2019年7月16日、日産はV37型スカイラインのビッグマイナーチェンジモデルを発表した。2014年2月26日の発売から約5年で初めての大がかりな変更を受けた。発売は2019年9月となる。
今回のビッグマイナーチェンジのポイントを大まかに分けると、先進運転支援機能プロパイロット2.0の搭載と、パワートレインの変更という2本柱となる。
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なかでも往年のスカイラインファンが唸りそうなトピックスはやはり、スカイライン史上最強の405psを誇る新型3L、V6ツインターボエンジンを搭載した400Rをラインアップしたことだろう。
さて、ビッグマイナーチェンジしたスカイラインはどれほどの進化を遂げたのか、解説していこう。
文/ベストカーWEB編集部
写真/日産自動車
世界初の高速道路同一車線内ハンズオフ機能を搭載したプロパイロット2.0とは?
プロパイロット2.0と2種類の新型3L、V6ターボ搭載でスカイラインの人気は復活するか?
プロパイロット2.0、ハンズオフ時のイメージ。ドライバーの状態をモニタリングし、万一の場合は警告が発出され、緊急自動ブレーキが掛けられる仕組みになっている
登場から5年を経て大がかりなマイナーチェンジを受けたV37型スカイラインだが、インフィニティバッジを付けたり、提携先のダイムラーから供給を受けたメルセデスベンツ製2L、直4ターボを搭載したりと、どこか迷走というか、本気でスカイラインを日本で売ろうとしていないのではないかと思ったものだ。
そんななか、久々に日産から「新型スカイライン」を発表しますと、事前にマイナーチェンジモデルの情報を聞いて内容を見た時には、かなり気合が入ったマイナーチェンジだと、感じ取れた。
今回のスカイラインの発表にあたり、星野朝子日産自動車副社長のコメントからも、スカイラインを大切にしていることがわかる。
「ニッサン・インテリジェント・モビリティの取り組みのもと、ゼロエミッションとゼロフェイタリティ(交通事故による死亡・重傷者数をゼロ)社会の実現を目指しています。日産の技術の象徴であり、日産車で最も長い歴史を持つスカイラインに世界初のプロパイロット2.0を搭載し、ドライバーの運転支援を進めることで、さらなる交通社会の実現を目指して参ります。そして最先端技術を多く搭載した新型スカイラインは日本のお客様にさらなるワクワク感をお届けします」と述べている。
■マイナーチェンジのポイント
●先進運転支援技術「プロパイロット2.0」を搭載(ハイブリッド車のみ)
●ダイムラー製の2L、直4ターボエンジンを廃止し、新型3L、V6ターボ搭載
●スカイライン史上最強405psの3L、V6ツインターボエンジンを搭載した400Rをラインアップ
●シャシー性能の向上
●エクステリア、インテリアのデザイン変更
●インフィニティバッジを日産バッジに戻した
●新しいNISSAN CONNECT(コネクテッドサービス)をスカイラインから初搭載
さて、マイナーチェンジの主なポイントは上記に挙げているが、大きく分けると、プロパイロット2.0とパワートレインの変更という2本柱になる。
まず、2本柱の1つ、ハイブリッド車に全車標準装備されたプロパイロット2.0から解説していこう。
このプロパイロット2.0は、高速道路で同一車線内ハンズオフが可能なナビ連動ルート走行を実現した、世界初の先進運転支援技術で、今回のスカイラインに初搭載された。
メーター中央のプロパイロット表示画面
プロパイロットはどのように作動するのか、具体的な作動シーンを紹介していこう。
まず、ナビゲーションシステムで設定したルート上の高速道路の本線に合流し、ナビ連動走行が可能になるとディスプレイの表示と音でドライバーに通知。
スイッチ操作でナビ連動走行を開始すると、設定した速度を上限に、先行車両との車間距離を一定に保ちながら車線中央を走行するよう支援する。
同一車線走行時にはドライバーが常に前方に注意し、道路・交通・自車両の状況に応じ直ちにハンドルを確実に操作できる状態にある限りにおいて、ハンズオフが可能となる。
前方に設定した速度より遅い車両が走行している場合、システムが追い越し可能と判断するとディスプレイへの表示と音でドライバーに提案する。
ドライバーがハンドルに手を添えてスイッチ操作で承認すると、右側の車線へ車線変更。追い抜きが完了すると、車線変更可能なタイミングをシステムが判断し、同様の操作で元の車線へと戻る。
