象は走り出すと誰にも止められない
人間と同じように、晩年に開花するクルマも存在する。ランチアが開発したファミリーハッチバック、デルタは1979年から販売されていた。しかし、ラリーマシンとの繋がりを持つ、HFインテグラーレを襲名したのは8年後の1987年だった。
【画像】止まらない子象の人気 ランチア・デルタ 現代版ストラトスとラリー037 往年の205とクワトロも 全103枚
それ以降、1995年に製造を終えるまで、デルタはホットハッチの王者として地位を保ち続けた。公道ではスーパーカーを驚かせる走りを披露し、ラリーステージではライバルを圧倒する速さでわれわれを興奮させた。
1984年に投入されたHFターボとHF 4WDで、既にデルタの優れた能力の片鱗は表れていた。さらに1987年、ランチアはラリーのグループAカテゴリーで戦うことを決めると、デルタへ白羽の矢が立ち、惜しみない技術力が投じられることになった。
当時の規定では、グループAのホモロゲーションを得るには、年間5000台の公道用モデルを製造する必要があった。しかし実戦での活躍で人気へ火が付き、HFインテグラーレの生産は急増。1993年までに4万5000台を売りさばいている。
このHFとは、ハイ・フィデリティ、ハイファイの略。日本語では高忠実度を意味する。インテグラーレは、イタリア語で完全版といった意味だ。
ランチアの高性能モデルのアイコンになったのが、象のロゴ。創業者のジャンニ・ランチア氏によれば、象は一度走り出すと誰にも止められないため選ばれたらしい。
6度のマニュファクチャラーズ・タイトル
ラリーマシンにチューニングされたデルタは、1987年から1989年の世界ラリー選手権でドライバーズタイトルを連取。1991年にも、最新のトヨタ・セリカ GT-FOURを破っている。マニュファクチャラーズ・タイトルは、6度も勝ち取った。
公道用モデルも、人気と足並みを揃えるように1987年から進化を続けた。当初のデルタ HFインテグラーレ 8vは、ギャレットT3ターボで2.0L 4気筒ターボを過給し、185psを達成。5速MTと四輪駆動というパッケージングは、最後まで変わらない。
1989年には、200psへ増強されたHFインテグラーレ 16Vへバトンタッチ。それまでは左ハンドル車のみだったが、右ハンドル車も提供が始まった。
ちなみに8vと16Vとを見た目で判断する材料の1つが、ホイールボルトの数。前者は4本だが、後者は5本でホイールが固定されている。
1991年、5度目のマニュファクチャラーズ・タイトルの獲得と、ファクトリー・チームでの参戦終了を記念するようにエボルツィオーネIが登場。デルタの過熱ぶりに一層の拍車がかかった。
このエボルツィオーネIでは、2.0L 4気筒ターボエンジンは210psを発揮。ワイドなフェンダーやアグレッシブなバンパー、テールゲート上のウイングなどで視覚的な武装も見事だった。
1993年にはエボルツィオーネIIへバージョンアップ。最高出力は215psへ高められ、アルミホイールのサイズは15インチから16インチへアップしている。
世界的な人気で価格上昇 国を超えた取り引き
生産終了から30年近くが経過したデルタだが、後期型になるほど人気も高い。最高のエボルツィオーネIIへ10万ポンド(約1600万円)を費やすことも可能だが、ラリー・レジェンドのベースモデルの入り口は、2万5000ポンド(約400万円)程にある。
すっかりコレクターズアイテム化しており、賢明な金額といえるのはHFインテグラーレ 8vや16Vといってもいい。徐々に価格は上昇傾向にあるが、われわれに届かないレベルとまではいえない。
世界的な人気は衰えを見せず、国を超えた取り引きが行われている。興味をお持ちなら、早いうちに入手されることをオススメしたい。
新車時代のAUTOCARの評価は
高精度なステアリングで卓越した操縦性を実現している。コーナリングは驚くほどにシャープだ。コーナーの頂点でアクセルペダルを蹴飛ばし、ターボブーストを高めても、トラクションが失われることはまったくなかった。(1988年2月18日)
オーナーの意見を聞いてみる
マイク・ジョイス氏
「わたしは2004年にエボルツィオーネIIを2万5000ポンドで購入しました。近年の価格は高騰しており、先を見越した投資といえましたね。もちろんガレージへ仕舞わずに運転を楽しんでいます。年間6000kmくらいは走っています」
