クルマ好きからの人気が高いスバルとマツダ。
【個性派メーカー2社の強み弱みが見えてくる!?】 マツダvsスバル 現行車対決 3選、さらに【あのエンジンは実際どれだけスゴイのか】 マツダvsスバル パワーユニット対決では、同ジャンルのモデル、パワーユニットの比較を通して、両社の強みと弱みとを浮き彫りにしてみた。
【あのエンジンは実際どれだけスゴイのか】 マツダvsスバル パワーユニット対決
今回は4WD、安全装備、デザイン、業績の4つの方面で両社を比較する。
※本稿は2019年6月のものです
文:齋藤 聡、松田秀士、清水草一、清水草一/写真:ベストカー編集部
初出:『ベストカー』 2019年7月26日号
■4WD対決
(TEXT/齋藤 聡)
スバルの4WDは、水平対向エンジンとその後方にまっすぐ取り付けられているトランスミッションのレイアウトの関係で、必然的にトランスファ、あるいはセンターデフによってトランスミッション後端で前後輪に分配される。
スバルは、マルチモードDCCD、ビスカスLSD付きセンターデフ、VTD(不等&可変トルク配分電子制御AWD)、ACT-4(アクティブトルクスプリットAWD)、X-MODE付きACT-4の5種類を保有。マツダはi-ACTIV AWDのみ
そしてフロントデフへはミッションの中を通して駆動が伝えられる。当然後輪へもトランスミッション後端からまっすぐリアデフにパワーが伝えられる。
「シンメトリカルAWD」とスバルが呼ぶ理由がここにある。
前後デフ位置をクルマの中心に持ってこられるので、ドライブシャフトの長さを長く、しかも左右均等にできるので、4輪にバランスよくパワー(トルク)を伝えることができる。生まれ持った素性のよさがスバルにはあるわけだ。
一方、マツダは横置きエンジンのFF車をベースに4WD化しているのが特長だ。フロントデフにパワーを伝えるいっぽうで、そのパワーをパワーテイクオフ(ギア)を介してそのままリアに伝えている。リアデフ直前に電子制御カップリングを配置し、カップリングの多板クラッチによってリアへの駆動トルクを制御する。いわゆるオンデマンド方式の4WDシステムだ。
ただマツダの4WD制御は、ステアリング、アクセル開度、車速、車輪速、G、傾きなどなど、さらにはライトやワイパーまでセンサーとして使い統合制御することで後輪への駆動トルク配分をコントロールしている。
その制御は、これまでのオンデマンド式の4WDのイメージをひっくり返すくらい綿密でナチュラル。特別な知識やテクニックを必要とせず、普通に運転して高性能が引き出せるのが、マツダの4WDシステムの優れた点だ。
一方、スバルは素性がよいとは書いたが、従来の4WDのなかではということ。また、4WDの特性を理解していたほうがより深く性能を引き出せるという点でスバルのほうがややマニアック。性能は互角といえる。
マニアックが好きか嫌いかが勝敗の分かれ目で、マニアック好きな筆者は必然的にスバルに軍配を上げる。
■先進安全装備対決
(TEXT/松田秀士)
スバルは「アイサイト・ツーリングアシスト」、マツダは「i-ACTIV SENSE」が最新の安全装備だ。サポカーSワイドレベルの機能に両社の差はほぼないと考えられる。
では、ドライバーが自発的にセットすることで運転を支援する機能を見てみよう。高速道路などで自動的にアクセルとブレーキを調整、前走車両との車間距離を一定に保ちながら走行するACCだ。
JNCAPで、常に上位入賞する高い性能を見せる両社。2019年は新型フォレスターが最高得点となる96.5点を獲得。だが2017年にはCX-8も最高得点を獲得した経験があり、どちらも先進安全装備には力を入れている
スバルのアイサイトはステレオカメラによってこれをコントロールするが、マツダのi-ACTIV SENSEはミリ波レーダーによる。そこで何が違うのかというと設定最高速。
アイサイトが120km/hなのに対してi-ACTIV SENSEでは高速域と表記されていて、アイサイト以上に設定が可能だ。これはミリ波レーダーとステレオカメラの遠方認識性能の差といえるが、アイサイトの米国仕様は140km/hとなっているようで、今後国内仕様も引き上げられるかもしれない。
そして車線をカメラで読み込んでステアリングをアシストし、車線内中央を維持して走行させるLKA(レーン・キープ・アシスト)。
i-ACTIV SENSEではアシスト介入の早さや強弱をドライバーの好みにセットできる。アイサイトにはそれはない。
さらにACCから独立してLKAを個別にセットできるが、アイサイトはACCとセットでないと使えない。個別機能のカスタマイズが可能なのだ。この機能はマツダの勝ち!
