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【ヒットの法則460】アウディS5クーぺは威圧感なく、冷静に高性能ぶりを発揮する紳士だった

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【ヒットの法則460】アウディS5クーぺは威圧感なく、冷静に高性能ぶりを発揮する紳士だった

2008年2月、アウディS5クーぺがA5クーぺとともに日本で発表された。ただし、Motor Magazine誌はその上陸を待ってさっそく試乗。通常モデルとは一線を画したスポーツモデルでありながら、時に上品な佇まいを見せるSモデル。S8、S6セダンとともに、存在意義や狙いをあらためて探った試乗レポートを振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2008年8月号より)

Sモデルの存在位置はシリーズのトップ
先日試乗したA5 3.2クワトロは、極めて優れたGTカーだった。あくまでもフラットなライドフィール、心地よく控えめなメカニカルアピール、整然としたインテリア、そして何とも惚れ惚れするアピアランス(キレイなクルマに乗っているという気分の良さ=自負、も大切である)。GTを語る上で必要な要素をいずれもハイレベルで満たしていた。

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高速道路をのんびりと走りつつ、「何人たりともこのたおやかな世界を邪魔することなどできないよな」と感じる。独自の空気感をもって走っている。たとえ、ライバルがすぐ脇をこれみよがしに抜き去ったとしても、まるで動じることがない。

もちろん、そんな挑発についつい乗ってしまい、おのれのモードが切り替わったとしても、挑発者をとことん追いつめることだってできるだろう。高速域の安定性は今やピカイチ。マスクの押し出しも効く。何より、出足の鋭さはプレミアムブランド随一だ。

そんな極端な二面性がモダンアウディの本質であり、見過ごしてはならない魅力だというのが、私の持論である。

アウディのラインアップの中で、スポーツ&ラグジュアリーのトップラインと言えばSシリーズだ。これは90年代以降のお約束だった。久方ぶりの復活となった本格クーペA5にも、S5なるトップモデルが最初からラインアップされていた。今月は、A5から遅れること3カ月、ようやく待望のS5に触ることができることになった。

S5の成り立ちを簡単に言えば、基本的なメカニズム構成(シャシ、駆動方式、パワートレーン)はA5 3.2クワトロそのままに、エンジンを上級クラスA6のトップグレード用4.2L直噴V8ユニットとしたというもの。A5用3.2L V6FSIエンジンとストロークは同じだが、ボアは若干小さい。高性能エンジンに対応すべく、スポーツサスペンションや大型ブレーキシステムなど走りに関係するセクションの強化にも抜かりはない。

大人のクーペたるA5のアイコン的存在であるだけに、アピアランスの変化は必要最小限だ。ド派手なものではなく、上品にSシリーズらしさを醸し出している。それでもグリルや前後バンパー、ホイールデザイン、シルバー塗装のドアミラーなど、他のSシリーズとも共通するポイントで、特別なグレードであることを主張する。

インテリアもSシリーズ用のハイバックタイプスポーツシートと骨太なステアリングホイール&シフトノブが目立つ程度。もともとラグジュアリーなインテリアを持つA5シリーズだから、そこに高品質マテリアルを使ったスポーツパーツを奢ることで、プレミアム感は十二分にアップしている。

と、ここまで説明してきて、ふと、ある疑問が頭をよぎる。S5のライバルは、いったいなんだろう? BMW M3クーペメルセデス・ベンツCLK63AMGだろうか。しかし、彼らとは成り立ちが微妙に異なっている。S5のエンジンは、言ってしまえば上級モデル用の転用で、小さいクルマに大きな量産エンジンという昔ながらの高性能車コンセプトによるものだ(そういえば欧州Dセグメントに本格的にV8エンジンを持ち込んだのはアウディだった)。

対してライバルのMとAMGは、いずれも高性能車担当の別会社(BMW M社とメルセデスAMG社)が車両開発を担うのみならず、エンジン開発とアッセンブリーを担当し、コンポーネンツを本社工場へと供給している。

アウディにもクワトロ社という高性能車担当の別組織があるが、公式にはSシリーズに関与していない。クワトロ社の営業品目でライバル2社と共通するものといえば、Sラインと呼ばれる外装スペシャルグレード、特注仕様のエクスクルーシブモデル、ライフスタイル(マウンテンバイクなど)商品への関与だ。他の2社にもそれぞれに相当する項目があるだろう。

もうひとつ、クワトロ社に関しては、他との大きな違いがある。それはRSシリーズの存在だ。Sシリーズの上をいくラインアップモデルとしての超高性能RSシリーズは、SシリーズをMやAMGに対応させてしまうと、ライバル2社には事実上存在しないものになってしまう。

なぜならRSシリーズ(とR8)の開発生産は一貫してクワトロ社で行われているからで、そんなラインアップモデルはライバルに存在しない。

あえて言えば、先代M3 CSLや、メルセデスAMGのブラックシリーズなどをRSシリーズの対抗と考えることもできるが、ラインアップ車と限定モデルの違いは残る。

というわけで、ライバルたちに比べると、クワトロ社とSシリーズの位置付けは極めて微妙であることがわかっていただけたであろう。果たして、アウディにおけるSシリーズとは、一体どんな存在なのだろうか。

