まずはWECについておさらい
9月13~15日に富士スピードウェイで、2024年FIA世界耐久レース第7戦となる『富士6時間耐久レース』が開催された。
【画像】編集長がピットとパドックで撮影したWEC富士の様子 全200枚
ワールド・エンデュランス・チャンピオンシップ、略してWECと呼ばれるこの世界戦は、やはり6月のル・マン24時間耐久レースが象徴的。2024年はカタール、イタリア、ベルギー、フランス(ル・マン)、ブラジル、アメリカ、日本(富士)、バーレーンにて全8戦を展開。アジア唯一となる富士は毎年この時期に組まれていて、天候に悩まされる年もあったが、今年は土日とも晴天に恵まれた。
クラスはプロトタイプの『ル・マン・ハイパーカー』(LMH)と、2024年から新設された『LMGT3』の2クラス。ハイパーカーも2023年から本格スタートしたカテゴリーで、それまでのレギュレーションではトップクラスがトヨタのみという時期もあったが、現在は群雄割拠、豪華絢爛の顔ぶれだ。
LMHはトヨタを筆頭に、昨年、今年とル・マンを制したフェラーリ、そしてポルシェ、アルピーヌ、ランボルギーニ、BMW、キャデラック、プジョーなど。LMGT3は同じくフェラーリ、ポルシェ、ランボルギーニ、BMWに加え、コルベット、レクサス、マクラーレン、アストンマーティン、フォードのGT3マシンが参戦している。チームはLMHがワークス中心で、LMGT3は世界各地の強豪チームたちだ。
両クラスとも予選は、1回目のセッションでベスト10を選び、その10台がハイパーポールと呼ばれる2回目のセッションに進出。そこのタイムでグリッドが決定する。ドライバーは2~3名で、LMGT3には、ジェンソン・バトン、ロバード・クビサなど有名ドライバーも多く、元2輪世界王者のバレンティーノ・ロッシが、BMWのファクトリードライバーとして2024年フル参戦していることもトピックだ。
熱量につられてWECを満喫
個人的に耐久レースが好きで、このWEC富士にはほぼ毎年来ている。複数のドライバーが多くのチームスタッフたちと一丸になり、長い時間を”耐久”するこのレーススタイルは、0.1秒の判断が勝敗を分け、6時間をかけても最後の一瞬まで気を抜けない緊張感が見どころだ。特に昨年からはLMHの誕生で競合チームも増え、今回観戦していてもサイドバイサイドの争いがこれまで以上に頻発し、レースとしての魅力も高まった。
それに呼応するかのように、観客も増えている印象だ。土曜日にはサーキットサファリと呼ばれる、バスでコースを走行し、その横をフリー走行のマシンたちが走っていくイベントに参加。日曜日にはグランドスタンド裏のイベントスペースを訪れ、さらにピットウォークにも足を運んでみた。そこで見えたのは、来場者のWECに対する熱量の高さだ。
サーキットサファリでは間近で走るマシンに興奮し、イベントスペースでは夢中で展示車を撮り、ピットウォークではドライバーのサインをもらうため駆け回り……。その熱気につられるかのように、かく言う筆者も一緒に満喫してしまったというのが本音だ。
しかもありがたいことにアルピーヌからお話を頂き、36号車でLMHに参戦するニコラ・ラピエール選手がドライブするアルピーヌA110GTの助手席で、富士を全開走行するホットラップを体験。アルピーヌのムックを過去3冊作った経験のある筆者は、これまでかなりの距離に渡ってA110を試乗してきたが、あんなに”踊る”A110を体験したのは初めてだった……!
レースの結末は必要ない
サーキットサファリで間近を走るマシンたちの美しさ、勇ましさにすっかり魅了されたこともあり、今回はいつも以上に予選からすっかり夢中になった。ハイパーポールの緊張感も堪らない! そしてLMHのハイパーポールを制したのは、マニュファクチャラーポイントでは現在6位となる伏兵、2号車のキャデラック。2位に8号車のトヨタ、3位に15号車のBMWがつける。しかし10台のタイム差は全て1秒以内という大接戦だ。
今回、当然ながら終始感じたのはトヨタの”ホーム感”だった。応援する観客の数も圧倒的に多いし、実はメディアセンターが大きく反応するのは、大抵トヨタの2台に何かがあったときだ。まさにこの原稿を書いている途中で7号車が5号車のポルシェとクラッシュし、メディアセンターが「嗚呼……」というため息に包まれたのである。
さて終盤、残り1時間を切ったところでLMHトップ3は6号車ポルシェ、15号車BMW、35号車アルピーヌの順番。地元トヨタ勢は厳しそうだ。ここまで目まぐるしく順位が入れ替わり、ちょっと目を離したらトップが変わっていることも多々あった。こんなレース、WEC富士では見たことがない。LMGT3は59号車マクラーレン、92号車ポルシェ、54号車フェラーリがトップ3だが、こちらも予断を許さない状況だ。
レース中にメディアセンターで書き始めたこの原稿だが、実のところ、レースの結末を記す必要はないのではないか……と思い始めている。”全員が大勝利”とは随分綺麗ごとすぎるが、WEC富士という”お祭り”で参戦者、観客、関係者が一緒に”神輿”を担ぎ盛り上げただけで、充分ではないか。
パドック裏で一生懸命タイヤを運んでいるメカニック、コースサイドにテントを張りレースの行方を見守った多くのファン、メディアセンターの入口で1日パスをチェックしていたスタッフなどなど、全員でこのお祭りを作り上げたのだ(なおレース後の速報値で、観客は昨年比120.3%となる6万5800人と発表があった)。
……それではゴールを生で見るべく、メディアセンターを後にすることにしよう。
RESULT/ALL OVER THE TOP5
RANK/TEAM/DRIVER/No./MACHINE/GAP
1/PORSCHE PENSKE MOTORSPORT/Estre K. Lotterer A. Vanthoor L./#6/Porsche 963/―
2/BMW M TEAM WRT/Vanthoor D. Marciello R. Wittmann M./#15/BMW M HYBRID V8/16.601
3/ALPINE ENDURANCE TEAM/Lapierre N. Schumacher M. Vaxiviere M./#36/Alpine A424/42.321
4/PEUGEOT TOTALENERGIES/Jensen M. MULLER N. Vergne J./#93/PEUGEOT 9X8/45.846
5/HERTZ TEAM JOTA/Stevens W. ILOTT C. Nato N./#12/Porsche 963/49.689
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