「予算の限りで最高の1台を選ぶのが良いでしょう。右ハンドル車へコンバージョンされた例はオススメしません。ステアリングラックが異なり、操縦性が悪化しているんです。近年は補修部品の価格も上昇しています。慎重に選びたいところですね」
購入時に気をつけたいポイント
エンジン
アッパーサンプ・ガスケットからのオイル漏れがないか確かめる。カムシャフトは、特にエグゾースト側で摩耗しやすい。エンジンオイルに含まれる金属粉の影響だという。タイミングベルトとウオーターポンプは、3年毎の交換がベスト。
排気ガスに含まれる白煙は、ターボかバルブガイドの摩耗が原因。ゴム製の燃料ポンプマウントは、経年劣化で駄目になりガソリンが送られなくなる。
トランスミッション
リアデフからのフルード漏れや、フロントデフからのギアノイズがないか試乗で確かめたい。ビスカス・カップリングのフルードが古くなると、四輪駆動の能力へ影響を及ぼす。5速MTのシンクロコーンは真鍮製で、摩耗しがち。
サスペンションとステアリング
フロント側のウイッシュボーン・ブッシュがヘタると、フロントタイヤの偏摩耗を引き起こす。アフターマーケット製のサスペンションで車高が落とされた例もあるが、スプリングレートが高すぎるとボディシェルへ負担が掛かり、ヒビが入ることもある。
エボルツィオーネのブレーキは鳴きやすい。
ボディ
デルタのボディは錆びる。前後のガラス付近、ストラットマウント周辺、フロントフェンダーとクロスメンバー、ルーフ後端などが錆びやすいポイント。
Aピラーの付け根、フロントガラスを固定するラバーシールの裏側や、サイドシル付近に亀裂がないか確かめる。サイドスカートを外さないと、サイドシル全体の状態は確かめられない。
インテリア
ラジオや時計周辺のダッシュボードは、ネジの閉めすぎでひび割れる。荷室を隠すパーセルシェルフは、まだ新品が入手できる。内装パネルなどは、新車時から走行中にきしむことが報告されていた。
知っておくべきこと
ランチアは初代デルタの終了とともに英国市場から撤退した。だが、本国では2世代目のデルタが1993年から販売されていた。この2代目デルタにもHF仕様があり、前輪駆動ながら185psが与えられている。
四輪駆動化されることはなく、ラリーへの参戦もなく、ホットハッチと呼べる活発さではあったものの存在感は薄かった。並行輸入され、英国の道を走っている例が稀にある。
左側通行の国では右ハンドル車の方が乗りやすいが、デルタを選ぶ時は左ハンドル車の方がベター。パッケージングの制約と変更コストを都合に、性能で劣るステアリングラックが組まれている。一般的に、左ハンドルのデルタの方が価値も高い。
初期型のHFインテグラーレ 8vでも、0-100km/h加速を6.4秒でこなす。5000ポンド(約80万円)程上乗せすれば、5.7秒でこなせる16Vが手に入る。これは晩年のエボルツィオーネにも迫るダッシュ力といえる。
英国ではいくら払うべき?
2万5000ポンド(約400万円)~2万9999ポンド(約479万円)
英国では、初期型のHFインテグラーレ 8vが選べる価格帯。充分に魅力的なデルタだ。
3万ポンド(約480万円)~3万9999ポンド(約640万円)
状態の良いHFインテグラーレ 8vだけでなく、16Vを英国では選べるようになる。
7万5000ポンド(約1200万円)~12万4999ポンド(約1999万円)
価格帯がジャンプし、状態の良いエボルツィオーネIを英国で探すならこの辺りから。
12万5000ポンド(約2000万円)以上
最終仕様のエボルツィオーネIIを英国では入手できる。走行距離は短く、確かなメンテナンス履歴の1台を選べるはず。
英国で掘り出し物を発見
ランチア・デルタ HFインテグラーレ 16V 登録:1989年 走行距離:14万3000km 価格:3万2995ポンド(約528万円)
年式を考えれば走行距離は妥当。スペインで売られているが、英国の代理店が輸入してくれるという。3オーナー車で、ボディのサビはなく、状態は良好だと主張されている。初代オーナーが、8vを16Vへコンバージョンしたとのこと。
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みんなのコメント
走ってたら振動で内装ネジが抜けて落っこちてきたり、電装系弱いし
剛性無くてジャッキで上げたらドア開かなくなってたのに
今更、もと8Vを16Vにコンバートしただけでもいつ火を噴くか危ない上に、
14万kmも走ってるような中も外もボロボロでまともに真っすぐ走らないようなの勧められてもなww