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1980年代にリトラクタブルヘッドランプで話題になった日本車5選

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1980年代にリトラクタブルヘッドランプで話題になった日本車5選

1980年代に数多く登場したリトラクタブルヘッドランプ採用車のなかでも、印象的だった5台を小川フミオがセレクトした。

格納式(リトラクタブル)ヘッドランプは、過去のものになってしまった。でも、いま見ても、フロントノーズが精悍に見えるし、ライトを格納したときと、ポップアップしたときとで、クルマのイメージも変わるので、なかなか楽しい。

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1960~1970年代の日本車のなかで、リトラクタブルヘッドライトを採用していたのは、トヨタ「2000GT」(1967年)と、マツダ「RX-7」(1978年)ぐらいのものだった。80年代になって、スポーツクーペにまで採用車種が拡大。1990年代を通して、多くの日本車で、スポーティな雰囲気を作るのに使われた。

ただし、マツダの3代目「コスモ」(1981年)やホンダ「ビガー」(1985年)の、4ドアセダンでありながらリトラクタブルヘッドライトというスタイルには、やや無理やり感あり。正直いって審美性も高くなかった。トヨタや日産とはちがう、独自のキャラクターを作ろうとした努力の結果だろうが。

リトラクタブルヘッドライトが登場したのは、北米市場で、ヘッドライトの高さ規制があったためだ。くわえて、露出した円形か角形の米国規格型のライト以外は、1984年までは禁止されていたので、その点でも、ノーズを下げてスポーティな雰囲気を作りたい場合は、ポップアップ式ヘッドライトを採用するのが”逃げ道”だった。

いっぽうで、2000年代に入ったとたん、いっきに採用車種がなくなったのは、ひとつには北米でのライト位置の最低地上高規制が緩和されたことが大きい。もうひとつは、安全性のため。歩行者保護や前面衝突安全性の確保といった安全要件を満たすには、ノーズにある程度の上下幅をもたせることが必要となった。さらに燃費に効く空力の面では、ポップアップ式ヘッドライトは展開時に空気抵抗が増大してしまい、不利なのだ。

こうして、リトラクタブルヘッドライトは、1980年代と1990年代のクルマをデザイン的に象徴する存在になった。だからか、いまみると、とても懐かしい。加えて、低くかまえたノーズをもつウェッジシェイプ(クサビ型)のプロファイル(サイドビュー)も、クルマ本来のカッコよさがあり、色褪せて見えないのだ。

(1)トヨタ「スプリンタートレノ」(AE86)

「ツインカム」(DOHC)エンジンと硬めの足まわりで、スポーツ・ドライブ好きに歓迎された初代「スプリンタートレノ」(姉妹車はカローラレビン)の4代目として1983年に登場。

レビンとトレノは異なる販売チャネルのために開発された姉妹車のため、基本的には同一車種であるものの、AE86ではトレノには格納式ヘッドライトが与えられ、レビンと差別化された。

レビンのフロントマスクが、同時期に発表されたカローラ/スプリンターシリーズとかなり共通したイメージであったのに対して、このリトラクタブルライトのおかげで、トレノのほうが精悍に見えた。

ボディスタイルは、2ドアノッチバックと、2ドアファストバッククーペ。いま考えるとぜいたくにも2種類のボディが用意された。エンジンは1.5リッター販もあったものの、やっぱり、レビン/トレノといえば、1.6リッターの「GT」にとどめを刺す。

サスペンションシステムは、とくにリアは先代からの流用で、それを、運転しての楽しさを念頭にモディファイ。ステアリング比も当時としてはかなりクイックな、ロック・トゥ・ロックは3回転だった。

後輪駆動の走りを追究したため、1987年までの生産期間中、人気が衰えなかった。次世代が前輪駆動となったこともあり、生産終了後も、中古車市場で人気を維持した。

(2)トヨタ「セリカXX」(2代目)

リトラタブルライトのクーペというと、まっさきに思い浮かぶ1台が、1981年に発売された2代目トヨタ「セリカXX(ダブルエックス)」だ。このときセリカシリーズは、同時に3車種が発表された。どれもウェッジシェイプのプロファイルと、3車3様のヘッドライトに特徴があった。

ダブルエックスは、ソアラからもってきた2.8リッター直列6気筒エンジンを収めつつ、ぐっと低く抑えたロングノーズが特徴的だった。一般的なリトラクタブルライトはダブルエックスのみだ。

ヘッドライトを隠してしまうと没個性的になりがちなので、ダブルエックスでは、バンパーをブラックのグロス(ツヤあり)タイプとして、そこにターンシグナルとウインカーレンズを埋め込んだ。それで個性が出たので、トヨタのデザイナーは上手である。

登場したときは、ロータス「エクラ」(1975年)やTVR 「タスミン」(1980年)といった英国のウェッジシェイプのスポーツカーを連想させた。

そのせいもあってか、ダブルエックスの印象は強烈だった。新しい時代のハイパワースポーツカーという訴求をして、それに成功。イメージの確立をねらったデザインが功を奏した。

全長は4660mm、ホイールベースも2615mmと、けっこう大きなサイズである。室内は、電子メーターや、立体的なハイバックシートなど、大胆なデザインだ。ただし、ベロア調のシートクロスを採用するなど、1970年代の米国車的なセンスを引きずっていて、そこは惜しいなあと思ったものだ。

途中で、2.0リッターエンジン車がパワーアップし、2リッター・ターボが加わるなどして、マーケットのすそ野を拡げていった。1986年まで生産されて、「スープラ」と世代交代。スープラもリトラクタブルライトを持っていた。

