最大の魅力はV10エンジン
これはおそらく、エンジンを目当てに買うクルマだ。それ以外に目的があるだろうか。購入を決める理由は、それで十分事足りる。
F1にインスパイアされた、5.0L自然吸気のV10は、507psものパワーを、7750rpmもの高回転がもたらす陶酔感とともに味わえる。このエンジンを思い切り回した時のサウンドは、1830kgものEセグメントサルーンではなく、1990年代のホンダがタイプRに搭載したユニットを思わせる。ボディカラーを黒にしたら、スーパーカー真っ青のモンスターにはとても見えない、まるで重役の社用車のような出立ちなのに。
このE60型M5の魅力は、0-100km/h=4.1秒という数値だけで表せるものではない。もちろん、新車当時にはとんでもない数字だったのだが、大事なのはどのようにその加速を達成するかにある。
うっとりと酔いしれるようなサウンドは、右足に力を込めさせることだろう。幸いにも、トリップコンピューターの燃費が2.5km/Lを下回ることはないので、絶望的な思いはしないで済みそうだ。ただし、3km/L台やそれ以下を出すのは、このクルマなら難しいことではないのだが。
マイナーチェンジで変速機を改良
英国導入は今から17年前の2005年で、新車価格は6万1750ポンド。当時のレート換算すればで約1235万円だが、2014年11月に日本での発売された際の価格は1290万円だった。
英国仕様はほぼフルオプション状態で、当時のフォルクスワーゲン・ゴルフが新車で買えるくらいの値付けがされた19インチホイールをはじめ、ヘッドアップディスプレイとナビ、11ものシフトモードを備えたシーケンシャルマニュアルギアボックス(SMG)、さらにはローンチコントロールまでが装備されていた。
2007年には、BMWがLCI(ライフサイクル・インパルス)と呼ぶマイナーチェンジを実施。もっともわかりやすい識別点は、LED化されたランニングライトとテールライトだ。ただし、中古車には後期型パーツを組み込んだ前期型も少なくない。
もっと重要なのは、ギアボックス関連のハードウェアとポンプ類がアップグレードされたこと。ただし、マイナーチェンジ前のモデルが2007年後半の登録となっている場合もあるので、購入時にはご注意あれ。
このLCIと同時に、M5にはE61型ことツーリングが追加された。つまり、ワゴンであればすべて、改良後のメカニズムを積んでいるということになる。
ADASは皆無だがデザインと性能は色褪せず
快適なクルーザーとしてこの世代のM5を手に入れたいと思っていて、燃費や320kmほどしかない航続距離、信頼性の問題を気にしないというのなら、忠告すべきはスタンダードな5シリーズが備えている運転支援システムが用意されていない、という点だろう。
アダプティブクルーズコントロールはおろか、車線逸脱ウォーニングも、自動緊急ブレーキも、M5には装備されていない。おそらく、この巨大で特殊なエンジンが要求する吸気と冷却を適えるべくエアインテークを最大化するには、前方センサーが邪魔だったのだろう。とりわけ、330km/hの最高速度を実現することを優先して考えるなら、開口部の一部をふさぐ機器など装着したくはなかったはずだ。
また、アップデート後であっても、SMGのスムースさと信頼性は文句なし、とは言い難い。クラッチの寿命を伸ばし、変速タイムやギクシャクした動きを改善するには、変速時にスロットルペダルを少し戻すのがコツだ。
いっぽうで、そこはやはりBMW、このM5はドライビングが最高に楽しいクルマだ。しかも、技術の粋を集めたエンジンや、フルステンレスのエグゾーストも堪能できる。もちろん、507psのフルパワーを叩き出すP500Sモードも味わおう。スタンダードな状態では400psにとどまるのだから。
そうそう、せっかくだからスタイリングも愛でたいところだ。クリス・バングル率いるティームで、ダビデ・アルカンジェリが描き出したデザインは、今見ても十分にモダンで、パフォーマンスと同じく現在でも通用するものだ。
新車時代のAUTOCARの評価は
このクルマのエンジンは、そのスペックを語るだけで2号にわたって記事が書けるだろうと思わされた。
これぞ、エンジニアの夢であり、これまでに生産された中でも最高の部類に入るロードカーのエンジンだ。(2004年9月14日)
専門家の意見を聞いてみる
ジョン・シモンズ
「このM5が心から好きですが、とりわけ、5000rpmからが本当にイキイキしはじめる、高回転型のみごとなエンジンがポイントですね。エグゾーストを改良すれば、もっといい音が出るとは思います。あと、ローンチコントロールはあまり役に立ちませんが、それ以外はすばらしくファンなクルマなので、多少の欠点など許せてしまいますよ。ただ、整備記録は念入りにチェックしてください。修理するとなると、どれも高くつきますから。とくに、クランクシャフトのビッグエンドベアリングは要注意です。そうそう、燃費はよくて6km/Lといったところです」。