そして、ルート上の高速道路出口に近づくとディスプレイの表示と音でドライバーに知らせ、連絡路へ分岐した後、ナビ連動ルート走行を終了する。
ハンズオフができない場所・状況は、対面通行路、トンネル内、カーブ路、料金所の合流・車線数減少の地点およびその手前など。ハンズオフができない区間に入る時には、事前にドライバーに知らせるという。
このプロパイロットには世界初、日本初の技術が満載されているが、どんな機能があるのか? 主なものは以下のとおり。
■世界初/高速道路での同一車線内ハンズオフ機能
高速道路の本線走行中、ドライバーが常に前方に注意して道路・交通・車両の状況に応じて直ちにハンドルを確実に操作できる限りにおいて、同一車線内でのハンズオフが可能となっている。
■日本初/ルート走行中の車線変更と分岐の支援機能と、追い越し時の車線変更の支援機能
ナビゲーションシステムで目的地を設定し、高速道路の本線に合流すると、ナビ連動ルート走行を開始できる。
ナビと周囲の360度センシング情報に基づいて、ルート走行中の分岐や追い越しのための車線変更なの適切なタイミングをシステムが判断し、ドライバーに提案する。
ドライバーがハンドルに手を添え、スイッチ操作を承認することで、車線変更支援を開始。車線変更や追い越し、走行車線の復帰もスムーズに行う。
■日本初/3D高精度地図データを用いた高精度運転支援制御
自社の位置を高い精度で把握し、正確かつ滑らかにステアリングを制御。カメラの範囲よりも席の道路形状(曲率、勾配など)を先読みし、滑らかな速度を制御、分岐やIC出口を考慮し、レーンレベルの走行を計画する。
■360度センシング
最新、高性能化されたセンサーで白線、標識、周辺車両を360度検知。7個のカメラ(前方150度、54度、28度のトライカム、後方は4個のAVMカメラ)、5個のレーダー(フロント1個、サイド4個)、12個のソナーを装備。
■プロパイロット緊急停止時SOSコール機能
プロパイロット2.0での走行中にドライバーが前方注意やハンズオンを促す警報に反応しなかった場合、ハザードランプが点灯し、徐々に減速~停止させるなど、システムが車両を緊急停止させ、専用のオペレーターに自動接続。必要に応じてオペレーターが救援要請すると。
■インテリジェントインターフェース
プロパイロット2.0の作動するにあたり、リアルタイムにメーターやヘッドアップディスプレイ上に表示。
周囲の交通状況を判断し、システムが車線変更のタイミングを提案すると、ドライバーがボタン承認で支援が開始するなど、操作しやすく、わかりやすい情報を表示。またドライバーモニターを装備して、ドライバーが前方を注視しているか常に監視。
パワートレインは3.5Lハイブリッドと304psと405psの3L、V6ツインターボ
Vモーショングリルがビッグマイナーチェンジモデルのデザイン上のポイント
2本柱の2つめはパワートレインの変更だ。3.5Lハイブリッドは変わっていないが、ダイムラー製の2L、直4ターボ(2014年5月に追加された200GT-t。211ps/35.7kgm)が廃止され、代わりに新開発のVR30DDTT型3L、V6ツインターボに置き換わった。
ちなみに世界初の可変圧縮VCターボは横置きFF用のため、縦置きFRのスカイラインには搭載できない。
いわき工場で生産されるこのVR30DDTT型3L、V6ツインターボエンジンは304psと400psの2タイプを設定。400psという数値はスカイライン史上最強の馬力となる。
日産バッジが入った3L、V6ツインターボが搭載される400R
304ps、405psエンジンにはそれぞれ、スロットルのスピードを向上させた新型モーターをバルブタイミングシステムに組み込んでレスポンスを向上させる「アドバンスタイミングコントロール」、タービンブレードのデザインを最適化し、新型のタービンスピードセンサー、インタークーラーシステム、電動アクチュエーターを採用してパフォーマンス、レスポンス、燃費を向上させる「新型ツインターボシステム」など、新技術を満載しているエンジンだ。
新しいアルミエンジンブロックはシリンダーボア86.0mm、ストローク86.0mmと同じ長さのスクエア型エンジンとして設計。低い機械摩擦と素早いエンジン始動を同時に実現する。
また、エンジンブロックのミラーボアコーティング、シリンダーヘッド一体型エキゾーストマニホールドの採用によってエンジン重量を軽量化。
