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EV急速充電器の規制緩和でスピードチャージ可能に!? EV普及のカギとなる高出力化の現状とは

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EV急速充電器の規制緩和でスピードチャージ可能に!? EV普及のカギとなる高出力化の現状とは

■規制緩和で出力200kW超えもOKに!

 2023年の年明け早々、大手新聞や通信社、テレビ局が「政府がEV用の急速充電器の規制緩和へ」というニュースを取り上げました。

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 各種報道によれば、急速充電器の出力が200kWを超える場合、現行では変電設備扱いとなってさまざまな規制があるなか、政府がこうした規制を緩和することでEV(電気自動車)の普及を加速させる狙いがあるというのです。

 そうなると、これからEVの充電時間は短縮され、EVが一気に普及することになるのでしょうか。

 まずは今回の報道の根拠ですが、総務省消防庁の「急速充電器設備の規制のあり方に関する検討会」での協議です。

 2022年6月7日に政府が閣議決定した規制改革実施計画のなかに「急速充電設備に係る、消防法上の対象火気設備規制における取扱いの見直し」があり、これを受けて総務省消防庁に検討会が立ち上がりました。

 そのタスクは、全出力が200kWを超える大出力型の急速充電器は変電設備とされているため、設備内に担当者以外は立ち入りできないなどの規制がある一方で、電池容量が大きな乗用EVやEVバスなどの普及に向けて、出力の上限を撤廃するための検討をおこなって、必要な措置を講ずるというものです。

 こうした議論を経て、2023年から規制緩和の可能性が高まったことが一連の報道につながったようです。

 消防庁の検討会の資料によれば、2019年度にそれまで21kWから50kWとしていた急速充電器の省令を21kWから200kWに改めたのですが、その際にも200kW以上についても検討していたものの、当時は需要を踏まえて200kWまでに限定したといいます。

 要するに、急速充電器の高出力化の需要が近年、一気に高まったという解釈ができるでしょう。

 また、今回の規制緩和は、消防庁を主体に検討が進められていることからも分かるように、充電中の火災に対する防火安全対策が議論の中核にあります。

 消防庁によると、2021年5月時点で全国7700基存在したCHAdeMO(チャデモ)方式の急速充電器、また2021年5月時点で92基(充電ポスト217基)のテスラ方式のスーパーチャージャーで、それぞれ火災は把握していないといいます。

 そのほか、さまざまな防災安全の観点を踏まえて、全出力200kWを超えるものを変電設備ではなく、急速充電器として規制することに差し支えないのではないかという文脈になっており、これをベースに検討会では議論が進んでいきました。

 また、現行のコネクターを用いるタイプではなく、非接触充電やパンタグラフによる充電などを指す、非コネクター型については今後の普及動向を踏まえて検討するようです。

 これまで急速充電器の流れを振り返ると、日本が中心となって研究開発したCHAdeMOは、大手自動車メーカーとして初めて大量生産したEVである日産「リーフ」と三菱「i-MiEV」の発売を踏まえて2009年から実用化されました。

 ところが、こうした日本主導の動きに欧米メーカーが反発し、2013年からCCS(コンボコネクター方式)が登場します。

 同じ頃、中国では全土でEV普及政策を進めるなかで独自規格のGB/T、またテスラは「モデルS」の量産化に合わせる形でこちらも独自規格であるスーパーチャージャーを開発しました。

 さらに、2020年には中国がCHAdeMOと協議したうえで、世界各地の急速充電方式と互換性を持つChaoji(チャオジ)規格を提唱しているという状況です。

 これらの急速充電器は、通信方式や最大出力(最大電圧および最大電流)などの規格が違い、現時点では世界標準化に向けて今後どのような流れになるのかを予想することは難しいです。

 ただし、いずれの充電規格においても、高出力化に向かっていることは確かで、例えば、日本でのCHAdeMOは現時点では50kWが主流ですが、2021年末から90kWの導入が段階的に始まっています。

 また、欧州メーカーでは、アウディジャパンがポルシェジャパンと連携して全国各地の正規販売店で150kWを独自に広める活動を強化しているところです。

 このような急速充電器の高出力化は、EVが搭載する電池量が大型化していることを反映しているのはいうまでもありません。

 例えば、電池容量100kWhを出力100kWで充電すれば、充電時間は1時間。これが、出力50kWになると2時間かかることになります。実際には、充電器の出力などに対する制御がかかるため、電池の特性や電池に対する安全性の配慮からこれよりも時間がかかります。

 また、急速充電器は使用時間が基本的に1回30分というルールも念頭に置く必要があります。

 それでも、欧米メーカーのEVの上級モデルでは90kWhや100kWhが当たり前になってきましたし、国産EVでもトヨタ「bZ4X」やスバル「ソルテラ」では70kWhを超えています。これは、満充電での航続距離を長くしたいからです。

 航続距離や充電時間・場所、そして電池の負担が大きい車両コストといったEVにおける基本的な課題は、現時点でのEV関連技術や社会情勢のなかで急速充電の高出力化だけでは解決しないでしょう。

 重要なことは、個人や事業者がEVを実際にどのような目的で使うのか、その際に必要なエネルギーを社会全体でどのようにバランスさせていくのかという視点を、政府やメーカーだけではなく、ユーザーの一人ひとりが持つことではないでしょうか。

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みんなのコメント

50件
  • 普通は家や宿泊先で充電するから。
    そこら辺の充電スポットなんか今まで1回も使ったことないわ。
    乗ったことがない人にはわからんだろう。
  • さあ、また内燃機関派が火病るぞ。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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