標準モデルとなにが違う? 「フリード モデューロX」
昨年(2017年)の暮れの12月15日、ホンダから「フリード モデューロX」が発売されました。これはコンパクト・ミニバンであるフリードをホンダアクセスがカスタマイズしたもの。カスタマイズといえば、クルマを購入した後にユーザーが行うものというのが、一般的なイメージかもしれませんが、「フリード モデューロX」の場合は、自動車メーカーであるホンダおよびホンダアクセス自身がカスタムしたモデルとなります。
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ちなみにカスタムといっても、その内容は、まさにピンからキリまで。ほんのちょっと外観を変えるだけのカスタムもありますし、見た目どころか内容まで、ほとんど変えてしまうこともあります。また最近の軽自動車やミニバンでは、新車のときからルックスを変更したカスタム・バージョンが用意され、標準車とセットで販売されるケースも増えています。そういう意味でホンダの「フリード モデューロX」は、いったいどの程度のカスタムなのでしょうか。
まず製造に関して言えば、「フリード モデューロX」は標準車と同じようにベルトコンベアーに乗って生産されます。これにはふたつの意味があります。ひとつは製品のクオリティが標準車と同じと考えていいということ。そしてもうひとつは、安くできるということ。たとえば同じカスタムでも、できあがった標準車からカスタムを行うと、バンパーなどもともと装着されていた部品がゴミになってしまいます。わざわざ交換する部品を装着する手間も無駄。つまり、それだけコストがかかります。一方、最初から標準車と同じように生産すると決まっていれば、無駄な部品も工賃もかかりません。ここのコストダウンは製品の質に関係ありませんから、ユーザーには大きなメリットになります。
開発はホンダアクセス、クオリティは折り紙付き
続いて、「フリード モデューロX」の特徴は、開発をホンダ本体ではなく、ホンダの子会社であるホンダアクセスが行ったところです。
ホンダアクセスは、ホンダ100%出資の完全子会社。1990年代からホンダ車のアフターパーツを開発してきました。ホンダのスポーツモデルのサスペンションがあまりにハードすぎたので、もう少し乗り心地の良いホンダアクセス製のモノに交換した人が新車販売の半分も占めたという古い逸話もあります。アフターパーツでありながらも、ホンダ純正と呼んでよいような高いクオリティが人気の秘密です。
そんなホンダアクセスは2012(平成24)年より、クルマ全体をトータルでカスタムするようになりました。クルマ全体をカスタムすることをコンプリートカーと呼びますが、クルマ全体のバランスを見ることで、部品単体でのカスタムよりも高いレベルで性能向上が見込めます。そうした生まれたのが「モデューロX」シリーズです。これまでホンダは、「N-BOX」(2012年発表)、「N-ONE」(2015年)、「ステップワゴン」(2016年)に「モデューロX」を設定してきました。「フリード モデューロX」は4番目のモデルとなるのです。
「モデューロX」のカスタムの方向性とは?
「フリード モデューロX」のカスタムの内容を見ると、エンジンには手が加えられていません。標準モデルとの変更点は内外装と足回りに。エクステリアは、フロントグリルにバンパー、サイドロアスカート、リアロアスカート、テールゲートスポイラーというようにぐるりとボディ一周。ヘッドライトやフォグランプといったライト類も専用品です。内装もブラック&モカの専用シートにあわせて、全体がシックな黒基調になっています。全体に、大人っぽい落ち着いた雰囲気にまとめられています。
なかなかに入念な内外装の変更です。しかも、これまでの「モデューロX」のラインナップが軽自動車やミニバン中心でだったので、てっきり「フリード モデューロX」は、「ドレスアップ指向のカスタムなんだろうな」と考えていました。ところが走らせてみてビックリ。ぜんぜん違っていたのです。
走り出して最初に気づくのは、コツコツと路面の凹凸を拾う、足回りのあたりの硬さです。ただし、大きな路面からのショックはいなしてくれるので、不快さはありません。それよりも、コーナーでのしゃきっとした動きの好印象さが勝ります。さらに走り込んでいくと、だんだんと「なんだか運転しやすい」という思いが強まります。ほんのわずかなステアリング操作にも、クルマがしっかりと反応するので、自分の思ったようにクルマが動きます。コーナーリング中も4輪がしっかりと路面をつかんでいるような安心感があります。速度を上げていったときの直進性の良さも嬉しいところ。ただし、エンジンパワーがアップしているわけでもありませんし、コーナーリングの限界性能を求めるようなクルマでもありません。たぶん、サーキットを走らせてタイムを計っても、標準車よりも、それほど速くなっていないでしょう。違いはそこではなく、高まっている走らせたときの質感です。まるで、1クラスも2クラスも上のプレミアムカーに近づいたかのようです。
原点は初代「NSX」を開発したときの驚き
試乗後に「フリード モデューロX」の開発で、走行性能などを担当したホンダアクセスの福田正剛さんに、走りの狙いを聞いてみました。
「モデューロの走りのルーツは初代『NSX』の開発まで遡ります」と福田さんは言います。初代「NSX」の発売は1989(平成元)年ですから、開発したころといえば30年ほども前になります。そのときの「NSX」の開発では、ドイツのニュルブルクリンク・サーキットで、ずいぶんと走り込みを行ったといいます。「開発の合間にホンダの開発陣は、サーキット以外もあちこちの道を走りました。ドイツの一般道や田舎道です」と福田さん。
そうしたドイツの普通の道での人々の走りは、日本とはぜんぜん違います。センターラインのないような細い道で、先の見えないブラインドコーナーでも、ドイツの人たちはがんがんにスピードを上げて走ります。80km/hや100km/h近いときもあるのです。
「そうした状況では、コントロール性の良いクルマでしか走れません。ただただ踏ん張るとか、そういうクルマでは無理ですね。4輪のタイヤのグリップを使って曲がらないといけません。バランスで走っているんですね。そしてバランスがよくなると質感が高くなります」(ホンダアクセス 福田さん)
ドイツの田舎道で受けたショックを元に、走りの本質を追求する。そうした姿勢がホンダのなかに生まれ、それが「モデューロX」の走りの基本だというのです。
ちなみに、「フリード モデューロX」発売のリリースには、「スポーティ」という文言はありません。説明には「上質でしなやかな走り」「意のままに操る走りを追求した運転の楽しさ」「上質で快適な乗り心地」とあります。当たり前と言えば当たり前のことを、高いクオリティで実現する。それが「フリード モデューロX」の走りということでしょう。格好良い悪いという次元ではなく、もっと走りの本質を突き詰める姿勢。それが「フリード モデューロX」の価値なのではないでしょうか。
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