遊び心あふれるミニカーシリーズ
ミニカーのデザインは、世界最高の仕事? 「間違いなくそうです」とホットウィール(Hot Wheels)のクリエイティブ・ディレクター、クレイグ・カラム氏は言う。
【画像】「どうすれば子供たちが喜ぶか」を考える仕事【ホットウィールを写真で見る】 全4枚
「玩具のデザインの世界では、子供たちに楽しさを提供しているのです。子供たちが何に夢中になるか、何に喜ぶか、そして子供たちの成長につながるものは何かを日々考えています。そうしたことを念頭に置いて仕事ができるのは、本当にやりがいがあります。子供たちの笑顔ほど、この世に薬となるものはないのです」
カラム氏は、ホットウィールの誕生のきっかけとなった、遊び心あふれる姿勢を体現している。1968年にエリオット・ハンドラー氏(妻のルース氏はバービー人形を世に送り出した)が発案したホットウィールの最初の商品は、たくましいアメリカンスタイルを体現した青色のシボレー・カマロを含む「スイート・シックスティーン」シリーズだった。
現在のラインナップははるかに多様化している。常に約450種類のクルマがあり、その半数近くが同年に新発売されたものだ。メーカー公認の実在モデルと、突飛なホットウィール・オリジナルモデルに分かれており、後者は空飛ぶスーパーカーから車輪付きトイレまで、ありとあらゆるものが販売されている。
トラックの荷台を便器にした車輪付きトイレについて、カラム氏は「ピックアップトラックのプロポーションはそのままですよ」と笑う。
カラム氏は英国ベッドフォードシャー州サンディの出身だ。なぜ、米国カリフォルニア州のマテル本社で玩具のデザインを手がけるようになったのだろうか?
5歳の時に母親のシトロエン2CVで学校に通っていた経験が、クルマに興味を持つようになったきっかけだという。
「たくさんの生徒が2CVを見て大喜びしていたんです。わたしは『わあ、クルマってこんなふうに人々の反応を引き起こすことができるんだ』と思いました」
彼はすぐに、クルマのスケッチを描くようになった。「ヘリポート付きの風変わりな移動式ホテルなどをデザインしていました。母は『あなたは自動車デザイナーになれるわ』と言ってくれました。わたしは、それが自分のやりたいことだと気付いたんです」
コベントリー大学で自動車デザインコースを修了した後、実物大の車両のデザインに取り組んでいたところ、彼のもとにレゴ社(マッチボックスやホットウィールと並んで、幼少期から大好きだった玩具)からのオファーが届いた。
レゴに9年間在籍し、「スピードチャンピオン」シリーズの導入に携わったカラム氏は、2022年末にホットウィールのデザイン・マネージャーとして米国に移った。
実車を「スケールダウン」するだけではない
カラム氏は職務上、新型のスポーツカーやスーパーカーにいち早く触れられるという特権がある。玩具デザインのプロセスには1年~1年半を要し、実車とほぼ同時に玩具が発売されるためだ。
ホットウィールのデザインは、ただ実車を1:64スケールに縮小するだけではない。デザインチームは既定の車輪サイズを基準に、実車の特性を深く掘り下げて、プロポーションをうまく調整しなければならない。もちろん、発売時の価格を念頭に置きながら。
「1ドルで1:64スケールの完璧に正確なクルマを作るのはとても難しい」とカルム氏は断言する。
デザイナーたちはAIや3Dプリンターといった最新技術を活用している。特に3Dプリンターは、ダイキャストの試作品を素早く手の平に作り出し、有名なオレンジ色のコースで効率的にテストを行うことができる。
「(テストでは)ループ・ザ・ループができるかどうかを確認します。そうすれば、コース上で問題なく走れるかどうかがわかるんです」
「いつも大変な仕事ばかりというわけではありません。デザイナーは皆、5歳児の持つ喜びと創造性を忘れないように努力しています。わたし達は、できるだけ大人にならないようにしているのです」と彼は微笑む。
しかし、サステナビリティ(持続可能性)への取り組みが強まるにつれ、業界も変化を求められている。
「わたし達にできる最もサステナブルなことは、何世代にもわたって受け継がれるような、永遠に長持ちするおもちゃを作ることだと思います」
「しかし、素材やリサイクル可能性については当然ながら注目しています。当社のパッケージングチームも、その点に重点的に取り組んでいます。マッチボックス(マテル社の別の玩具ブランド)ではすでにパッケージが変更されており、間もなくホットウィールのサプライヤーにも導入されるでしょう」
8月に英国で開催されるイベント、ホットウィール・レジェンドツアーでは、カスタムカーのオーナーたちが自分の愛車をミニカーにしてもらうために競い合う。優勝したカスタムカーは、ホットウィールとして世界中で販売される。
「わたしはこの英国ツアーが大好きです。本当に洗練されたデザインが生まれますから」
カラム氏も趣味でクルマ(実車)をコレクションしており、ホットロッドや17歳で運転免許を取得して以来所有している1970年代のミニなどがある。それらをホットウィールのラインナップにこっそり忍ばせたくなることはないのだろうか?
「自分のクルマを無理やりラインナップに加えるのは、できるだけ長く我慢しようと思っています。いずれにしても、当社のレジェンド・シリーズのデザインはどれも素晴らしい出来です。愛車に対するオーナーたちの熱意をわたしと比較したら、彼らに失礼でしょう」
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みんなのコメント
近年のは前後輪は同サイズになった反面、今度は前輪が肥大化して違和感が凄い。
1000円近くする高級ラインのは比較的実車に近くなってはいるけど、ライトが塗りで安っぽいのが残念。