アストンマーティンの新型「DB12」に、『GQ JAPAN』ライフスタイルエディターのイナガキが南仏で乗った。ゴージャスかつ超スポーティな最新スーパーカーに迫る。
大きく変わったインテリア
夢のように洗練された扱いやすいホットハッチ──新型トヨタGRカローラ試乗記
新型DB12はアストンマーティンの次世代スポーツカーの第1弾だ。しかし、パッと見た限りでは「なーんだ、DB11のビッグマイナーじゃん」と、思う人は多いかもしれない。事実、ボクもそのひとりだった。
しかし、実際に乗るとこれまでのDB11とは異なる洗練された2プラス2のスーパーカーだった。
試乗場所はフランス・ニース。眼下にモナコの街並みと地中海がひろがるラグジュアリーホテル「The Maybourne Riviera」が発着場だった。車両価格2990万円の最新スーパーカーがよく似合う。
駐車場にはランボルギーニ「ウルス」やメルセデスAMG「GT」などが停まっていただけに、このホテルが選ばれたのも納得だ。
まずは新型DB12に関するプレゼンテーションを聴く。本語の開発陣がとくに強調していたのはレスポンスの向上とインフォテインメントシステムのアップデートだった。
早速、実車に乗り込むとこれまでのDB11とは、インパネ周りが大きく変わっていた。メーターはフルデジタルで、ナビゲーションマップの解像度も高い。さらにドライブモードに応じ、表示内容が切り替わる。
インパネ上部には10.25インチの高解像度スクリーンを設置。そして、ようやくタッチ式となった。ほかのアストンマーティンのモデルでは、いまだにダイヤルが設置されており、それらと比べると操作性は大幅に向上した。
自慢のインフォテインメントシステムはアストンマーティン初の自社開発だ。機能性は驚くほど高く、ナビゲーションシステムの精度もいい。はじめて走る南仏の道でも迷うことは一切なかった。右左折の案内タイミングも適切で、初の自社開発とは思えぬ完成度の高さだった。
センターコンソールに目を向けるとエアコンや運転支援関連のスイッチが並ぶ。ギヤセレクターも、インパネ上部から移設され、かつスイッチ式から電子制御のトグル式に変更された。個人的には、以前より操作がしやすくなったように思う。
インパネまわりの激変に誰もが驚くかもしれないが、上質なレザーをたっぷり使った豪奢な雰囲気は変わらない。シートの電動調整スイッチも相変わらずセンターコンソールのサイドに設置されているし、サンバイザーに備わるバニティミラーのサイズも小さい。それらの“変わらない部分”に、従来のユーザーはホッとするだろう。
スーパーカーとは思えぬしなやかな乗り心地いざ、最初の目的地であるカンヌに向けて出発だ。エンジンスタートのスイッチを押すと、「ブローン」という勇ましい音とともにV8エンジンが目覚めた。
ホテル周辺は道幅が狭く、気を遣う。対向車も結構なスピードで走ってくる。しかし、新型DB12のフロントまわりの見切りはそれほど悪くなく、運転はしやすい。全幅2.0m超(2145mm)であるのを考慮すれば取りまわしは良い方だろう。
くわえて最低地上高も120mmあるから、市街地の段差にそれほど気を遣う必要もない。カンヌの街中では、速度抑制用のバンプ(突起)がいくつもあったが、制限速度(40~50km/h)のままで問題なくクリア出来た。実用性の高さはこれまでのDB11と変わらないのは嬉しい。しかも、乗り越えるときに不快な振動は巧み抑えられているあたり、ボディ剛性向上を謳うのも納得だ。
ドライブモードは5種類で、「GT」、「スポーツ」、「スポーツ+」「ウェット」「インディビジュアル」で任意で選べる。変更するにはインパネに設置されたダイヤル式スイッチで操作する。
まずはノーマルのGTモードで走ったが、スーパーカーとは思えぬしなやかな乗り心地に驚いた。乗り心地は明らかにこれまでのDB11を凌ぐ。新世代のインテリジェント・アダプティブダンパーが“いい仕事”をしているようだ。くわえて、ミシュランと共同開発した「Pilot Sport 5s」も乗り心地向上に寄与する。
美しい地中海に沿って、大小さまざまなカーブのある道を走っていると、あたかもベントレー「コンチネンタルGT」に乗っているかのような印象を受けた。しかも、ベントレー自慢のコンフォート用走行モード(ベントレーモード)で走っているかのような感覚だ。フロント275/35 R21 103Y、リヤ315/30 R21 108Yというきわめて薄いタイヤを履いているにもかかわらず、だ。路面状況は決して良くはないから、驚異的な乗り心地の良さである。スーパーカーがラグジュアリークーペと近しい乗り心地を実現するとは……。
そんな快適な車内で聴くクラシックは格別だった。試乗車に搭載されていた「Bowers & Wilkins」のサラウンドサウンドシステムは、15スピーカー/1170Wで構成される(メーカーオプション)。
専用の3Dヘッドライン・スピーカーとサブウーファーから聴こえる音は実にダイナミック!