新型エンジンは従来のV型6気筒エンジンと比較して排気量を19%(約0.7L)減少させており、コア構造の重量は194.8kgと従来エンジンから14.1kgの軽量化を実現。
新しいターボチャージャーと先進的な水冷式インタークーラー(CAC)システムの導入による重量増は25.8kgに抑えられ、エンジン全体の重量は220.6kgとなる。
このほか、スロットルの位置やエンジンスピードに応じて燃料をより正確に燃焼室に噴きつける新型直噴ガソリン(DIG)燃料システム、燃焼室における空気量をより正確に調整する最新型のバルブタイミングコントロール、従来エンジンから機械的な摩擦を40%軽減させるミラーボアコーティング技術などを採用することで、304ps/40.8kgmと405ps/48.4kgmを発生する。
405psエンジンは高負荷下で効果的に熱管理するため2つのインタークーラー用ポンプを搭載。燃費は従来エンジンから6.7%向上して、400ps級エンジンでトップクラスの燃費を達成すると発表した。
スカイライン史上最強の400Rを設定
405psを発生する400R。エクステリアは控えめなデザイン
8.5J×19インチのアルミホイールとレッドブレーキキャリパーが与えられる
今回、V37型スカイラインに設定された400Rは前述した405ps/48.4kgmのVR30DETT型3L、V6ツインターボが搭載される。
さすがにR35GT-Rに搭載されているVR38DETT型3.8L、V6ツインターボは570ps/64.5kgmと比ぶべくもないが、相当期待してもいいんじゃないだろうか。
しかも400Rの価格は552万3120円と、現行GT-Rの半額近いのも魅力(GT-Rは1063万1520~1253万9880円)。
400Rのエクステリアは2トーンバンパーやスポーツエキゾーストフィニッシャー、8.5J×18インチのダーククロームのアルミホイール、レッドキャリパー、400Rエンブレムが装備される。
ド派手なデザインを想像していた人はガックリくるかもしれないが、これこそ羊の皮を被った狼といってもいいかもしれない。
インテリアはフィニッシャーが本アルミ、アクセントとしてマットブラッククロームが採用され、本革スポーツシートにはダイヤキルティング、レッドステッチが入るなど、ラグジュアリーとスポーツを両立させている。
ダイヤキルティングが入る400Rの本革スポーツシート
400ps、400Rと聞いて思い出されるのは1996年に99台が生産されたR33型スカイラインベースのNISMOコンプリートカー、NISMO 400R。
RB26DETTをベースに、日産工機 (REINIK) 製ストロークアップクランク使用により、排気量を2800cc化。
N1仕様メタルタービン装着やインタークーラーの大型化、強化アクチュエーター、メタルヘッドガスケット、専用ECUへの変更等のパーツがおごられたRB-X GT2エンジンは最高出力400ps/6800rpm、最大トルク47.8kgm/4400rpm。
まだ280馬力自主規制の時代に、400馬力と1200万円という価格に驚いたものだ。それが今、日産のカタログモデルで400Rが登場したのだから隔世の感あり。
R33ベースのNISMOコンプリートカー、400R
■ハイブリッド/搭載グレード:GTタイプSP、GTタイプP、GT
VQ35HR型3498cc、V6+モーター
エンジン最高出力&最大トルク:306ps/6800rpm、35.7kgm/5000rpm
モーター最高出力&最大トルク:68ps/29.6kgm
トランスミッション:7速ハイブリッドトランスミッション
■ガソリンV6ターボ
●搭載グレード:GTタイプSP、GTタイプP、GT
VR30DDTT型2997cc、V6ターボ
最高出力:304ps/6400rpm
最大トルク:40.8kgm/1600~5200rpm
トランスミッション:7速AT
●搭載グレード:400R
VR30DDTT型2997cc、V6ターボ
最高出力:405ps/6400rpm
最大トルク:48.4kgm/1600~5200rpm
トランスミッション:7速AT
シャシー性能の向上
FR-Lプラットフォームにフロント/ダブルウィッシュボーン、リア/マルチリンクのサスペンションなど基本構造は変更されていないが、インテリジェント・ダイナミック・サスペンション(IDS)が日本仕様に初採用となり、ダイレクト・アダプティブ・ステアリング(DAS)の性能も向上させている。
