新型のGR86&BRZの6速ATモデルに試乗したモータージャーナリストの評判がすこぶるいいらしい。どれほどいいのか、凄く気になっている人も多いことだろう。
実際、6速ATの評価はどうなのか? それに加えて、今や99%がATといわれている日本において、国産スポーツカー=MTという図式が崩れつつあるなか、国産スポーツのAT車は何が優れていて、何が足りないのか? モータージャーナリストの橋本洋平氏がじっくりと見極めて解説する。
2022年復活決定! “安くて楽しい”インテグラが体現したホンダらしさ
文/橋本洋平
写真/ベストカーweb編集部、トヨタ、スバル
【画像ギャラリー】スポーツカー=MTはもう過去の話!! 国産スポーツカーのATシフトはここまで進化した!!
■GR86&BRZの6速ATの出来は?
GR86は8月下旬に予約受注受付開始され、10月下旬に正式発表予定
GR86に用意されている6速スポーツAT
そもそもATのメリットはイージードライブであるということが第一に挙げられるだろう。坂道発進もエンストも無縁となれば、誰だってスポーツカーを運転できてしまう。スポーツカーとして嬉しいところはそれだけじゃなく、クラッチを踏まなくて良いために駆動が途切れないというメリットも存在する。
余談ではあるがつい先日、ミニチャレンジカップというMTとATが混走するレースに出てきたのだが、スタンディングスタートでは筆者が乗っていたATは、MTよりも素早くスタートするだけでなく、シフトアップの度に距離が離れて行くことをまじまじと体験した。
すなわち、MTがシフトアップをしようとクラッチを切る度に差が広がるというわけだ。乗っていたATはトルクコンバーターを備えるタイプであり、スリップロスが懸念されるとよく言われるのだが、滑りを減らすためにロックアップ領域を拡大するなどの工夫によってみるみるATは良くなっていることを体感できたのだ。
新型GR86&BRZに搭載されるATも進化を果たした。主にスポーツモードの改良が目玉だ。これは加速側では最速タイムを叩き出すことが可能なようにシフトタイミングを設定しており、レブリミットギリギリでシフトアップを繰り返す。
ロックアップ領域もかなり広く、スリップしている感覚は薄い。一方で減速側は減速Gに合わせたシフトダウンを繰り返し、エンジンブレーキを使えるように高回転をキープ。
コーナー脱出側では最適なギアを選択し続け、素早い加速を続けてくれるという制御だ。パドルを使わず全てをおまかせ制御で走ったとしても軽快に走れる! そこが新型の良さだ。
印象を良くしたのはそれだけじゃない。エンジンが2.4Lへと拡大され、最大トルク250Nm/3700rpmを発生することになったこともATとのマッチングを良くしたと感じられる。旧型の2Lモデルは最大トルク205Nm/6400~6600rpmというスペックで、高回転を維持しなければアクセルのツキが得られないという状況だった。
そこに前述した制御が加わるのだから好感触になるのも当然の流れだろう。回転がドロップしたとしても、アクセルで蹴り出す感覚を味わえる。FRの醍醐味が得やすくなったのは間違いない。
ただし、MTモデルと比較試乗したうえで判断すると、やや物足りない部分があることも事実。実はこのAT本体は旧型のキャリーオーバーであり、ギアのステップ比は旧型と同様、2速と3速とが離れており、4速で直結を迎える。
MTは5速で直結状態となり、それまでを細かく刻んでいるのだから爽快で当然。ATは刻みが荒く、それすなわち回転ドロップが大きくなることから、爽快さがスポイルされるのも仕方がないところだ。
また、新型はトルクが低回転から得られること、そして燃費を達成しようという狙いもあったのだろうが、ファイナルギアを旧型から変更してしまった。具体的にいえば4.100から3.909となったのだ。
そのせいなのか、はたまたギアのステップ比のせいか、高回転は維持しにくくなり、試乗した袖ケ浦フォレストレースウェイでは回転のドロップが気になった。MTに比べればスライドコントロールの自由度は低いなど、まだまだMTにおよばないところが存在する。
気持ち良く仕上がってきたが、ギアのステップ比を見直すか、ファイナル変更がスポーツ走行という観点から見れば欲しいところ。
これまた余談ではあるが、かつてATモデルに旧型86後期のファイナル4.300(ちなみに新型MTのファイナルは4.100)を搭載した旧型86のチューニングカーに試乗したことがあるが、それはMT並みの爽快な走りを実現。MTの必要性を考えさせられるほどだった。様々な制約を解き放つとこれほどまでにATは元気になるのかと痛感させられる一台だった。
スバルBRZは7月29日に発表。価格はRの6速MTが308万円、6速ATが324万5000円。Sの6速MTが326万7000円、6速ATが343万2000円
2.4Lとなり、トルクが太くなったことで6速ATとのマッチングもよくなった
■2ペダルのDCTを搭載するGT-RとNSX
生産終了が決まったホンダNSXと生産が続けられている日産GT-R
様々な制約を解放したスポーツAT(厳密にいえば2ペダルMT)といえば、国産車では日産GT-RとホンダNSXを忘れてはならない。MTモデルがそもそも存在せず、2ペダル一本でいくという体制だった2台だ。