そのポジショニングを明確にするためにも、最新SシリーズのS5を、入念に味わってみる必要がありそうだ。

Sモデルはいわば極上のスポーツモデル
改めて、目の前にあるS5をじっくり眺めてみる。明らかにA5とは違うオーラを放っているものの、BMW M3やメルセデス・ベンツC63AMGほどの威圧的な迫力には欠ける。アウディ通なら一目瞭然だろうが、フツウのクルマ好きにはA5のSライン仕様と同じクルマにしか見えない。

独特なデザインのスポーツシートに腰掛け、専用デザインのステアリングホイールを握りしめてもまだ、MやAMGのように、緊張感を楽しむ気分にならない。あくまでも冷静だ。

エンジンスタートボタンを押す。やや太めのアイドリング音がするだけで、周囲を憚るような演出はない。走り出しても、気分をことさら盛り上げるような演出過剰なエグゾーストノートはない。落ち着いている。

まるでノーマルラインアップと同じような雰囲気で、乗り心地で、扱いやすさで、淡々と走り始める。ドーピング的な高揚感を期待してはいけない。

高速道路に入る。S5には標準装備となるアウディドライブセレクトを、私は躊躇うことなく、インディビジュアルセッティングにした。

ダンピングだけをダイナミックにセットして、エンジンとギアシフトをコンフォートに合わせる。こうすれば、とても平穏な高速クルージングができることを、A5のドライブセレクトですでに学んでいたからだ。

実際、そのグランドツーリング感覚をひとことで言えば「極上のA5」である。もちろん、V8パワーの余裕と迫力を楽しもうと思えば楽しめるのだが、それを知ってもなお、高速道路という湯船にゆったりと浸かって高速クルージングを満喫したいという気持ちが勝つ。恐らく、4ドアサルーンのSシリーズならば、もう少し違う、どちらかといえば攻撃的な気分になるはず。このS5が、ベースとなった美しいシルエットをそのままに高性能化したモデルであるからこそ、私はA5の時と同じようにゆったりとした時間を過ごしたいと思ったのかも知れない。

誤解のないように付け加えると、例えば高速ワインディングなどで走らせれば、新しい重量配分の妙か、素晴らしいバランス感覚でスポーツドライビングを楽しむことだってできる。これまでのアウディSシリーズにはなかった、ドライバーの腰まわりを中心としたハンドリングを楽しむことができる。ただただ爽快で、気分のいいひととき。求めれば、それにだって応えてくれる懐の深さを、S5は持ち合わせていた。

高速道路における冷静なクルージングと、ワインディング路における底抜けの爽快さ。それらは、いずれも既存のS6やS8にはないものだ。

V10FSIを積むS6&S8には、高速道路をぶっ飛ばしたいと思わせるポテンシャルと、他のアウディを見つけたら思わず自慢したくなる、言ってみれば旧来のプレミアムステータスカーらしさが色濃く残っている。

だから、高速ではゆったりとクルージングするよりも、ありあまるパワーとクワトロシステムを生かして、何が何でも先頭を走りたくなるものだし、それはそれで日本人には未知なるアウディの魅力を示している。

翻って、S5、S6、S8(もうすぐS3も加わる)というラインアップ全体を見れば、やはりポテンシャル的にはやや控えめだ。Sシリーズを愛車とするライフスタイルが、ライバルのそれとはまるで違うということを端的に乗り味で示しつつ、それでもなおパフォーマンスで負けたくないという人のために用意されるのが、クワトロ社製RSシリーズということではないだろうか。そういう戦略なのだろう。

ちょっと複雑ではあるが、ユーザーにしてみれば、何とも贅沢なラインアップ展開だと私は思う。

突出したエンジン性能やフィールでその魅力を語るという、古典的な手法ではなく、直噴エンジン+クワトロシステムというユニークなパッケージで高性能の新しい世界観を創造した。アウディSシリーズの魅力は、凝縮されたブランドアイデンティティそのものであると言えそうだ。(文:西川淳/Motor Magazine 2008年8月号より)



アウディ S5 主要諸元
●全長×全幅×全高:4635×1855×1375mm
●ホイールベース:2750mm
●車両重量:1750kg
●エンジン:V8DOHC
●排気量:4163cc
●最高出力:354ps/7000rpm
●最大トルク:440Nm/3500rpm
●駆動方式:4WD
●トランスミッション:6速AT
●車両価格:861万円

アウディ S8 主要諸元
●全長×全幅×全高:5055×1895×1430mm
●ホイールベース:2945mm
●車両重量:2060kg
●エンジン:V10DOHC
●排気量:5204cc
●最高出力:450ps/7000rpm
●最大トルク:540Nm/3000-4000rpm
●駆動方式:4WD
●トランスミッション:6速AT
●車両価格:1495万円

アウディ S6セダン 主要諸元
●全長×全幅×全高:4915×1865×1435mm
●ホイールベース:2845mm
●車両重量:2020kg
●エンジン:V10DOHC
●排気量:5204cc
●最高出力:435ps/6800rpm
●最大トルク:540Nm/3000-4000rpm
●駆動方式:4WD
●トランスミッション:6速AT
●車両価格:1258万円

[ アルバム : アウディ S5、S8、S6セダン はオリジナルサイトでご覧ください ]

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みんなのコメント

1件
  • この時代のアウディ好きでした。内外装のデザインがバランス良くオシャレでした。
    パワーはそれ程でもなかったですが、S5 良い車でした。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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