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半世紀前に日本一獲得!! 日産ブルーバード 在りし日の面影と意義

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半世紀前に日本一獲得!! 日産ブルーバード 在りし日の面影と意義

 2019年4月4日、衝撃のニュースが自動車業界を駆け巡った。日産のノートがe-POWERに後押しされ、2018年度の登録車国内販売台数ナンバーワンに輝いたのである。

 日産が販売台数においてトップに立ったのは1968年度以来の快挙だ。3代目のブルーバード(510型)が偉業を達成してから50年もの月日が流れていた。

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 では、50年前に快挙を達成したブルーバードとは、どのようなファミリーカーで、何が評価されたのか。1位を獲った当時の時代背景や現代のノートとの比較も含めて改めて振り返る。

文:片岡英明/写真:NISSAN、編集部

トヨタを破った! 510型ブルーバードの衝撃

1967年に登場した510型ブルーバード(写真は4ドアセダン仕様)。全長×全幅×全高は4095×1560×1420mmで、全長は奇しくも現在のノート(4100mm)とほぼ同じだ

 ブルーバードは、日産、そして日本を代表するファミリーカーだ。誕生したのは1959年7月で、初代ブルーバードの型式は310だった。品のいいデザインと快適なキャビン、そして走りのよさがウケ、空前のヒット作となっている。

 だが、1963年に登場した2代目の410型は、尻下がりのデザインが酷評され、ベストセラーカーの座から滑り落ちた。代わって首位に立ったのは、トヨタのコロナである。そこで王座を奪還するために開発したのが3代目ブルーバード、510型だ。

 デザインだけでなくメカニズムのすべてを刷新し、当時の最新技術を積極的に採用している。開発陣は「ビス1本まで新しい」と豪語した。

 プロジェクトチームを率いるのは23人だ。先代の410系ブルーバードは丸みを帯びたデザインだったが、酷評されたため3代目は直線基調のシャープなラインとしている。超音速旅客機のSSTが話題をまいていたので、このウエッジシェイプボディを「スーパーソニックライン」と名付けた。

 また、当時は常識だったサイドガラスの三角窓を廃し、外気を車内に導くベンチレーションシステムを採用したことも注目を集めている。

コロナに勝ったパワフルさと欧州車に負けない足回り

ブルーバードの高性能モデルに位置付けられた「SSS(スリーエス)」。写真は1970年に追加された1800SSSのクーペ。排気量の拡大で最高出力は115psに引き上げられた

 エンジンはコロナがOHVだったのに対し、時代を先取りした直列4気筒SOHCを開発した。

 後に名機と言われる「L型」系列のエンジンで、デビュー時は1.3Lと1.6Lを設定している。スポーティグレードの1600 SSS(スリーエス)が搭載する1.6LのL16型エンジンはSUツインキャブ仕様だ。

 トランスミッションは、独特のシフトフィールが特徴的なポルシェシンクロの4速MTだ。当時はクラス最強を誇り、ラリーやレースでも活躍した。ファミリー系モデルに搭載される1.3LのL13型エンジンも、排気量に勝るコロナ1500の1.5Lエンジンよりパワフルだった。

 また、サスペンションも新設計だ。最初は410型の改良版を予定していたが、欧州車に負けないように開発中のローレルのリアサスペンションに格上げしている。フロントはストラット式、リアにはセミトレーリングアームの独立懸架を採用した。

 この時代、コストのかかる4輪独立懸架のサスペンションを採用する車は少数だ。コロナもリアはリーフスプリングによるリジッドアクスルだった。その差は歴然で、コーナーでの踏ん張りと限界性能は驚くほど高い。

 日本の悪路で徹底的にテストしただけでなく、氷点下30度のアラスカにも持ち込み、寒冷地テストを実施している。

 この時に対策を施した防錆対策やサスペンションの手直しなどは耐久信頼性の向上に大きく寄与した。過酷なラリーフィールドで速く、タフだったのは多くの人が知るところである。

一大ブーム起こしたブルーバードの実力と評判

クーペ1800 SSSのリアスタイル。この510型は1972年まで販売され、4代目の610型へと引き継がれた

 3代目のブルーバード510型は、仏滅の1967年8月9日にベールを脱いだ。最初は2ドアセダンと4ドアセダンを送り込んだが、1968年11月にリアピラーを傾斜させた2ドアクーペを投入した。

 このクーペはコロナのハードトップに対抗するスポーティモデルである。最近、多くの車が採用している流れるウインカーランプもいち早く設定した。

 先進的なメカニズムを満載し、デザインも美しかった3代目ブルーバードは、発表されるやセンセーションを巻き起こしている。

 筆者も若いときに1967年式のブルーバードSSSに乗っていたが、ワインディングロードを走るのが楽しかった。1600SSSは高性能エンジンを積んでいたし、フットワークも軽やかだ。開通したばかりの東名高速道路でも安定した走りを見せている。

 ブルーバードの評判は自動車専門誌や新聞、そして口コミなどで広く伝わり、販売店には多くの人が詰めかけた。

 生産体制が整うと、クラストップの販売台数を誇ったコロナ(RT40系)を首位の座から引きずり落としている。日本だけでなく北米でも大ヒットを飛ばし、ダットサンブランドの知名度アップに大きく貢献した。

1970年のサファリラリーで優勝を飾った510型ブルーバード

 また、モータースポーツの世界でも大活躍し、勇名を馳せている。名声を世界に知れ渡らせたのは、国際ラリーだ。デビュー直後の1968年からラリーに参戦し、上級クラスのラリーカーを打ち負かしている。

 サファリラリーでも驚異的な走りを見せた。1970年春のサファリラリーでは総合優勝に加え、クラス優勝、チーム優勝の三冠王に輝いている。

 石原裕次郎主演の映画、「栄光への5000キロ」でもスクリーン狭しと豪快な走りを見せた。世界中を驚愕させ、販売面でも大成功した名車が3代目のブルーバード510である。

ノートとブルーバードの「No.1」はどう違う?

e-POWER効果で日産に久々の年間販売No.1をもたらしたノート。キャラや時代背景は違えど、先進的な技術が販売を後押ししたという意味ではブルーバードと共通した部分も感じる

 (ブルーバードが販売トップに輝いた)当時は高度成長期でイケイケの時代だったし、車がステータスだったから憧れの存在であるブルーバードがトップを取ったことに強いインパクトを感じた。

 メカニズムも今の高性能ターボや電子制御サスペンションほどの価値があり、オーナーは優越感を感じたはずである。いずれ中古車として放出されるから、その時に買おうと思った若者も多かった。

 一方で、2018年度の登録車販売No.1を獲得したノートはコンパクトカーであり、道具としての選択だからNo.1は、ある意味で順当な結果といえるかもしれない。 

◆  ◆  ◆

 ブルーバードは2001年に生産を終え、現在ではシルフィがその実質的な後継車として生き残っているが、往時の勢いはなく細々と販売を続けるのみとなっている。

 いま販売No.1の座を奪ったノートに、全盛期のブルーバードにあったような“憧れ”が集まっているかといえば、そうとも言えない。

 自動車の位置づけは時とともに絶変わり、売れる車も時代とともに変わるもの。ただ、ブルーバードのようなクルマが、日本の自動車産業を牽引し、世界一の自動車大国へと押し上げたのではないかと思う。

 50年前と今では自動車を取り巻く環境は大きく変わった。それでも、多くの人々が買い求める車には、「憧れる要素」を込め続けてほしいと思う。 

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