発生するわけで、小さなボーテックスジェネレータは大きな整流効果を生んでいたわけだ。しかも速度域が高いからその違いをはっきりと感じられたのだ。
つまり、空気の流れを整流することは、それが車体のどこであっても効果が生まれる。レクサスのカナードも標準採用されるわけだから効果はあるはず。最近のクルマは燃費改善の目的も兼ねてエアロダイナミクスが進化している。だからよりいっそうカナードなど空力パーツの効果は大きい。
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