Mercedes-Benz E 400 4MATIC × Mercedes-AMG E 43 4MATIC
メルセデス・ベンツ E 400 4マティック × メルセデスAMG E 43 4マティック
GOTY開催! 2020-2021シーズンに最も輝いたハイパフォーマンスカーは!? ノミネート車から抜粋した2台をレポート
エーエムジー対ベンツ、同門対決の行方は?
いつの時代も、これぞメルセデスと感じさせるのがEクラスである。今回はその中でもスタンダードEクラスのトップエンドモデルE 400と、AMGラインナップの新しいエントリーグレードとして登場したE 43を比較した。V6、4マティックという共通項を持つ2台のそれぞれの乗り味は?
「やはりメルセデス・ベンツの真髄はセダンにある」
大小のSUVやお洒落ワゴンまで、ラインナップがどんなに増えても(今やおよそ140モデルもある)、やはりメルセデス・ベンツの真髄はセダンにある。古臭い奴だと思われても、それは今も昔もまるで変わっていないと思う。たとえば遠くに出かける場合、往路はどんなクルマでも特に文句はないけれど、自分でステアリングを握って帰る時はできればメルセデスにしたい。予定より遅れてしまったが今日中に数百km走って帰京しなければならないというような時に、OK、じゃあ行きましょう、と近所に出かけるような気軽さで応えてくれるのがメルセデスのセダンなのである。
最新のEクラスはレーンチェンジアシストのような自動運転時代を見据えた運転支援システムに注目が集まっているが、それ以前に快適に安心して長距離走行できるというクルマの基本がいささかも揺らいでいない点が頼もしい。最近のメルセデスは実用サルーンというよりもスポーティでエレガントな雰囲気が強調されているが、遠くまで走れば走ってナンボのタフな素顔が現れるのである。
「メルセデスのど真ん中たるEクラスセダンのそのまたベストといいたい出来栄え」
新型Eクラスはガソリンもディーゼルも4気筒モデルが主力となった。それで充分以上の性能を備えているのは疑いないところだが、より上級のV6搭載モデルがちょっと遅れて上陸した。E 400 4マティック エクスクルーシブと、2016年10月に発売されたAMG版の第一弾であるAMG E 43 4マティックだ。新型Eクラスセダンのラインナップはこれでほぼ出揃ったことになる(E 63は2017年の予定)。
この2台のV6ツインターボユニット搭載モデルは、当たり前だが4気筒モデルとはっきり違う。滑らかでスムーズなエンジンのフィーリングはやはり上質であり、しかもV6モデルにはエアサスペンションが備わり、快適で疲れ知らずの乗り心地もしみじみいいなと感じさせられる。キャラクターの違いはもちろんあるが、メルセデス・ベンツのど真ん中たるEクラスセダンのそのまたベストといいたい出来栄えである。
「ともにフルタイム4WDの4マティックで、駆動力配分は31対69とはっきり後輪寄り」
M276型3.5リッターV6エンジンはS 400 ハイブリッドなどにも搭載されているもので、スプレーガイド式直噴システムを備えてリーン燃焼と均質燃焼を切り換えるリーンバーンユニットだ。E 400用はそのツインターボ版でスペックは245kW(333ps)、480Nmとなる。一方E 43が搭載する3.0リッターV6ツインターボは同じエンジンファミリーに属するものだが(型式はM276M30)、295kW(401ps)、520Nmと排気量はむしろ小さいのにさらにパワフル。
最高出力は異なるがC 43など他の「43シリーズ」に積まれているものと同じだ。今では車名に付く数字とエンジン排気量やパワースペックは直接関係がないので、正直ちょっと紛らわしいが、スタンダードのEクラスと4.0リッターV8ツインターボを積む新型E 63の間の位置づけだろう。トランスミッションはどちらも最新の9Gトロニック(9速AT)、ともにメカニカルのセンターデフを持つフルタイム4WDの4マティックで、駆動力配分は31対69とはっきり後輪寄りの設定となっている。
「“本当の”エアサスペンション、エアボディコントロールを採用」
E 400の3.5リッターV6は清々しく雑味のない湧き水のように滑らかで、いつの間にかスピードが乗っているタイプ。充分にパワフルだが、賢い9速ATのおかげで高回転まで引っ張る必要がない。こちらをカシミヤ生地のようにしっとり滑らかな回転フィーリングと言うならば、E 43の3.0リッターV6はあえてざっくりした手触りを残した縮緬のようなものだろうか。スムーズながらも、よりシャープに吹け上がり、踏めば踏んだだけ硬質な手応えが感じられる。ちなみに、0-100km/h加速は(欧州仕様)E 400が5.2秒、E 43は4.6秒という。フルスロットルを与えると、E 43は加速Gで頭の血が後ろに寄ってわずかにクラクラするあの感覚に襲われるほどの駿足だ。
