マセラティのスーパースポーツカーMC20のオープントップバージョン「MC20チェロ」が登場。スーパースポーツカーとしてのパフォーマンスをオープンエアとともに味わうことのできる特別なモデルだ。(Motor Magazine2023年9月号より)
滑らかな乗り心地でロングドライブも快適
カーボンモノコックを用いたスーパースポーツカーをコンバーチブル化する作業は、金属製モノコックを用いる場合に比べて難易度はさほど高くないとされる。
●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか
なぜなら、カーボンモノコックは、別名バスタブとも呼ばれるように浴槽によく似た形状をしており、乗員の頭上にあたる部分には特別な構造体を持たないのが一般的。したがってルーフを切り取っても剛性の低下は目を瞑れる範囲で、この部分を開閉可能なリトラクタブル式ハードトップに置き換えることで、コンバーチブル化の主要な作業は完了すると考えられるからだ。
しかし、クーペ版MC20のカーボンモノコックは乗員の頭上にあたる部分にも応力を受け持つカーボン製パーツが張り渡してあるので、単純にここを切り取ると剛性の低下が免れない。そこでMCチェロではカーボン繊維の素材や張り方などを抜本的に見直して剛性を改善。ルーフなしの状態でもクーペ版MCと同等の安全性を確保することに成功したという。
デザイン面でも手の込んだ作業が行われた。MC20チェロのBピラーは、クーペ版がほぼ直立しているのに対して、前方に向けて少し傾いた角度がつけられている。さらに、ルーフを切り取る箇所についても、ルーフが水平に近い角度まで寝始める、ウインドシールドからやや離れた部分をあえて選択。
こうすることで、Aピラーからドア上部を経てBピラーに至る部分だけでも環状がイメージできるスタイリングを生み出したと、チーフデザイナーのクラウス・ブッセ氏は語っていた。
加えてMC20チェロではルーフ素材として液晶の技術を用いたPDLC(高分子分散型液晶)を採用。これにより、ルーフ部分を透明な状態にも曇りガラス状にも瞬時に切り替えることが可能になった。おかげでMC20チェロは、晴れているときだけでなく雨が降っていたり曇っているときでも空の様子を楽しめる。これこそイタリア語で「空」を意味するチェロの名に相応しい装備といえる。
サスペンションストロークの長さがフラットな姿勢を生む
試乗当日は、幸いにも晴れたり曇ったりの空模様だったので、オープンをはじめとしたMCチェロの魅力を満喫できた。
MC20はスーパースポーツカーのなかでもとりわけサスペンションストロークが長く、これを駆使して荒れた路面でも滑らかな乗り心地が楽しめるが、MCチェロはその傾向がさらに強く、大きくうねるような路面でも足まわりが巧みに伸縮してあらゆる衝撃を遮断してくれる。
しかも、ボディは一定の範囲でフラットに保たれるので長距離クルージングもまったく苦にならない。この点こそ、ピュアスポーツカーとは明確に異なる、グランドツアラーを標榜するマセラティに似つかわしいキャラクターだといえる。
その一方で、ワインディングロードでは機敏なハンドリングを心ゆくまで堪能できるのがMC20チェロのもうひとつの横顔。そんなとき、コーナーの入り口でハンドルを切り込むだけでもスーパースポーツカーに相応しいレスポンスを示してくれるが、マセラティの「作法」に従い、軽いブレーキングでフロント荷重を積極的に作り出すと、前輪がまるで路面に張り付いているかのような接地感を生み出し、繊細なハンドル操作にも即応するコーナリングを披露してくれる。
ほかのイタリアンスポーツとMC20チェロの決定的な違い
そんなときはドライビングモードの「スポーツ」を選べば、快適性重視の「GT」よりもサスペンションのストロークが抑制され、さらに精度の高いドライビングを楽しむことができる。
なお、センターコンソール上のドライビングモード切り替えは、MC20チェロの登場に伴って液晶表示機能が付いた新しいダイヤル式に置き換えられ、操作性がより向上した点も特筆しておきたい。
コンバーチブル化に際し、MC20チェロのエクステリアがどれだけ手の込んだモディファイを受けたかは前述のとおりだが、その基本的なスタイリングはプロポーションの美しさを引き立てることを目指し、極力装飾を廃したピュアなデザインとされている。
この飾り気のないデザインで真っ向勝負をしかけてくるあたりに、デザインとテクノロジーの両面で急激な進化を遂げている「マセラティのいま」が明確に表現されているように思う。
形の美しさとともに、内外装に見られる色彩のセンスのよさも現在のマセラティを象徴する重要な要素である。とりわけ試乗車のボディカラーであるアクアマリーナ(MC20チェロ専用色)はしゃれっ気と品のよさが絶妙のバランスで表現されているし、オフホワイトで統一された室内は、場所によってヌバック(バックスキン)とスムースレザーを使い分けるというこだわりよう。
