ベントレーの新型「コンチネンタルGT」に、サトータケシがサーキットで試乗した。電動化による進化に迫る。
高度なパフォーマンスと環境性能の両立
試乗会場となった「THE MAGARIGAWA CLUB」(千葉県南房総市)の瀟洒なパドックで、第4世代のベントレー・コンチネンタルGTと対面した。全体のフォルムは、2003年に登場した初代を踏襲しつつ、ディティールに工夫を凝らすことで現代的にアップデートしている。ポルシェ「911」や「レンジローバー」と、同じように、ひと目で“あのクルマだ”と、理解させることと、最新モデルだとアピールすることがバランスしていて、思わず「うまい!」と唸らされる。
最大の変化はフロントマスクで、デビューから20年、コンチネンタルGTといえば片側2灯の丸目4灯がお約束だったけれど、新型はシングルヘッドライト。ライトの上部には眉を思わせる水平のラインが走る。デザイナーによれば、新型コンチネンタルGTは“静かに座る虎”を、イメージしたとのことで、そんな説明を聞いた後だから、ヘッドライトが虎の目に見えてくる。
インテリアもキープコンセプトで、物理的なダイヤルやスイッチが残されている。タッチスクリーンに操作系を集約する最近のインターフェイスは室内のスペース効率に優れるいっぽうで、必要な情報の階層になかなかたどり着けず、イライラすることも多い。
コンチネンタルGTのようにスイッチ類が残されていると、慣れれば視線を動かさずにブラインドタッチで操作できるから安全にもつながるわけで、これはこれで使いやすい。
開発陣によればパワフルで快適なグランドツアラーというコンセプトはそのままに、完全新設計のプラグイン・ハイブリッドシステムによって、高度なパフォーマンスと環境性能の両立を図ったという。
最高出力780ps、最大トルク1000Nmのパワートレインの実力を確認すべく、START/STOPボタンをプッシュする。するとウルトラパフォーマンスハイブリッドは無音で起動した。ドライブモードがデフォルトの「B」モードだと、EV走行を最優先するからだ。
モーター単体でも最大トルクは450Nmと、2.0リッタークラスのディーゼルターボに匹敵するから、滑らかに加速する。そしてアクセルペダルを75%以上踏み込むと、V型8気筒ツインターボエンジンが目覚め、前方に吸い込まれるように加速する。
興味深いのは、V8エンジンの始動や8段ATのシフトが実に滑らかなことで、加速力は途方もないのに、荒々しさは一切感じさせない。唯一、V8エンジンの勇壮な排気音だけがドライバーの鼓膜を刺激する。このあたり、ドライバーが何を不快に感じて、何を快感として受け止めるのかということをよくわかっている。
車重を意識させない走り有名なサーキットの設計で知られるティルケ・エンジニアリング&アーキテクツが手がけたTHE MAGARIGAWA CLUBは、先の見えない急勾配とテクニカルなコーナーが組み合わされている。コンチネンタルGTスピードは、この難易度の高いコースをクールに攻略する。
奥へ行くほどに曲率が厳しくなる複合コーナーでも思い描いたラインをきれいにトレースして、S字コーナーではイナーシャ(慣性)を感じさせずに颯爽と身を翻す。軽快かつ繊細なコントロール性は、とても2.4tを超える車重があるクルマだとは思えない。
感じ入るのは、「ベントレーパフォーマンスアクティブシャシー」と、呼ぶシャシーの完成度の高さだ。4輪操舵、4輪へのトルク配分を自在にコントロールするフルタイム4駆システムなどによって、敏捷性と安定した身のこなしが高いレベルでバランスしている。路面に吸い付くように速度を殺すブレーキも完璧だ。
クローズドコースのスムーズな路面で試乗だったので、乗り心地については一般道での試乗で確認したい。ただし、コーナーの縁石を踏んだ瞬間の突き上げのマイルドさから想像するに、新設計のエアスプリングとデュアルバルブダンパーを組み合わせた足まわりの乗り心地は、かなりレベルが高そうだ。
コンチネンタルGTのプロジェクトリーダーを務めたDarren Purvinによれば、ハードウェアに関しては同じフォルクスワーゲン・グループに属するポルシェと意見を交わしながら開発を進めたとのこと。一方、ソフトはまったくのオリジナルで、ポルシェとはまるで別物のテイストに仕上がっているという。
デザインやインテリアの質感、そして走る・曲がる・止まるといった基本性能に関しては、短時間の試乗ではただただ、感心するほかなかった。この日ふれたパフォーマンスは、コンチネンタルGTの氷山の一角に過ぎないだろうと思わせるほど、奥行きの深さを感じさせるクルマだった。
文・サトータケシ 写真・安井宏充(Weekend.) 編集・稲垣邦康(GQ)
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