かつてGT-Rの開発陣は500馬力級のクルマをMTにするなど危険すぎると判断したと語っていたことを思い出す。それが本当の理由だったか否かは定かではないが、たしかにハイスピードを達成する状況で駆動が途切れれば危険。3ペダルで乗りこなすのは難しすぎるというのも理解できる。
結果として、こうした考えがあって誕生した2台は、ざっくりいえばともにデュアルクラッチトランスミッションを搭載するモデルとなった。
奇数段と具数段ギアに対してそれぞれクラッチを持たせ、交互にクラッチが締結されることで駆動の途切れもスリップもなく加速を重ねるというシステムだ。
トルクコンバーターを持たないことから、2ペダルMTなどとも称されるが、その仕上がりはともにアクセルに対するダイレクト感がかなり高く、きめ細やかなアクセル操作に対しても反応。車両姿勢のコントロール性はピカイチといっていい。
ともに今回新型GR86&BRZが搭載したスポーツATの考え方はすでに搭載されており、パドルを弾かずともクルマ側が最適なギアを選択することも可能としている。
加えてスタンディングスタートを最も効率よく行うことが可能なローンチコントロールをともに装備していることも究極かもしれない。
定められた設定を行ない、左足でブレーキを目一杯踏み込んだ状態でアクセルを全開にすると、エンジン回転を引き上げたうえでスタンバイ。ブレーキを解除した瞬間にロケットスタートが可能となる。
トルクコンバーター搭載モデルでも、ある程度は似たようなことが可能だが、駆動がかかり続けた状態を無理やりブレーキで止めている状況。デュアルクラッチ搭載モデルはクラッチをフリーにした状態で回転を高めているため、フィーリングもクルマへの負荷もかなり違う。
ウイークポイントとしてはタウンスピードにおける半クラッチ領域の制御に難しさがあることだ。トルクコンバーター式に比べれば滑らかさはなく、セッティングによってはギクシャクしがち。
リプログラミングを繰り返すなどしてマイルドになってきたところもあるが、それは半クラッチを多用することに繋がり精神衛生上は……。
かつて初期型のGT-Rをマイカーとし、様々なセッティング変更を繰り返した経験があるが、結果的にはスムーズになればなるほど、スリップ感があり心地よくはなかった。
さらに、走り込んだ結果としてミッションから異音が出た際、アッセンブリ―交換で300万円オーバーという金額提示をされたこともあった。今では対策が行われてそんなこともないらしいが、いずれにしても高価であることに変わりはない。
■秀逸なスイフトスポーツとGRスープラRZのAT
140ps/230Nmを発生する1.4Lの直列4気筒DOHC直噴ターボを搭載するスイフトスポーツ
6速MTだけでなく専用にチューニングしたパドルシフト付きの6速ATも変速するのが楽しい
だが、そんなスーパースポーツの世界に踏み込まなくても楽しめるATはまだ存在する。その筆頭がスイフトスポーツではないかと思う。こちらはトルクコンバーター式のATではあるが、エンジンとのマッチングがかなり良く、ストレスなく乗れるATということで評判もいい。MTよりもATのほうが好きだという人さえいるほどなのだ。
好感触を得る理由はエンジンの特性だろう。カタログスペックは最高出力140ps/5500rpm、最大トルク230Nm/2500~3500rpm。レブリミットは6000回転あたりである。
つまり、MTでエンジン回転を引っ張り切って乗るという特性ではないわけだ。ダウンサイジングターボで低回転から高過給をかける1.4Lターボは、レブリミットまで回し切ってもそれほどオイシイところはない。
現にサーキットを走る時でも、かつては2速で走っていたようなタイトターンでも、3速で走ったほうが速かったりするほど。あまりシフトを繰り返しても仕方がないところがあったりする。おかげでATでも十分となるわけだ。
ただ、厳密にいえば主にフロントがMTに比べて20kg重くなっているという懸念材料があることも事実。ATが軽くなってくれたらイーブンという世界に持ち込めるのかもしれない。
3L、直6ターボを搭載するスープラRZ
8速スポーツATを搭載し、パドルシフトでも変速できる
さらに同様の特性を持つのはGRスープラ。3Lモデルなら最高出力387ps/5800rpm、最大トルクはなんと500Nm/1800~5000rpmを発生。搭載される8速ATは低回転からロックアップしていることもあり、コントロール性が高く、どんなに回転ドロップしたとしてもアクセルのツキを得られる仕上がりがある。
8速という細かな刻みが爽快な加速にも繋がっているし、これはかなり心地良い仕上がり。MTの準備がそもそもないモデルだが、これならATだって十分に愉しめる。
このようにATでもスポーツできるクルマは多く存在する。MTと併売されるクルマの場合は、若干スポーツ度が落ちることも事実。
だが、その性能はかなり拮抗してきたというのが現状だろう。スポーツカー=MTという固定概念はそろそろ消えつつあるのかもしれない。
【画像ギャラリー】スポーツカー=MTはもう過去の話!! 国産スポーツカーのATシフトはここまで進化した!!
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ディーラー研修用かな?
カッコいいぞ