シビックタイプRなどがニュルでFF最速タイムバトルが繰り広げられるほど、走りにおいてもFF車の高性能化が進んでいる。しかし、そんな現在でもBMWは2シリーズのクーペだけは新型にもFRを採用し、その新型2シリーズクーペを7月に発表した。
BMWは1シリーズなどでFF化を進めているいっぽうで、FRレイアウトをあえて継承させた新型車をしっかりとラインナップしているのだ。
実は欧州ベストセラーSUVのVWティグアン マイナーチェンジを経た実力は??
とはいえ、技術的にはFFレイアウトでもスポーティで高性能なクルマが作れる今、BMWがFRにこだわる理由とは何か? モータージャーナリストの斎藤 聡氏が解説する。
文/斎藤 聡 写真/BMW、ベストカー編集部
【画像ギャラリー】BMWがこだわる重量配分50対50の前置きエンジン後輪駆動(FR)を写真でチェック!!
■「駆け抜ける喜び」への追求に適した駆動方式
もしかしたらBMWは、これまで一度も「FRにこだわっている」とは言っていない?
いろんな資料を当たってみたのですが、そんなふうに思えてきました。たぶん言っていないのではないかと思います。ただし、結果としてFRを選択し、これがBMWのいう「駆け抜ける喜び」を体現するのに最も適した駆動方式だったということは言えそうです。
BMW2シリーズクーペ 「駆け抜ける喜び」を追求するために選ばれたコンパクトFR。先行デビューした4ドアグランクーペはFFだが、2ドアクーペはこだわりのFRで発表された
では、なぜFRが優れた駆動方式だといえるのでしょうか。理由は3つあります。
■FRが優れた駆動方式だといえるワケ
1つは前輪を操舵、後輪を駆動と役割分担できるからです。タイヤは持っているグリップ性能を旋回に100%、駆動に100%同時に使うことができないんです。
タイヤ(1本)の駆動力を100%引き出そうとしたら旋回グリップ力を使うことはできないんです。逆に旋回グリップ力を100%使おうとするときは、駆動グリップ力をいっさい使うことができません。
旋回グリップ力と駆動グリップ力の関係はベクトルの合力のようなもので、旋回グリップ力と駆動グリップ力の合力がタイヤのグリップ性能の最大値を移動します。 (図1参照)
図1 加速しながら右旋回したときの摩擦円。駆動グリップ力が強いと旋回グリップ力が下がり、駆動グリップ力が小さいと旋回グリップ力が強くなる
これをベースにFFを考えてみると、FFは前輪で操舵(旋回)と駆動力を担当しなくてはならず、旋回の時は駆動グリップ力が、駆動の時は旋回グリップ力が邪魔をしあい、100%の性能を引き出すのが難しいのです。
一方、FRは前輪で旋回グリップ力を、後輪は駆動グリップ力をそれぞれ100%引き出すことができるので、4つのタイヤの力を効率よく使うことのできる駆動方式といえるわけです。
実際にBMWを走らせてみても、ハンドルを切った時の雑味のないクリアなステアフィールは絶品で、路面の様子やタイヤの変形具合などを逐一正確に伝えてくれ、前輪の様子が文字どおり手に取るようにわかります。
2つ目はFRというレイアウトが持っている重量バランスのよさです。50対50といってすぐに思い浮かぶのは、エンジンをドライバーの後ろに搭載するミッドシップレイアウトかもしれませんが、ミッドシップで有利なのは、重量物をクルマの中心に集めやすいということ。
ミッドシップで前後重量配分を50対50にするのはとても難しいんです。ボンネット内に重量物がないので、重量配分はどうしてもリア寄りになってしまいます。
タイヤの特性として、あるレベルまでは接地荷重が高くなるほどタイヤのグリップ性能は高くなります。つまりフロントの接地荷重が少ないと、タイヤもグリップ性能が少なくなってしまいます。
その点ボンネットの後方にエンジンをレイアウトして重量バランスを整えたほうが、フロントタイヤのグリップを安定して引き出すことができるのです。
ボンネットがスラリと長いBMWの特徴的なスタイル 写真は4シリーズクーペ。BMWは長い直列エンジンを車体中央よりに縦置き搭載するため、必然的にボンネットが長くなる
もっともFRでも前後重量配分を50対50付近にまとめるためには、かなりエンジンをボンネットの後方に配置する必要があります。これが、ボンネットがスラリと長いBMWの特徴的なスタイルを作り上げているわけです。
■重量配分を50対50にこだわる深いわけ
3つ目は2つ目と深くかかわっているのですが、BMWが50対50にこだわっているということです。これはちょっと専門的な話になってしまうのですがちょっとお付き合いください。
