MINIは2000年代に入り、BMWグループの傘下に入り、設計から生産まで行なっている。販売も好調で、日本でも2018年度のブランド別販売台数でメルセデス・ベンツ、BMW、VWに次いで4位に入っており健闘している。
そのMINIにとんでもないスポーツモデルが登場した。「ジョンクーパーワークス・クラブマンだ。この「ジョンクーパーワークス」(以下、JCW)は、MINIのチューニングブランド。「クーパー」を造り上げたファクトリーだ。2代目のBMW「ミニ」からJCWは「クーパー」「クーパーS」よりスポーティーなモデルを「ミニ(3ドア)」「コンバーチブル」「クロスオーバー」「クラブマン」に提供してきた。しかし、そのチューニングレベルは「クーパー」よりちょっとスポーティー、というレベルだった。
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ところが、今回、MINIはJCWを一気にスーパースポーツへと変身させたのだ。外観は2013年に登場した3代目と変わらない。今回のマイナーチェンジでテールランプのレンズ模様がユニオンジャックになったことぐらいだ。
しかし、中身は違う。まずエンジンだが、4気筒2Lターボは大幅な見直しにより231PSから一気に70PSアップした。オーバー300PSの306PSにチューン。トルクも100Nmアップの450Nmとなった。「クラブマン」は全長が4250mmなので、トヨタ「シエンタ」やホンダ「フリード」クラスだ。全幅は1800mmなのでトヨタ「カローラスポーツ」より10mm広い程度のコンパクトサイズ。そこに306PS、450Nmのエンジンを押し込んだ。
もちろん、機能面でも大幅なチューニングが行なわれている。元々、4WDを採用しているが、フロントにはメカニカルなトルセンLSDを組み込み、コーナリング性能がアップした。センターデフはエレクトロにカルLSDが組み合わされている。車高も10mm下がった。ブレーキは18インチの大径が装着された。ミッションは8速AT、7速DCTが用意されている。
0→100km/hの加速がは4.9秒、スーパースポーツ並みの走りを堪能
この刺激的な「JCWクラブマン」にドイツで試乗する機会があり、その走りを堪能してきた。フランクフルトの試乗会場に停められた「JCWクラブマン」は、本当に普通の「クラブマン」のように見えた。確かによく見ると、タイヤはミシュランの「パイロットスーパースポーツ」というスポーツカー専用タイヤを装着している。
乗り込もうとすると、ホールド性の良さそうなセミバケットシートが目に飛び込んできた。運転席に座り、インパネ中央のスタータースイッチを押すと、エンジンが始動する。走行ルートを確認し、早速アウトバーンに向かった。ドライビングモードは「スポーツ」を選択したが、街中での乗り心地はやや上下動がキツめという印象。実用的なレベルだ。
アウトバーンでの試乗で、まず高速領域をチェック。100km/hの巡航では、Dレンジ1600回転(8速)、1500回転あたりからトルクが盛り上がる。加速が欲しければ、アクセルを軽く踏むだけでOK。これまでのJCWとは加速の次元が全く違った。制限速度解除の区間で加速を続けると、スピードメーター表示260km/h近くまで伸びた。この時のクルマの挙動や音に不安な要素は全くなく、高い質感を味わうことができた。
だが「JCWクラブマン」が本領を発揮したのは、アウトバーンを離れ、ワインディングに入ってからだった。0→100km/hの加速が4.9秒とスーパースポーツレベルの加速で、コーナーからコーナーへと疾走する。コーナーが近づくと一気にブレーキングし、大径のブレーキで確実に減速した。
そのまま、ハンドルを切り込むと、メカニカルLSDが働き、コーナーのイン側をかすめるようにトレースしていく。その減速と横Gはフォーミュラマシンを操っているかのようだ。とても観音開きのリアゲートを持つステーションワゴンとは思えない力強さを堪能することができた。まさに、ミニ史上最強のモデルの登場だ。
しかもこれまでの流れを考えると、今後「3ドア」や「コンバーチブル」「クロスオーバー」にも306PSのJCWが加わるのは間違いなさそうだ。「JCWクラブマン」の日本デビューは今秋の見込み。車両価格は現行の「JCWクラブマン」が538万円からだが値上がりは避けられないだろう。
文/石川真禧照 写真提供/BMW
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