粗削りでもキャラクターがたっていたのはダブルエックスのほうで、いまでも街で見かけると、おいいな、と凝視してしまう。

(3)日産「シルビア」(3代目)

1983年の日産「シルビア」と販売チャネル対策の姉妹モデル「ガゼール」の3代目は、リトラクタブルライトをそなえたウェッジシェイプになった。全長4.4mメートルと比較的コンパクトで、ボディバリエーションはノッチバッククーペとファストバッククーペの2つ。

スタイリングはよくまとまっていて、破綻がみられない。リトラクタブルライトによって低めになったノーズから、ハイデッキ(高さが高め)スタイルのリアまでのつながりが躍動的だ。

個人的には太いリアクオーターピラーをもったノッチバックが、バランスよく感じられて好きだった。

見かけだおしでなく、BMWあたりを思わせる、まっとうな作りである。看板エンジンは、「R30」型「スカイラインRS」(1981年)からの2.0リッターDOHC「FJ20」。サスペンション形式は、リアが先代のリジッドからセミトレーリングアームに変更になった。

1986年にFJ20型エンジンはカタログから落とされ、メインは1.8リッターターボになってしまう。いまいちど、2.0リッターDOHCの5段マニュアルギアボックス(これしか組み合わせはなかった)に乗れたらと思う。

内装は、米国的な暑苦しい審美観から抜け出して、独自性を追求していた。とくにサイドサポート部が大きなシートは、座り心地も快適で、好感のもてるものだった。

(4)ホンダ「アコード」(3代目)

ホンダでリトラクタブルライトの乗用車というと、1982年登場の2代目「プレリュード」が、まっさきに思い浮かぶ。いっぽう、乗用車にも格納式ヘッドライトを(大胆に)採用したのが、当時のホンダである。たとえば1985年の3代目「アコード」シリーズだ。

同年に、高級セダン「レジェンド」の発表を控えていたこともあってか、従来のアコードはホンダの看板車種だったものの、3代目では冒険的なスタイリングが採用された。

最大の特徴は、当時ホンダがおおきくこだわった低いノーズだ。自慢の凝った設計のダブルウィッシュボーン・サスペンションによって、低いノーズが可能になったという理屈も語られた。

アコード・シリーズでは、セダンもクーペも、それにロングルーフの3ドアという個性的なコンセプトの「エアロデッキ」も、どれもリトラクタブルヘッドライトで、ノーズの低さを強調していた(ただしセダンは1987年に固定式ヘッドライトのモデルを設定した)。

当時ホンダは、三菱やマツダとともに、トヨタと日産を追う立場であり、そのために強めの個性を必要とした。そこで、先述のダブルウィッシュボーン・サスペンションや、「PGM-FI」なる電子制御燃料噴射システムを開発。さらにそのさきには、気筒あたり4バルブの5気筒エンジンや、エンジン回転に合わせて2種類のカムを切り替える「VTEC」などが控えていたのだった。

リトラクタブルヘッドライトにもっとも意味をもたせていたメーカーは、当時のホンダだったと思うのだ。

(5)マツダ「ファミリアアスティナ」

どうしてこのクルマが「ファミリア」なのか。そこがよくわからなかった3代目FWD「ファミリア」の派生車種が「アスティナ」(1989年)である。ほんとは独立したモデルとして出したかったのかもしれない。でも欧州ではよく売れたそうだ。マツダ がずっとデザインに注力してきたとよくわかるモデルだ。

リトラクタブルヘッドライトで、うんとノーズを低くし、さらにラテン系スポーツカーのように前輪から先のオーバーハングを伸ばしたスタイルに特徴がある。

目をリアに転じると、リアクオーターパネルが、やはりスポーツカーのように太い。スポーツカーを得意とする英国の「オーグル」のようなデザインスタジオが、ファミリアハッチバックのオーダーを聞き間違えてデザインしてしまった、という印象で、大胆さはとにかく評価したかった。

同時に発表されたのは、先代からのキープコンセプトともいえるハッチバックと、セダン。このときのファミリアの特徴といえば、6カ月遅れて追加されたフルタイム4WDモデル。ターボエンジンとの組み合わせで、よく走ったという記憶がある。

いま、あらためて見ると、セダンやハッチより、アスティナのほうが古びてみえない。プロポーションがよい、というのが理由のひとつだろう。さらに装飾が少ない。マツダ車は概して”キラキラ”していないので、そのため、経年変化による安っぽさが少ない。アスティナも同様だと思う。

ヘッドランプだけ固定式に変えたら、いまでも十分通用するスタイルではないだろうか。いや、やっぱり、リトラクタブル式だから、ノーズのデザインが活きるんだろう。いろいろ考えると楽しいモデルである。

文・小川フミオ

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みんなのコメント

2件
  • 80年代の日本車、どれもキラキラやね!
  • 3代目のトヨタ・コルサ/ターセル/カローラⅡ(カロⅡは2代目相当でしたか)には
    3ドア車に確か「リトラ」というグレードのリトラクタブルヘッドライトを装備した
    仕様がありましたね。
    まぁ当時の若者層へのアピールポイントとしてデザインされたものでしょうが、
    フツーのハッチバックにパカパカライトって…w
    当時の大トヨタは、ずい分とヤンチャなことをしてましたねぇ…w
    そういえば当時のカローラⅡのCMキャララクターは原田知世さんでした。
    知世さんが星に祈る「流星ライナー」…アレ大好きですた…www
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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