■デザイン対決
(TEXT/清水草一)
マツダ対スバルのデザイン対決。これは誰が見てもマツダの勝ちだ。といっても、最近のスバルは失敗がないので、それほどの大差というわけではなく、両社ともに頑張っている。ただ、デザインに関する基本的なスタンスがまったく異なる。
「クルマに命を与える」をコンセプトに、生命感、躍動感のあるデザインを追求したのが、マツダが現在採用している「魂動(こどう)デザイン」だ。これから登場するモデルは、その次世代型となる
マツダはデザインで世界の頂点すら目指していて、実際にロードスターは頂点に君臨している(断言)。マツダ3のデザインも、あのクラスの頂点かどうかはともかく、頂点レベルにいる。
CX-5のデザインだって、ジャガーEペイスあたりに決して負けていない。コンセプトモデルを見ても、ヴィジョンクーペは現在世界一レベル。デザイン的にいまひとつなのはデミオだけだ。
対するスバルは、デザインで頂点を目指そうという意図はまったくない。狙っているのは、質実剛健な先進性の表現、といったあたりではないか。
現行モデルは今後もキープコンセプトを続け、大きな冒険はせずに、じわじわと熟成を図っていくんじゃないか……。
「安心」をイメージさせるソリッドな“塊感”をベースに、「愉しさ」を感じさせるダイナミックな躍動感を融合させたのがスバルのデザインコンセプト「ダイナミック×ソリッド」だ
それにしても新型フォレスターのデザインは物足りなかったが、失敗というほどではない。
スバルを買う人は、大きな失敗のない、わりとフツーで適度にカッコよくて安心できて質実剛健なスバルデザインを期待しているだろうし、それはそれでいいんじゃないか。
欲を言えば、もうちょっとカッコいい質実剛健を見たいところではある。
■業績対決(2019年3月期決算で比較)
(TEXT/福田俊之)
「似て非なるもの」ということわざがあるが、マツダとスバルの年間売上高は3兆円を超えて会社の規模からみればほぼ同じ中位クラスの乗用車メーカーである。
ところが、両社の財務諸表を比べるとグローバル販売台数や営業利益率、そして配当金を支払う基準となる配当性向などが極端に異なることがわかる。
例えば、2018年度の新車販売はマツダが約156万台に対して、スバルは約99万台。両社とも前の年の実績に比べて落ち込んだが、その差は約57万台も開きがある。
市場別にみても、スバルにとってはドル箱の米国で約65万台以上を販売したが、マツダはその半分以下の約28万台。逆に国内はマツダが約21万台に対し、スバルは度重なる検査不正問題などが販売にも影を落として前年度比28.1%減の約13万台と振るわなかった。
また、世界一の自動車大国の中国市場では苦戦を強いられたマツダでも約24万台を超えたが、スバルはわずか約2万2800台だった。米国偏重の一本足打法で稼ぐスバルと、分散型のマツダとは似ても似つかぬ販売戦略だ。
スバルは、リコールによる品質関連費用や今年1月に発生した電動パワーステアリング装置の不具合による主力工場の操業停止の影響などで本業の儲けを示す営業利益は前年に比べてほぼ半減したが、それでも営業利益率は6.2%を維持。トヨタ自動車、スズキには及ばなかったが、ホンダや日産、三菱自動車よりもはるかに上回る。
一方マツダだが、利益率はわずか2.3%と低く国内自動車メーカー7社では最下位。業績面ではクルマを売っても儲けが少ないマツダに比べれば、現時点では“トランプ関税”問題などのリスクを伴うが米国一点張りのスバルに軍配を上げざるを得ない。
ただ、会社の「決算報告」はいわば、経営の舵取りをする「社長の通信簿」。取引先や株主などからよくも悪くも手腕や力量が問われる。マツダとスバルは昨年6月、偶然にも時を同じくして社長交代を行ったことから、2019年3月期決算は両社の新社長にとっては初心者マーク付きの見習い運転中。
そのことを考慮しても、スバルの中村知美社長は相次ぐ不祥事で前社長から引き継いだ再発防止と組織風土の改革に明け暮れて展望が見えにくい。他方、マツダの丸本明社長は、強みと弱みを明確にしながら2025年までの中期経営方針と新世代の独自技術を搭載した新型モデルを公開するなど、スピード感をもって挑戦している。
下り坂でブレーキがなかなか効かないスバルに対して、通信簿の成績は及第点スレスレでも研究開発費など将来のビジョンを描く経営戦略はマツダのほうが一歩リード。ブランド価値の向上とともに業績回復が期待できそうだ。
* * *
「業績対決」でも触れられているが、スバルの相次ぐ不祥事の問題、マツダの販売不振と、両社ともこの数年がまさに正念場だと言っても言い過ぎではないだろう。
しかしぜひとも両社に忘れないでいてほしいのは、ファンの両社への支持は、まさに「ファンの方を向いたクルマづくり」によって支えられている、ということだ。今回の対決企画の端緒となったアンケート結果も、ある意味そうしたマツダ・スバルのクルマづくりが結実した結果とは言えないだろうか。
どうか、ファンのほうを向いたクルマづくりを今後も続けていってほしい。
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