E 400とE 43にはエアボディコントロールなる電子制御エアサスペンションが装備されるのが特徴である(後者はAMG専用仕様のライドコントロールサスペンション)。フロントストラットユニットには可変ダンパーに加えてエアチャンバーがそれぞれ2つ、リヤには3つ備わり、それらを切り換えることでスプリングレートも変化させる“本当の”エアサスペンションである。
「E 43はガッシリ引き締まった印象で、逞しくスポーティな設定」
E 400は明確にまったりとして快適志向だ。人によってはソフトすぎると言うかもしれないが、無論ダイナミックセレクトでモードを切り替えれば引き締まるし、少なくとも日本の路上の現実的なスピードレンジではこれがちょうどいいと思う。4マティックに加えオプションのパノラミックサンルーフが備わったE 400は1920kg(サンルーフ標準のE 43は1930kg)とRWDのE 200 アバンギャルド スポーツなどと比べると200kgほど重いのだが、その重量を感じさせず軽やかに走る。スロットルを戻してもスルスルといかにも抵抗少なく転がるような感覚だ。
対して専用の足まわりと20インチタイヤを備えるE 43はガッシリ引き締まった印象で、逞しくスポーティな印象の設定である。とにかく路面の不整を踏み潰すようにフラットなので昔からのメルセデス・ファンには好ましいかもしれない。ハンドリングも重厚でしっかり走らなければと気持ちが刺激される。いずれにせよ、どちらも余計な入力だけを適切に遮断してくれて、ピシッと糸を引くように真っ直ぐ走る。快適とはこういうことである。
「軽やかにしっとりと走るか、逞しく引き締まった足で駆け抜けるか──」
他の違いはE 400が横桟グリルにスリーポインテッドスターがボンネット先端に立ち上がる昔ながらのセダン顔となることだ。日本ではほとんどの顧客が大きなエアインテークが口を開けた(といってもかなりの部分がフタされているが)アグレッシブなクーペ顔を選ぶというのだが、私はエレガントなほうがいい。もうひとつ、右ハンドルとなるE 400は、左足が当たるセンタートンネル部が微妙に張り出しているので、気になる人は要確認だ。
しっとり軽やかなE 400 4マティック エクスクルーシブを取るか、逞しい武闘派のE 43 4マティックを取るか。前者は988万円、後者は1149万円だが、それだけの価値はある。スタッドレスに履き替えることも考えると、私にとってはE 400 4マティックがほぼ理想の「ザ・メルセデス」である。
REPORT/高平高輝(Koki TAKAHIRA)
PHOTO/篠原晃一(Koichi SHINOHARA)
【SPECIFICATIONS】
メルセデスAMG E 43 4マティック
ボディサイズ:全長4950 全幅1850 全高1450mm
ホイールベース:2940mm
車両重量:1930kg
エンジンタイプ:V型6気筒DOHCツインターボ
総排気量:2996cc
圧縮比:10.5
最高出力:295kW(401ps)/6100rpm
最大トルク:520Nm(53.0kgm)/2500-5000rpm
トランスミッション:9速AT
駆動方式:AWD
ステアリング形式:パワーアシスト付きラック&ピニオン
サスペンション:前4リンク 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前245/35R20 後275/30R20
燃料消費率(JC08複合):11.0km/L
車両本体価格:1149万円
メルセデス・ベンツ E 400 4マティック エクスクルーシブ
ボディサイズ:全長4930 全幅1850 全高1455mm
ホイールベース:2940mm
車両重量:1880kg
エンジンタイプ:V型6気筒DOHCツインターボ
総排気量:3497cc
圧縮比:10.5
最高出力:245kW(333ps)/5250-6000rpm
最大トルク:480Nm(48.9kgm)/1200-4000rpm
トランスミッション:9速AT
駆動方式:AWD
ステアリング形式:パワーアシスト付きラック&ピニオン
サスペンション:前4リンク 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前245/45R18 後245/45R18
燃料消費率(JC08複合):11.3km/L
車両本体価格:988万円
※GENROQ 2017年 2月号の記事を再構成。記事内容及びデータはすべて発行当時のものです。
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E450が367PS/500Nmで1144万、 E53が435PS/520Nmで1259万。
これが理想のメルセデスってよくわからん。