筆者がよく聴くピアニスト、中村紘子のアルバムは、あたかもコンサートホールで聴いているかのような迫力と臨場感、そして彼女の持ち味である繊細な音色が楽しめた。Bowers & Wilkinsを採用するブランドはBMWやボルボなどいくつもあるが、開発年次が新しいだけあって、新型DB12は格別だった。
驚異の加速性能素晴らしい乗り心地に身を委ね、心地よいクラシックのサウンドを聴いていると、一瞬、アストンマーティンがスーパーカーブランドであるのを忘れてしまった。
が、高速道路に入ると、印象は大きく変わる。「スポーツ」に切り替えると、アクセル・レスポンスが向上し、驚異の加速性能を発揮! アクセルをほんのわずか踏めば、エンジンは瞬時に反応し、グイグイ加速する。これまでのDB11も速かったが、新型DB12のほうが思い通りの加速が得られたような気がした。
それもそのはずで、フロントに搭載するエンジンは4.0リッターV型8気筒ガソリンツインターボで、680ps/6000rpmの最高出力と、800Nm/2750~6000rpmの最大トルクを誇るが、とくに後者はDB11と比べて34%も増加したのだ。
最初の料金所を抜けてすぐ、アクセル全開を試みた。すると、新型DB12は、高性能電気自動車並みに勢いよく加速し、シートバックに身体がグッと押しつけられた。助手席に座っていたカーライフ・エッセイストの吉田由美さんも思わず「おー!!! スゴい!!!」と、声をあげた。
あとで資料を読み返すと0~100km/hの加速タイムは3.6秒。最高速度は325km/hに達するというから、強烈な加速力も納得だ。さっきまでのんびり走っていたのが嘘だったかのような、鋭い走りをみせてくれた。8速オートマチック・トランスミッションとのマッチングも良好で、ギクシャクするシーンは皆無である。
カンヌからの帰路では、アップダウンやいくつものヘアピンカーブのあるワインディングも駆け抜けた。シャープなハンドリング、強力なストッピングパワーを持つブレーキも相まって、不安なく走行出来た。おかげでカンヌ郊外の山々や、古い建物が並ぶ集落の風景も堪能出来た。異国の、しかも見知らぬ道でこれほどリラックスして運転出来るスーパーカーは類い稀だ。
実用性の高さは不変ワインディングを経た最後の区画では、リヤシートに座った。前出の吉田さんが自身のYouTube動画を撮影するためである。
身長168cmの筆者ではヘッドクリアランスこそギリギリだったものの、助手席を前方に出せばレッグスペースはちょっとだけ余裕があった。バックレストが垂直に近いためロングドライブは厳しいかもしれないが、しなやかな乗り心地はフロントシートと変わらないので、ちょっとしたドライブであれば十分耐えられる。個人的にはライバルと目されるフェラーリ「ローマ」よりも広いように感じた。背の低い子どもであれば長距離も問題ないだろう。ラゲッジルーム容量も262リッターあるから実用性は高い。
新型DB12の価格は2990万円。最大のライバルと目されるフェラーリ・ローマが2870万円だから悩ましい。ただし、フェラーリの場合、“素”のモデルでは快適装備が少なく、たとえばApple CarPlayもオプション扱いだ。その点、新型DB12は標準であるし、ACC(アダプティブクルーズコントロール)や自動ブレーキ、レーンキープアシストといった運転支援装備も搭載するなど、標準装備レベルの高さはアストンマーティンに軍配があがるだろう。
ちなみにこれまではアストンマーティンとフェラーリを比較・検討するユーザーは少なかったようだ。アストンマーティン自身も認識していたようで、プレゼンテーションで披露された資料には、現在のブランド・ポジショニングをポルシェと同列にし、フェラーリはそれよりも上の位置としていた。
しかし今後はフェラーリ並み、ないしはそれ以上のポジションを目指していくそうだ。そうした状況においてデビューした新型DB12は、ブランドにとって重要な1台となるのは間違いない。
文と編集・稲垣邦康(GQ) 写真・アストンマーティン
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みんなのコメント
メルセデスも所詮大衆車も造る、トヨタよりは 上なメーカーにしかすぎない
ポルシェも VW傘下の一部門に成り下がっているし、BMWもミニでFFに手をつけて ブランドに傷をつけた
F1は勿論 市販車にル・マンで勝ったマシンも、マラネロから生まれた フェラーリは純血だ
アストンは 名だけ、F1で 今はフェラーリの上を行くが、PUはメルセデスだし 次はホンダを載せると言う
ドラ息子のために パパがチームを回収し、レッドブルのノウハウを知る者を引き抜き 速くなっただけ
市販のスペシャリティーカーは、最早 スペックも価格も意味は無い、大事なのは 現実の歴史的背景で在り、そこから感じる 存在意義だ