スバル新型レヴォーグのプロトタイプのお披露目があり、その全てがフルリニューアルされていることに驚かされた。とても1記事でその内容をお伝えできないので、まずは8月2日茨城県の(財)日本自動車研究所のテストコースで試乗したときのレポートからお伝えしよう。なお正式発表は10月15日(木)が予定されている。
次世代アイサイト
スバル新型レヴォーグはこうして造られている アイサイトXとCB18型エンジン解説
新型レヴォーグには次世代アイサイトである「アイサイトX」が搭載されていた。進化型アイサイトは何が変わったのか、まずはその概要をお伝えしよう。
新型レヴォーグに搭載されたアイサイトには、これまでのアイサイトの進化型「アイサイト」と、3D高精度地図データと高精度GPSを搭載した「アイサイトX」の2種類がある。もちろん、アイサイトXはその進化したアイサイトにプラスしての機能である。
搭載するデバイスは広角化した新型ステレオカメラに左右側方レーダーをスバル初搭載している。そして左右後方レーダーとリヤソナーでセンシングし、それと電動油圧ブレーキで構成されている。
実現する機能
作動領域を拡大したプリクラッシュセーフティは前方の自転車、対向車歩行者をステレオカメラで検知する。カメラで見えない前側方の車両はレーダーで検知できるようになった。さらにプリクラッシュブレーキでは、止まりきれない状況となった場合、システムがステア操舵制御を行なう「緊急時プリクラッシュステアリング」を初搭載した。
その上で後方車両を見落とした状態で車線変更しようとした場合、エマージェンシーレーンキープアシストが稼働し、元の車線へ戻す動きをする。
このアイサイトに3D高精度マップとGPSを組み合わせたアイサイトXでは以下の機能が実現している。
渋滞時のハンズオフがまずある。50km/h以下であればハンズオフが可能になり、停車から再発進までアシストしてくれる。システムが作動していれば、何秒停止していても前走車が動けば再スタートを自動でしてくれる。
アクティブレーンチェンジアシストはウインカーに連動して車線変更を行なうが、ドライバーはステアリングを保持している必要がある。もちろん、後方、側方の安全が確認されなければキャンセルされるし、手動で移動した場合、先のエマージェンシーレーンキープアシストが稼働して元の車線に戻るように促される。
これまで他社になかった機能として、料金所前速度制御の機能がある。合わせてカーブ前速度制御機能が新機能として追加されている。これは、料金所が近づいた際、通過速度20km/hまで自動で減速し、通過後、再加速も自動で行なうもの。またカーブでもかなりきついRの場合、自動で速度調整をしながらカーブを曲がっていくというものだ。これは後ほど試乗レポートでお伝えしよう。
そしてドライバー異常時対応システムがスバル初搭載された。もちろんドライバーモニタリングシステムを搭載したことによる対応なのだが、ツーリングアシスト(ACC)や渋滞時ハンズオフ機能を使用中、システムがハンズオンを要求してもドライバーが反応しない場合に作動するものだ。システムは、事故のリスクを避けるため車線内で減速・停車させる。その時、ハザードランプは自動点灯をし、クラクションも自動で吹鳴され、パーキングブレーキが作動して停車する。
アイサイトX試乗テスト
今回のテストでは専用の3D地図を制作し、車載してテストした。テストコースには2台の新型レヴォーグを用意し、1台には後続車、先行車の動きをさせてアイサイトXのテストをした。
アクティブレーンチェンジアシストでは、カメラは車線が2車線あることを認識すると、モニターにグリーンの車線が現れ、アイサイトXが作動していることを知らせる。その状態でウインカーを右に出すと、滑らかにごく自然に車線移動し移動先で直進状態を作る。この時、ドライバーはハンドルを保持している必要があり、保持がシステムに認識されないと即座にキャンセルされた。また渋滞時ハンズフリーの状況では稼働しない。
後方車が近い場合などはエマージェンシーレーンキープが働き、車線変更は中断される。無理に手動で車線変更をしようとしてもシステムがステアリングを元の車線へ戻るように働くのでドライバーはすぐに気付くことができる。
料金所の通過テストでは、今回パイロンを使って料金所という想定でテストした。ツーリングアシスト機能(ACC)で走行中、料金所が近づくとシステムが自動で減速させ、20km/hで料金所を通過。通過後、再び自動で再加速し設定速度まで速度を回復する。
カーブ前自動減速の機能のテストでは、最初に完全マニュアルでテストコースを走行。120km/hの速度でコーナーに進入するとかなりきついカーブ。そこを人間がステア操作とアクセル操作をしながら走行するには、ある程度運転の技量が要求されるようなきついカーブだ。
つぎにアイサイトXが車線を認識した状態で同じコーナーへ120km/hで近づいていく。すると100km/h程度まで速度を落とし、コーナーにはいると110km/hまで速度を自動で回復させるのだ。運転技量によってはシステムのほうが安全に速くコーナーをクリアするレベルで、かなり高度なものという印象だった。運転技量によっては100km/hで走行できない人もいそうなカーブでありながら、アイサイトXなら走行してしまうという凄さだ。もちろん、車両がふらついたりは全くせず、安定してコーナリングするのは言うまでもない。
こうした制御ができている背景には、スバルはエンジニアのドライビング技術向上のためのトレーニング「SDAスバルドライビングアカデミー」の存在が大きい。エンジニアがテストドライバーと同じレベルでドライビングできるようにトレーニングする環境があり、システム制御をつくるエンジニア自身がテストをすることで、感覚の齟齬や、伝わらない感覚、あるいはプログラムの作り直しにかかる時間の短縮といった効率の良さも持ち合わせているのだ。
こうしたことで運転の上手い人が運転しているような、運転アシストができるというわけだ。
テストを通じて、アイサイトXのレベルの高さを実感し、まさに高度運転支援システムであることが理解できる。(レベル2)「人はミスを犯す」という欧州のクルマ造りの根底と同じベクトルで、人のミスをカバーする機能としてかなり高いレベルで有効だと感じた。
ただ、さまざまな走行条件の中で、人がミスを犯した時、アイサイトXは警告を発する。主に警報音が車内に響くのだが、テスト中、何度かその音を聞くことができた。が、それが何のエラーを自分が犯しているのかわからないことも多かった。今後は、こうしたHMI(ヒューマンマシンインターフェイス)の難しさの一面も進化してくのだろう。<レポート:高橋明/Akira Takahashi>
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