レクサスのコンパクトセダン「IS」に追加された「IS500 Fスポーツパフォーマンス」に、山本シンヤがアメリカで乗った!
倍率10倍!
日本でも8月25日に発表されたIS500 Fスポーツパフォーマンスは、ISのトップモデルだ。冬以降に発売予定あるが、先行して特別仕様車「ファーストエディション」の商談申し込みが9月15日までおこなわれた。限定500台に対し、約10倍の申し込みがあったというから注目度の高さがわかる。
IS500 Fスポーツパフォーマンス最大の特徴は、コンパクトセダンに5.0リッターV8ガソリン自然吸気エンジンを搭載した点だ。初代ISにも、2007年から2012年まで発売された「IS F」(5.0リッターV8搭載)があったものの、なぜ今回は“F”ではなく“Fスポーツパフォーマンス”を名乗るのか? 疑問はアメリカ・ロサンゼルスでの国際試乗会に参加し、解決した。
Fスポーツパフォーマンスとは新たに設定されたスポーツ仕様だ。現在レクサスには、サーキット走行可能な実力を持つ「F」、内外装やフットワークにFのエッセンスをプラスしたスポーティモデル「Fスポーツ」、そしてノーマルの3種類で構成する。新しいFスポーツパフォーマンスは、端的に述べるとFスポーツに専用パワートレインを搭載したもので、いわば“Fスポーツ以上F未満”のポジションだ。
パワートレインは現行「RC F」に搭載する481ps/535NmのV8-5.0L(2GR-GSE)に、「8速SPDS(スポーツダイレクトシフト)」と呼ぶATを組み合わせる。かつてのIS Fと比べると58ps/25Nm、向上した。
シャシーは高出力エンジン搭載に伴い最適化された。フロントにくわえリアにもパフォーマンスダンパーを追加し、専用のEPS(横滑り防止装置)制御とサスペンションなどを採用。足まわりはブリヂストン「ポテンザS001L」(フロント:235/40R19、リア:265/35R19)とエンケイ製のアルミホイールとなる。
エクステリアは、V8エンジン搭載によって全長がプラス50mm延び、かつエンジンフードデザインも変更。リアまわりはIS Fから受け継がれた斜め4本出しマフラーと専用のロアガーニッシュが目をひく。
インテリアは、ステアリング・ホイールやドアスカッフプレートに専用バッジを装備。エクステリアに比べると控えめな変更だ。
自ら出した挑戦状
クルマを走らせてすぐ“新しいのに懐かしい”と、感じた。最大の要因はパワートレインだ。実用域の穏やかな特性と大トルクによる余裕の走りは、最近のダウンサイジング・ターボにはない感覚である。
そしてアクセルを踏み込めば、レスポンスの鋭さ、回転が上昇するにつれて炸裂する大パワーなどが気持ちいい。まわすほど力強さが湧き出るエンジンは、大排気量のV8自然吸気ならでは。今となっては貴重な存在だ。
8速SPDSは発進時以外の領域はロックアップ(=直結)状態で、アクセル操作に対する反応はダイレクト。ドライブモードのECO/ノーマルは滑らかさ重視であるものの、スポーツ/スポーツ+を選ぶとツインクラッチ式AT並みのシフトスピードとなる。
フロントに重く、そして大きなエンジンを搭載しているにも関わらず、標準のISが有するバランスの良さが変わらないのには驚いた。操舵してから遅れなく素直にノーズが動くフットワークなどは、V8エンジン搭載車とは思えない軽快感だ。
乗り心地はノーマルのISよりは引き締められているものの不快さはナシ。一般道/高速道路ではしなやかで、ワインディングロードでは接地性が良い。500ps近い“ハイパワーFR”ながら、ねじ伏せて走るような“じゃじゃ馬”ではないのだ。
新型IS500 Fスポーツパフォーマンスは、日常での気持ちよさや心地よさを重視したセットアップだったのが印象的だった。ゆえに、FではなくFスポーツパフォーマンスと名乗るのだろう。
開発責任者である小林直樹氏も、Fスポーツパフォーマンスの狙いについて「狙いは『F』と『Fスポーツ』の中間。高性能だけどサーキット向けではなく、日常域でもクルマ好きに響くクルマを目指しました」と、述べた。
IS500 Fスポーツパフォーマンス投入によってレクサスのスポーツモデルは大きな変革期を迎えた。すでに記事化したRXもそうだったようにFスポーツパフォーマンスが高レベルに仕上げられている分、次世代Fへの期待が高まる。
つまり、IS500 Fスポーツパフォーマンス投入は、将来のレクサス・スポーツモデルに対する、自ら出した挑戦状なのだ。
文・山本シンヤ
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