「空がこんなに近いんだぁ……」
フルレストアしたNAロードスターに試乗して最初に感じたことだ。NAロードスター発売当時を知らない筆者は、登場から約30年を迎える同車が、今なお高い人気を誇る理由が不思議であったが、新車同然のクルマに試乗して、NAロードスターには多くの魅力があることに気づいた。
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切り立ったフロントウインドウのおかげで頭上を遮るものが何もないゆえの“空の近さ”や、丸目の愛らしいリトラクタブル式ヘッドライト、Vスペシャルに備わるエレガントなタンカラーのレザーシートとナルディ社製のウッドステアリング&シフトレバーなどなど。
エンジン性能や快適性では、最新のNDロードスターに到底叶わないかもしれないが、NAロードスターには法規制が今より緩かった時代だからこそ可能だった魅力が存分にあった。だから今でも多くのファンがいるのだろうし、なにしろこれが最初のロードスターなのだ。マツダの歴史にとってだけでなく、世界の自動車史に燦然と輝くモニュメントでもある。メーカーもそれを理解しているから、「NAロードスターレストアサービス」をはじめたのにちがいない。
海外ではメルセデス・ベンツやポルシェなどがメーカー自らレストアサービスを提供するが、国内自動車メーカーで同様のサービスをしているのはほとんどない。しかも、ドイツメーカーが請け負うモデルのほとんどが高級車であるのに比べると、ロードスターは大衆車だ。大衆車のために専用レストアプランを設定し、熟練工を配するあたり、マツダのメーカーとしてのデモクラティックな姿勢がうかがえる。
年に1度、大規模なロードスターのファンミーティングが軽井沢でおこなわれている。そこでは、参加者が自ら製作したオリジナルロードスターグッズなどを販売したりするが、それについてマツダの広報担当者は「これはお祭りですから」と、さらりと言って、商標権などにかかわる問題に言及しなかった。デモクラティックなのである。
NAロードスターレストアサービスの作業に携わるのは、ル・マン24時間レースに帯同したメカニックや、コンセプトカーのカラーリングを手がける塗装のプロなど社内の精鋭たちである。彼らが、約2カ月かけて徹底的に仕上げる。
それだけに、価格は少々高い。「基本メニュー」と呼ばれる内容(全塗装、フタ物新品交換、復刻ソフトトップへ張替等)で250万円から。これにくわえて、ユーザー自ら選択できるオプションメニューを用意している。メニューのうち「A」はインテリアのレストアプランで、シート表皮の張り替えやカーペット交換などをおこなう(価格:70万円~)。「B」はエンジン&パワートレーンのレストアプランで、エンジンのオーバーホールやトランスミッションの交換などをおこなう(価格:80万円~)。このほか、シャシー&サスペンション、エアコン、アルミホイール&タイヤのメニューの用意もある。
結果、基本メニューと全オプションメニューを組み合わせた「フルレストアプラン」では、485万円にも達する。
とはいえ、この価格はNAロードスターオーナーの声を聞いて決めたというから、ファンにとっては決して高すぎる値付けではないようだ。レストアサービス開始に先立っておこなわれた説明会では、参加者248人のうち約60人がその場でレストアを希望したという。
ただし、すべてのNAロードスターがレストアサービスを受けられるわけではない。対象車種はカタログモデルのNAロードスターのみ。限定車やM2などのコンプリートカーは対象外だ。また、フレーム変形がなく著しいサビがない車両といった条件もくわわる。
当初はより厳しい条件を課しており、板金作業の発生するクルマはすべて対象外にしていたという。しかし、申し込まれた車両20台を確認したところ、板金不要だった個体はたったの1台しかなかった。ほとんどが、板金作業をともなう“修復歴アリ”のクルマだったのである。
そこで、マツダも条件や工程を見直し、かつ工場の体制を整えた結果、軽微な板金作業のみで対応できるクルマであれば受け入れることにしたという。
今回見学したレストア中のNAロードスターは、走行距離が約6万kmだったこともあり、一見すると状態の良い車両に見えたが、実際は細かな修復歴があったうえ、ところどころサビも発生していた。
シートを外したインテリアを見ると、ドアライニングにウッドパネルがあしらわれていた。これは社外品の装備で、オーナーの希望もあって今回取り外すそうだ。レストアサービスでは、こうしたユーザーの細かな要望にも応えられるよう、個別にヒアリングをおこない、意思の疎通をはかる。また、レストア中の作業風景を見学することも出来る。もちろん、作業工程を記録したフォトブックの進呈や、広島ないしは横浜でおこなわれる納車式もプランには含まれている。
NAロードスターレストアサービス開始に伴い、一部絶版パーツの再供給も始まった。
「レストアサービスでは、高価でも新品の部品にこだわる。それによってクオリティを保つ」と、語るのは4代目ロードスター開発主査を経て、現在はロードスターアンバサダーを務める山本修弘氏。
再供給のため、パーツメーカーと協力し、現在までに約150の部品が復刻された。復刻といっても品質は現代基準に沿って作られている。担当者は、当時の雰囲気や質感を守りつつ、現代の製法や材料を用いて、クオリティや環境に配慮した、という。
復刻した部品はナルディ社製のステアリングやシフトノブや、ブリヂストン製純正タイヤ、ソフトトップなど。とくにタイヤは発売当時のものと同じトレッドパターンや側面デザインを採用したうえ、乗り味も再現すべく、当時開発に携わったマツダとブリヂストンの担当者が約30年ぶりに再会し、作り込んだというから驚きだ。
逆に、ソフトトップは当時のドイツ製ビニール生地が入手不可能だったため、アメリカ製の生地を取り寄せたという。しかも、開発当時より厳しい試験をクリアしたため、クオリティの高さは新車当時を上回るそうだ。
こうした目につきやすい部品以外にも、ボンネット裏などに貼る警告シールやボルトなど細かなものも用意する。しかも、これらはすべて単品で購入可能だ。最寄りのマツダディーラーに行けば、ボルト1本から購入出来るので、自らクルマを整備する向きには朗報である。
ちなみに、同時期に販売されていた7代目ファミリアや5代目カペラも欠品している部品が多いというが、部品の復刻はおこなっていないという。NAロードスターが特別に重要なモデルであることを物語るもうひとつの事実である。
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