馬力やトラクションが限られるクルマの楽しさ
フォルクスワーゲン・ゴルフが愛車だ、という読者は多いはず。筆者も、以前はその1人だった。自分にとって最初のゴルフと出会ったのは、2012年。走行距離の短くない3代目で、車検が残っていて、300ポンドを支払った。
【画像】デジタルデトックスな楽しさ フォルクスワーゲン・ゴルフ Mk1とMk2 最新Mk8.5も 全119枚
それは、ゴルフを徹底的に走らせるという、AUTOCARの企画の一環だった。サーキットの走行会をどれだけ安価に楽しめるか、同僚と競った。結局100周以上も周回させ、廃車になった。かなり突飛な、オーナー体験といえた。
ゴルフの3代目は、歴代でも評価があまり高くない。それでも、ドアはズンと頼もしく閉まり、普通のファミリーカーなら受けることはない、高負荷にも最後まで耐え続けた。
転じて、今日の筆者が運転しているのは初代。1983年式のMk1 ゴルフ GL 1.5で、ブラックの塗装には艶がある。自宅からグレートブリテン島南部のソールズベリーへ向かう途中、すれ違うドライバーにサムアップされた。笑顔で見つめる歩行者も多い。
現代のクルマは、性能が高すぎる。馬力やトラクションが限定的なクルマの楽しさを、しばしば同僚と共有する。ゴルフ GL 1.5の最高出力は76ps。タイヤは13インチで、155/80。低パワー・低トラクションを絵に書いたようなスペックだ。
パワーウエイトレシオとグリップとのバランスが理想的なら、何でもないような前輪駆動のハッチバックでも、飾らない運転の喜びを味わえる。ケーターハム・セブンやトヨタGR86である必要はない。
デジタルデトックスに浸れるMk1
GTIではないから、サスペンションはノーマル。トランスミッションは4速マニュアル。つい、感触が曖昧なシフトレバーを倒し、存在しない5速を探してしまう。
4速で100km/hに迫ると、エンジンは酷使状態にあるとノイズで理解できる。当時のフォルクスワーゲンは、燃費を改善するため長めのギア比を採用したのだけれど。
このMk1は同社のヘリテイジ部門が管理する1台で、状態は良い。5000rpmで発生する最高出力を何度か確かめる。レッドラインまで滑らかだ。
カーブの先へ、小気味よく反応するフロントノーズを向ける。タッチモニターや電子制御技術から開放された世界は、気分が良い。
ステアリングホイールの中央には、VWのロゴでなく、ドイツ・ヴォルフスブルク工場のエンブレム。メーターパネルは、走行速度とエンジンの回転数、水温を見やすく教えてくれる。デジタルデトックスに浸れるクルマだ。
このMk1は後期型。1974年4月の発売時から、多くのアップグレードを受けている。GLはハイグレードでもあった。それでも、ゴルフの製造品質や技術力の高さは、当初から評価されていた。
1983年式が生産される頃までに、初代ゴルフは600万台以上が売れた。伝説といえる記録を、1世代で築いた。
初の試作車はポルシェ デザインはジウジアーロ
フォルクスワーゲン・タイプ1、ビートルの後継モデルとして開発されたゴルフは、当初ポルシェがEA266型と呼ばれるプロトタイプを提案。ハッチバックのボディで、充分な荷室も得ていたが、水冷エンジンはリアシートの下に載っていた。
整備性が悪いと判断され、次のEA276型はフォルクスワーゲンが開発。フロントエンジンの前輪駆動に、トーションビーム式リア・サスペンション、リアシートの下へ位置する燃料タンクなど、最終的なパッケージングが大まかに完成していた。
しかし、エンジンはビートル譲りの空冷フラット4。求められる動力性能や信頼性には、届いていなかった。
量産仕様へ近いプロトタイプ、EA377型を手掛けたのは、アウディの技術者、ルドルフ・ライディング氏のチーム。水冷の直列4気筒が与えられ、ジョルジェット・ジウジアーロ氏による、特徴的なスタイリングをまとっていた。
「当初の提案では、ヘッドライトは長方形で、テールライトと形状を呼応させる予定でした」。ジウジアーロが後年に説明している。
「しかしコストを理由に、円形を選びました。数1000台も生産するなら、作りやすく設計しなければなりません。自分は、スタイリスト以上の存在である必要があります」
当初のレシピを守り続けてきた強み
デザインの特徴も含めて、ゴルフは8代目まで当初のレシピを守り続けてきた。それが巨大な強みだ。実用的で高効率で、製造品質が高く、手に届かないほど高価ではなく、日々の要望に応えるクルマとして、何世代も乗り継いできたユーザーは少なくない。
同時に、ゴルフは進化を止めなかった。Mk2では燃費を改善し、四輪駆動とABS、パワーステアリングを獲得。Mk3ではエアバッグが採用され、V6エンジンのVR6も登場している。2024年に売られているゴルフは8代目。誕生から50年という節目に当たる。
電動化時代の後継車と呼べる、ID.3も登場した。筆者はそれが嫌いではないし、モルモットのような見た目は、カッコいいとすら思っている。
だが初代ゴルフを運転してみて、そのダイレクト感に深く感動してしまった。これは、どんなバッテリーEVにも備わらないものだろう。近年の内燃エンジン・モデルでも、得られていない例は少なくないが。
Mk1のゴルフには、パワステがない。同僚のマット・プライヤーは、この感触をやんわりアドバイスする感じ、だと表現したが共感する。手応えは重く、遊びも小さくなく、正直曖昧だからだ。半世紀前は、鋭く感じられていたはずだが。
シフトフィールはソリッドではない。エンジン音は耳につく。現代のクルマと比べれば、ボディは傾くし静かではない。しかし、不思議な安心感がある。コーナーへ飛び込み、エンジンを吹かせば、充足感が湧いてくる。はっきり楽しい。
ゴルフに乗れば誰でも身なりが整う
ソールズベリーの濡れた石畳を、ボディを揺らしながら進む。ステアリングホイールを回し、大聖堂の路地を曲がる。流れの速い郊外の一般道でも気持ち良いが、旧市街をうろついていても心地良い。
衝突安全性が低いかわりに、運転席からの視界は広い。ルーフを支えるピラーは細い。ボディの硬さを想像すると、集中力は常に高く保つ必要がある。一方で、周囲の状況は極めて判断しやすい。バックセンサーがなくても、殆ど困らない。
Mk1でも、あらゆる人の、すべてのコトへ応える、能力の高さを備える。フォルクスワーゲンCEOのトーマス・シェーファー氏は、「ゴルフに乗れば誰でも身なりが整う」といった発言をしている。その通りかもしれない。
恐らく、読者の多くがゴルフにまつわる思い出をお持ちではないかと思う。学校の送り迎えや、毎日の通勤、友人とのドライブ、レストア、チューニング、サーキットでの走行会。ありふれた記憶から、一生モノの出来事まで。
どんな内容でも、ゴルフ誕生50周年を祝うのに華を添えるはず。もしお持ちでなければ、作ってみてはいかがだろう。
70か国で合計3700万台以上が売れたゴルフ。クラスレスという、ありきたりな表現は、このモデルのために存在するのかもしれない。社会変化や技術進歩を、カタチにしてきたといっても過言ではない。まあ、「最高のクルマ」といった方が手っ取り早いかも。
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