これもまた、人の気持ちを昂ぶらせることに主眼を置いた他のイタリア製スーパースポーツカーと、長い時間をかけてじっくり付き合いたくなるオトナのセンスを持ち合わせたマセラティとの、決定的な違いといえるだろう。(文:大谷達也/写真:井上雅行、佐藤正巳)
マセラティ MC20チェロ プリマセリエ・ローンチ・エディション主要諸元
●全長×全幅×全高:4670×1965×1217mm
●ホイールベース:2700mm
●車両重量:1750kg
●エンジン:V6DOHCツインターボ
●総排気量:2992cc
●最高出力:463kW(630ps)/7500rpm
●最大トルク:730Nm/3000-5500rpm
●トランスミッション:8速ADCT
●駆動方式:MR
●燃料・タンク容量:プレミアム・60L
●WLTPモード燃費:8.54km/L
●タイヤサイズ:前245/35R20、後305/30R20
●車両価格(税込):4438万円
【ブランド動向】新型グランドツアラーが登場次世代モデルに移行中
ステランティスの一員になって以降、史上最大規模の大改革を推進中のマセラティ。彼らは2025年までに全モデルを次世代仕様に切り替えるとともに、BEV仕様のフォルゴーレ(イタリア語で「雷光」の意味)を全モデルに投入すると公言している。
そうしたなか、今年もっとも注目されるのが、マセラティの主力製品である新型グラントゥーリズモの国内投入だ。
現代のマセラティは、いずれも1954年に誕生したA6GCSのコンセプトを受け継ぐとされている。純レーシングカーにフェンダーを追加しただけのようなスタイリングのA6GCSは、事実レーシングカー並みのハイパフォーマンスと長距離のクルージングが苦にならない快適性を兼ね備えていた。
こうしたコンセプトを、もっとも忠実に再現しているのがグラントゥーリズモであり、このためブランドの真髄を示す最重要モデルに位置づけられている。
新型グラントゥーリズモは軽金属主体のモノコック構造をベースとする完全な新機種。パワープラントは、彼らの電動化戦略に従いガソリンエンジン仕様とBEV仕様の2タイプが用意される。
新世代のマセラティは内燃機とBEVの二本立て
このうちエンジン仕様はMC20と同じ副燃焼室方式を採用したネットゥーノV6を搭載。パフォーマンスや装備品の違いでフラッグシップのトロフェオ、そしてエントリーグレードにあたるモデナの2モデルとなる。
一方、BEV仕様のフォルゴーレはフロントに2基、リアに1基という計3基のモーターを搭載。駆動力を用いたトルクベクタリング機能を備えている。
私はひと足先にイタリアでトロフェオとフォルゴーレに試乗したが、2台ともとにかくボディ剛性が高いためハンドリングは正確。乗り心地も決して悪くない。もちろん、2台揃ってパワートレーンにはなんの不満も抱かなかったので、日本上陸が楽しみだ。
グラントゥーリズモに続く形で23年にデビューしたのがマセラティGT2と呼ばれるレーシングカー。外観はMC20とよく似ているが、パワートレーンやシャシはレース用に刷新された模様。マセラティGT22は、まず23年シーズンのファナテックGTシリーズ終盤戦にデビュー。翌24年からは同シリーズやスパ24時間などを含む各国のGTシリーズなどに参戦する計画である。
さらにマセラティは今年度中にグラントゥーリズモの派生モデルというべきグランカブリオも発表する予定というから楽しみだ。
そして彼らは25年までにMC20のフォルゴーレ版、新型のクアトロポルテ、次期型のレヴァンテなどを投入予定。この25年をもって、次世代への更新を完了する。
なお、ギブリは遠からず生産を終了するので、マセラティのラインナップはMC20、グラントゥーリズモ、グランカブリオ、クアトロポルテ、レヴァンテ、グレカーレの計6台体制となる見通しだ。(文:大谷達也/写真:マセラティS.p.A.)
マセラティ グラントゥーリズモ トロフェオ主要諸元
●全長×全幅×全高:4966×1957×1353mm
●ホイールベース:2929mm
●車両重量:1795kg
●エンジン:V6DOHCツインターボ
●総排気量:2992cc
●最高出力:404kW(550ps)/6500rpm
●最大トルク:650Nm/3000rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:FR
●タイヤサイズ:前265/30ZR20、後295/30ZR21
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みんなのコメント
マセラティの造るクルマにしちゃ
ちょっと品が無い印象だな
そんなカラクリはランボルギーニあたりに
任せりゃよかったんだ