IDSは走行シーンに合わせてサスペンションの減衰力を緻密に制御し、車体の挙動を安定させたほか、スポーツ走行での優れた操縦安定性や、車体の揺れを低減して快適な乗り心地も得ている。
DASはステアリングの切り始めのレスポンスを向上させ、ライントレース性を高め、さらに低速から中速での操舵の過敏さを軽減しながら、クルマの応答性を向上したほか、繊細な修正舵への過敏性を抑制することで、気持ちのいいステアリング操作が味わえるという。
この2つの制御を組み合わせたことにより、「驚きのハンドリングと感動の乗り心地を実現」(資料より)と謳っている。どれほど凄いのか、想像できないので実車を試乗してから再度報告したい。
エクステリア&インテリアの変更点
ビッグマイナーチェンジ後のハイブリッド・タイプSP
インフィニティバッジが装着されたマイナーチェンジ前のハイブリッドの350GTタイプSP
ハイブリッドモデルのリアスタイル。スカイライン伝統の丸型4灯テールランプに変更
エクステリアのデザインは、ノートやセレナでお馴じみのVモーショングリルをはじめ、細かいところでは、ターンフォグフィニッシャーやサイドレーザー内蔵バンパーが変更されている。
そして、インフィニティバッジから、NISSANバッジに戻されたことも大きなポイントだろう。
リアコンビランプも外回りの形状こそ大きな変更はないが、光る部分がスカイライン伝統の丸4灯(上の部分が少し欠けている円)に戻った。
400Rのリア回り。スカイライン伝統の丸型4灯リアコンビネーションランプ
インテリアはプレミアムスポーツセダンとしての機能性と質感をさらに向上させ、ハイブリッド車には日産国内初採用のカラーヘッドアップディスプレイや7インチの大画面アドバンスドドライブアシストディスプレイなど、プロパイロット専用装備も設定されている。
7インチのアドバンスドドライブアシストディスプレイなどプロパイロット2.0装着車のコクピット
ラインアップと価格
プロパイロットを標準装着するハイブリッド車は、先代モデルの同グレード比較で約50万円の価格アップ
ラインアップと価格は以下のとおり。今回のマイナーチェンジでグレード名称から排気量が削除された(350GTハイブリッド→GT)。
ハイブリッドの価格はプロパイロット2.0などの装着により、48万8160~51万9480円の価格アップ。
マイナーチェンジ前の2Lターボと比べると、お買い得に感じてしまうのがV6ツインターボ。
2L、直4ターボの200GT-tは416万4480~471万3120円だったが、3L、V6ツインターボ(304ps)の価格は427万4640~481万8960円と同じグレード比較で、2L、直4ターボから数十万円アップとなっているからだ。
■ラインアップと価格 月販目標台数/200台
●ハイブリッド
GTタイプSP/604万8000円(2WD)、632万7720円(4WD)
GTタイプP/571万1040円(2WD)、599万760円(4WD)
GT/547万4520円(2WD)、575万4240円(4WD)
●V6ツインターボ
GTタイプSP/481万8960円
GTタイプP/455万4360円
GT/427万4640円
400R/552万3120円
先進運転支援機能プロパイロット2.0と400馬力の3L、V6ツインターボを搭載したスカイライン。新しさと速さ、かつてのスカイラインが戻ってきた気がしたのだが、みなさんはどう感じただろうか? それにしても月販目標台数200台は寂しすぎる……。
最後にV37スカイラインの開発責任者、日産自動車のチーフ・ヴィークル・エンジニアの徳岡茂利さんに、スカイラインファン、クルマファンに向けて、ひと言頂戴した。
「スカイラインは日産の挑戦の歴史そのものです。技術の日産の象徴でもあります。今回世界初のプロパイロット2.0と、スカイライン史上最強のエンジンをセットでお届けできたことは大変嬉しく思っています。世界に誇れる史上最強、最先端のスポーツセダンに仕上がっておりますので、かつてのスカイラインオーナーの方やスカイラインファンだったの方にもぜひ戻ってきてほしいですね」
スカイラインの開発責任者を務める日産自動車・チーフ・ヴィークル・エンジニア 徳岡茂利さん
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