ありそうでなかった、3列シートのクロスオーバーSUVがマツダ「CX-8」だ。2018年10月に追加された、2.5リッター直列4気筒ガソリンターボ・エンジン搭載モデル「25T」にようやく試乗した。はたして、パワフルで、気持ちよく走るのが印象的だ。
CX-8は、全長4900mmと大柄ボディながら、ハンドリングはけっこうシャープで、じつは走りが楽しい。そこで、よりスポーティなモデルを求める向きのために開発されたのが25Tだ。
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そもそも私は、CX-8のコンセプトが気に入っている。たとえば、2列目シートに、パーソナル感の高いキャプテンシートが備わっている点だ。しかも、シート表皮(レザー)の材質はしっとり、色づかいは落ち着いていて、クオリティも高い。こういったSUVは、国内外メーカー問わずほとんどないのが実情だ。
25Tは「低速から中速、さらには高速域まで意のままに加速し、その手応えを感じ、さらに走りたくなるような、力強く上質な走りを実現した」と、マツダの広報資料に記されているように、より走りが楽しめるパワフルなモデルだ。
搭載する「SKYACTIV-G 2.5T」エンジンは、最高出力169kW(230ps)/4250rpm、最大トルク420Nm/2000rpmを発揮する。
ノンターボの同排気量自然吸気エンジンは、最高出力140kW(190ps)/6000rpm、最大トルク252Nm/4000rpmを発揮する高回転型なので、数値からしても、ターボ・エンジンは日常的な使い勝手を重視しているのがわかる。
5時の位置が0rpmになる回転計のデザインは、ドライバーからよく見える10時、11時あたりでは5000rpm~6000rpmになる。まるで高回転を常用するスポーツカーのようだ。実際は6時(1500rpm)のあたりから力が出てくる。
私が好きなのは、シフトレバー近くに設けられたドライブモードセレクターで選ぶ「スポーツ」モードでの走りだ。シフトスケジュールが変わり、ターボチャージャーがしっかり効き始める2500rpmから上を使うようになるので、トルク感がじつに気持ちいい。
スポーツモードにすると、アクセルペダルを軽く踏み込んだだけで、力強い加速を味わえる。ダイレクトな感覚はかなり気分がよい。ちょっと硬めのサスペンションとのマッチングもよく、高速のレーンチェンジだろうとワインディングロードだろうと、全長4900mmのクロスオーバーとは思えない軽快な身のこなしを楽しませてくれるのだ。25Tならではの魅力である。
あえてネガをあげるなら、よりストローク感があると好ましいサスペンション(17インチタイヤで試してみたい)と、ラゲッジルーム・フロアの高さ、回転半径の大きさといったところだ。
ラゲッジルームのフロアが高いのは、フルタイム4WDシステムが搭載されているからだろう(25Tに前輪駆動の設定はない)。もう少し低く出来たのでは? と、思わないでもない。なぜなら、フロアの下には、それなりに深い物入れがあるからだ。
回転半径については、慣れれば取りまわしも不便でなくなるだろう。試乗した「Lパッケージ」には360度カメラが搭載されていたので、ボディの大きさが気になる人は、重宝するはずだ。
乗用車的なドライビングポジションや、ゴテゴテ感を取り払ったクリーンなダッシュボード、しっとりした感触のレザーで巻いた細身のステアリングなどを見ていると、マツダの開発者が、「万人ウケするファミリーカーでなく、万人がいいと思えるスポーティなクルマを作ろうと努力したんだろうなぁ」と、思うのであった。
ちなみに、私がもうひとつ気に入っているのは、オーディオ・システムだ。中音域が気持よく、ギターやボーカルの音源に向いていると思う。
Aピラーに高音を担うツィーターが埋め込まれていて、“耳の高さから音を出す”という昨今のプレミアム・カーらしい音を楽しめる。
さらに、25Tが追加されたタイミングで、インフォテインメントシステム「マツダ コネクト」もアップデートされた。Apple CarPlayとAndroid Autoに対応したのだ。純正ナビゲーションシステムの性能が、優れているとは言い難かったので、多くのユーザーにとって朗報だろう。
25Tの価格は、自然吸気エンジンを搭載する「25S Lパッケージ」が375万8400円であるのに対して、「25T Lパッケージ」は424万4400円になる。なお、駆動方式は4WDのみの設定だ。
ちなみに2.2リッター直列4気筒ディーゼルターボ・エンジン搭載の「XD Lパッケージ」は446万400円。駆動方式は4WDだ。
よく考えられた価格差だ。ターボにするかディーゼルにするか、そしてガソリンにするか……実際、購入するとなると大いに悩みそうだ。
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