電気自動車「マニフェスト」は、真の冒険者のためのコンセプトカーだ。新型e-オフローダーの詳細!
ダチアは、1990年代にルーマニアに生まれた自動車メーカーで、現在はルノー傘下として、ルノーや日産の技術を採り入れて、大衆向けの低価格モデルを開発、生産している。したがって、ダチアといえば、シンプルで実用的なクルマ作りのメーカーという言葉がすぐに思い浮かぶ。
しかし、チェコからの最新の研究コンセプトモデル、「マニフェスト」はそうではなく、真逆なものだ。窓(フロントガラスすらない)、ドア、屋根(通常の意味での)なし。しかも、「ジープ ラングラー」と違って、それらは取り外し可能なのではなく、まったく考えられていないのだ。しかし、忘れてはいけないことは、これはあくまで研究、スタディモデルだということだ。したがって、残念ながら、「マニフェスト」がこのまま実際に製品化されることはまずないだろう。しかし、この車はとても面白い。こういう我々を楽しませてくれる発想は大いにあり、ウェルカムだ。
ヘッドライトかトーチか?
しかし、「マニフェスト」とはいったい何なのか。一見すると、電動オフロードバギー。そして、全輪駆動と高い地上高によって、コンセプトカーはそのような存在になっているのだ。しかし、実際には、ダチアが興味深い、珍しいディテールを追加している。例えば、「マニフェスト」のヘッドライトは携帯用のトーチとしても使えるようになっている。また、文明圏から遠く離れたキャンプでは、取り外し可能なバッテリーが電源として機能する。
寝袋はいつもあなたと一緒
雨や泥、悪天候から守られることなく移動するため、車が停まっていて雨がかなり垂直に降り注ぐ場合以外は、小さなキャノピーで十分で、インテリアは丸洗い可能となっている。また、シートカバーは簡単に取り外すことができ、寝袋としても使用することも可能だ。
このように堅牢で耐候性に優れたインテリアを維持するために、この車ではディスプレイなどのインフォテインメントを完全に排除している。むしろ、自分の携帯電話をナビゲーションとして使うことを想定しており、そのためのホルダーがあらかじめ用意されている。ちなみに、ダッシュボードはコルク製で、ボディの大部分は再生プラスチックでできている。
そして、荷物の置き場所は? トランクやリアベンチシートがないため、残るのは屋根だけだ。重量に応じてキャリアバーを移動させることで、さまざまな荷物を積載することができるようになっている。しかし、ダチアはこのバギーにどれだけの荷物を積めるかを明らかにしていない。
ダチアのマニフェストとしての電動バギー
そして、なぜ「マニフェスト」なのか。ダチアが将来的にオフロードバギーだけを生産したいがために、今回のスタディを一種の「マニフェスト」として使っているとは考えられないので、このネーミングは、まったくもって不明である。しかし、メーカーは、このオフロード車がブランドの将来の電動レンジの片鱗を確実に提供するはずだとも発表しているのだ。ダチアが実際に「マニフェスト」のようなラインナップの路線を歩むのか(少なくとも部分的には)、それとも特に低価格のモデルに完全に焦点を当て続けるのかは、まだわからない。
【ABJのコメント】 ダチアといえば、やっぱり僕の頭には「ロガン」、という自動車が浮かぶ。初代は「トヨタ プラッツ」にもちょっと似た地味で、地味で、地味な4ドア小型セダンで、廉価なことが特徴として、ヨーロッパでも財布の軽い層を中心になかなかの売れ行きであったことをおぼえている。そんな「ロガン」は今もあり、地域によっては、ルノーのエンブレムを身に着けて売られているが、あのころのモデルよりもはるかに立派な自動車になっている。
またダチアには「ダスター」というSUVもあり、こちらもルノーブランドでも売られているが「ダスター」って私のつたない英語力でとらえれば「雑巾」とか「はたき」じゃなかったでしたっけ? 自動車に雑巾って名前を付けるセンス、本当にこれでよかったのかと思うような一台だが、とにかく今も「ダスター」は売られている。
そんなダスターの後継になるかもしれないSUVが今回の一台だが、いろいろと新しい発想があるのが面白い。シートを取り外せば寝袋になったり(イマイチ汚れは心配だけど)、濡れることを考慮し一切の余計なもののない内装だったりと、なかなか普通の発想では出てこない面白さがこの車には見うけられる。もちろんこれはコンセプトモデルであり、万が一生産化されたとしても寝袋シートも、面白い素材の内装も実現はされないだろう。まあよくあるコンセプトモデルと言ってしまえばそれまでだが、「ロガン」や「ダスター」といった比較的地味なメーカーがこういう楽しい一台を出してきたという部分は、なんだかおかしいなぁと思うと同時に、うれしくなる話題であった。(KO)
Text: Kim-Sarah Biehl 加筆: 大林晃平 Photo: Dacia
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