BMWの重量配分50対50にこだっわったクルマ作りにはFRレイアウトは欠かせないプラットフォーム。しかし、近年はセンサーと電子制御の進化でほかの駆動方式でも操縦性を向上できるようになった
クルマのアンダーステア、オーバーステアを示す考え方として、ニュートラルステアポイント(NSP)というのがあります。うんとざっくり説明すると、旋回中の前輪のグリップの総和と後輪のグリップの総和が釣り合うポイントをニュートラルステアポイントといいます。
実際にはコーナリング中のクルマには微細なスリップアングル(横滑り角)が発生していて、これによって発生するグリップ力に差が出るので、クルマのサスペンションセッティングによっても違いが生じてしまうのですが、どんぶり勘定でいうと前後のタイヤサイズが同じなら、ニュートラルステアポイントはホイールベースのほぼ中心にあると考えられます。この時、駆動力は考慮しません。
ニュートラルステアポイントが重心よりも前にあるか後ろにあるかでアンダーステア、オーバーステアが決まるという考え方です。
例えばフロントヘビーなクルマで、ニュートラルステアポイント(以下NSP)よりも重心が前にあればアンダーステアになります。前輪への重量負担が大きくなるので先にタイヤの限界を迎えるからです。
ミッドシップやリアエンジンの場合はNSPより重心が後ろにあればオーバーステアになります。
BMWは前後重量配分が50対50なので、NSPと重心がほぼ一致するのでニュートラルステアになります。もちろんこれは素性の話であって、実際にはサスペンションのセッティングなどで弱アンダーステアにセットするのですが、素性がニュートラスステアのクルマは、セッティングの自由度がとても広くなります。
ちょっとアンダーステア、ちょっとオーバーステア(そんなクルマはメ-カーでは作りませんが)といった具合にセッティングの自由度がとても広いわけです。
もちろんポルシェ911のように後輪駆動でリアタイヤを太くすれば、(NSPは前輪と後輪のグリップの総和のバランス点になるので)NSPをホイールベースの中央より後ろにすることができ、重心点と合わせることも不可能ではありません。
しかし、荷重変化による前輪のグリップの変化量が大きくなるので、操縦性の変化も大きく神経質になりやすいのです。
ポルシェ911のように後輪駆動でリアタイヤを太くすれば、NSPと重心点を合わせられるが、荷重変化による操縦性がピーキーになってしまう
その意味でも素性としての特性を整えるためにBMWが50対50にこだわっているというわけなのです。
■近年のハイパワー車は電子制御4WDでダイナミックにコントロールできる
もうひとつ付け加えるならフロントヘビーなFRに比べ50対50のFRにすると、加速時の後輪への重心移動が容易になるので、よりハイパワーなエンジンを搭載した時に操縦性のバランス(弱アンダーステア)を保ちながら後輪のタイヤサイズを太くすることで対処しやすくなります。
フロントヘビーなFRでも後輪を太くして安定性を高めることはできますが、荷重を後ろに移動させるのに時間に遅れが生じるので、操縦性の面では不利になります。
近年では、ハイパワーFR車には電子制御カップリングを使った4WD化が盛んにおこなわれるようになっています。BMWも例外ではありませんが、前後重量バランスの整った4WDが、素性として操縦性のチューニング幅が広いのは言うまでもありません。
圧倒的なトラクション性能を備え、かつ操縦性のいいオンロード向け4WDが可能なわけです。M5はその典型的な1台でしょう。
BMW M5コンペティション 625psを発揮する4.4L V8ターボと後輪駆動を重視した4輪駆動システム「M xDrive」を搭載
というわけで、電子制御が未熟な時代、BMWは理想的な操縦性を作り出すのに適したシャシーを作るために50対50の重量配分を持ったFRにこだわってきたということなのだと思います。このクルマづくりの姿勢は今後も変わることなくBMWのDNAとして受け継がれていくのだろうと思います。
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そしていつしか特徴となり結果ブランドの顔になる。
薄利多売で儲け優先の下のクラスや入門グレードは
そう言った特徴抜きでもブランド力で車音痴相手に
商売が成立する。
儲け開発費を稼がないといけないから
そう言ったメリハリを効かせるのは私は良いと思うけど
やりすぎるとイメージダウンに繋がる。
諸刃ですね。