購入時に気をつけたいポイント
エンジン
このM5の信頼性に関する悪評の元凶になりがちなコンロッドベアリングは、オイル交換でケチるとトラブルが起きやすい。VANOSの警告灯には注意しよう。原因はおそらくユニットそのものではなく、オイルパンからヘッドへ引かれたホースか、1600ポンド(約26万円)のポンプに起因する油圧に関するものだ。
オーナーに、これまで使ってきたオイルの銘柄を尋ねると、口を揃えてカストロール・エッジの10W60と答えるはずだ。消費量は、1600kmあたり1Lくらい。スロットルのアクチュエーターなど、修理費がかさむところはしっかりチェックして、問題があれば購入前に交渉しよう。
トランスミッション
後期型であっても、クラッチは8万km程度で交換が必要となり、費用は3000ポンド(約50万円)ほど。市街地ではギクシャクするが、速度が上がればスムースになる。試乗の際にP500Sモードを試すのを渋られたら、クラッチに問題ありと疑おう。MTに換装された個体であれば、ギアボックスの出自と、どこで作業したのかは確認したい。
リアディファレンシャル
低速での取り回し時にノイズが大きいのは止むを得ないが、過剰な音やガタつき、摩擦が感じられたら、すぐに交換が必要になるシグナルだと思ったほうがいい。オイル漏れだけなら、30ポンド(約5000円)程度のシールの交換のみで済むはずだ。
ブレーキ
ディスクは1セット1800ポンド(約30万円)で、5万km前後で交換が必要。外周の縁をチェックしよう。また、長くハードにブレーキングした際にホイールの振れが出たら、摩耗による交換の目安だ。
ステアリングとサスペンション
おおむねタフだが、ステアリングコラムのバイブレーションやゴツゴツする感触があったら、コントロールアームの摩耗が疑われる。オプションのEDCサスペンションは信頼性が高いものの、ダンパー交換となると1本あたり600ポンド(約10万円)の部品代がかかる。
iドライブ
BMWのロゴが出た起動ページのままフリーズしたら、ハードディスクの問題が疑われる。システム交換なら700ポンド(約12万円)。ECUとコンピューターを最新のソフトウェアにアップデートすると解決する場合もある。
知っておくべきこと
2009年、BMWはM5の25周年にあたってM5 CSLの設定を示唆したが、結局、市販化は叶わなかった。計画では、排気量を5.5Lに拡大して588ps/55.3kg−mを発生し、トランスミッションはSMGからE92型M3のDCTに換装されるはずだった。
さらに、リアシートや遮音材の多くを取り去り、ルーフはカーボンパネルに。100kgの軽量化を予定していたので、実現すれば現行M4と同等の重量になり、0−100km/h加速は3秒台に入っていただろう。ぜひとも乗ってみたかったが、決してそれが叶えられることのないBMWのひとつだ。
英国ではいくら払うべき?
1万5000ポンド(約248万円)~1万6999ポンド(約280万円)
フェイスリフト前の、走行距離が16万km以上の過走行車ばかり。おそらく、すぐにメンテナンスが必要になる。
1万7000ポンド(約281万円)~1万9999ポンド(約330万円)
もっともタマ数が揃っている価格帯。年式の幅は広いが、走行距離は11万kmを超えるものばかり。整備記録がしっかりしていて、主なところには手が入っているクルマが多い。
2万ポンド(約330万円)~2万9999ポンド(約495万円)
より新しめのクルマが増え、ツーリングもぼちぼち見つかりはじめる。走行距離は8万km前後で、BMWやMの専門店における整備履歴がフルに残り、オーナーの数も少なめとなる。
3万ポンド(約495万円)以上
新車に近く、走行距離の短いセダンが多くなり、ワンオーナー車もちらほら。ツーリングの選択肢も増える。
英国で掘り出し物を発見
BMW M5ツーリング(E61型) 登録:2007年 走行距離:9万5000km 価格:4万4495ポンド(約734万円)
内外装ともブラックのツーリングで、低走行の3オーナー車。ロッドベアリングやオイルクーラー、エンジンマウント、VANOSの高圧ラインは、オイルと合わせて9万kmで交換済みだという。さらに注目すべきは、欧州ではこれ1台のみだという、MTに換装されたツーリングであるということだ。
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みんなのコメント
壊れている車と
言われていたやつね。
普通にリコールだろ