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【シティコミューター原点回帰】日産の軽EV「IMk」、スマートから学ぶこと 「売り方」が鍵

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【シティコミューター原点回帰】日産の軽EV「IMk」、スマートから学ぶこと 「売り方」が鍵

日産の軽EV「IMk」量産なるか?

text:Kenji Momota(桃田健史)

【画像】日産IMkコンセプト、スマートのEVに学べる? ホンダからもEVが【内外装を比べる】 全62枚

日産が手掛ければ、軽EVはもっと売れるようになるのか?

第46回東京モーターショー(一般公開2019年10月24日~11月4日)で、日産は2台のEVコンセプトを発表した。

SUVの「アリア」と、軽の「IMk(アイエムケー)」だ。

日産幹部はIMkについて、こう表現する。

「新開発パワートレインと、(車体の)床下にバッテリーを搭載した低重心のパッケージ」

「これまでの軽自動車の概念を一新した、EVならではの力強い走りを提供します」

日産の軽といえば、2019年発売の新型「デイズ」と、2020年2月発表の新型「ルークス」がある。

両モデルは、三菱自動車工業(以下、三菱)との合弁企業NMKV(エヌエムケーブイ)で企画され、生産は三菱の水島製作所(岡山県倉敷市水島海岸)で行われている。

デイズ発表後、日産本社で担当チーフエンジニアに単独インタビューしたが、「三菱が持つ、軽のモノづくりで多くのことを学んだ」と本音を漏らした。

そうなると、IMkの量産モデルではどうなるのか?

日産と三菱はほぼ同時期に、「リーフ」と「i-MiEV」の量産を始めた。もちろん、当時の両社は技術連携はしておらず、それぞれがEV技術に挑戦していた。

IMk量産モデルでは当然、デイズやルークス同様にNMKVが中心となることは間違いない。

果たして、日産はIMk量産モデルをいくらで売るのか?

200万円じゃ高い? 軽なのに……

軽のEV、いくらが妥当か?

軽の売れ筋価格帯は、130~160万円程度。外装や内装がスポーティになると+20~30万円。雪国などでの、いわゆる生活四駆になるとさらに+15万円といったところだ。

フル装備で200万円を少し超える。

では、現行の軽EVはいくらか?

乗用向けの三菱「i-MiEV」が300万3000円。ガソリン車「i」をEVにコンバージョン(変装)したためコスト高になっている。

また、当初の計画販売台数が少なかったため電動品の購入コストも割高となった。

一方、商用車「ミニキャプ・MiEV」が、i-MiEVと同じバッテリー容量16kwhで216万8100円(2シーター)。また、i-MiEVでは設定がなくなった10.5kwhで180万1800円と200万円を切る。

商用なので当然、インテリアはシンプルで、NVH(音、振動、路面からの突き上げによる乗り心地)のレベルは乗用に比べて落ちる。

それでも、価格重視の商品企画によって多方面から継続的な需要がある。

直近では、日本郵便が東京など都心部での郵便物の集配や配達用として1200台のミニキャブMiEVを2020年度までに導入することを決めている。

こうした軽EVの現状を踏まえると、IMk量産モデルはi-MiEVより電池容量が大きくて、エントリーモデルが200万円前半。商用バージョンもあって、200万円切りとなれば、普及の道筋が見えてくるのではないだろうか。

だが、それだけでは売れない……。

軽EVの普及 最も重要なことは

軽EV普及を考える上で、最も重要なことは「どうやって使ってもらうか」である。

いつ、誰が、どこで、なぜ、どのように使うか、である。

これについて、日産の考え方は、IMkに関するニュースリリースに書かれている。

「革新的な小型シティコミューター」である。

「シティコミューター」という言葉、70年代あたりから世界各国で新しい移動を議論する際に使われるようになった。

文字通り、「都市内を移動する乗り物」という意味だ。長年に渡り、自動車メーカー各社がEVに対してよく使う表現だ。

換言すると、EVはガソリン車やディーゼル車に比べて航続距離が少ない、という技術的な制約のなかで、都市部での短距離移動しかできない、という考え方だった。

それを、日産が「シティコミューターという常識を崩す、ファミリーカー」(日産欧州幹部)としてリーフを市場導入。

追って、テスラモデルS/Xがリーフを超える大容量バッテリー搭載となったことで、「EV=シティコミューター」のイメージが大きく変わった。

こうした流れの中に日産アリアもいるが、それとは正反対に、IMkはEVの原点回帰ともいえるシティコミューターだという。

とはいえ、日本での軽は、すでにシティコミューターであり、わざわざEVにすることで、事業としての勝算はどこにあるのか?

単純な売り切り型ビジネスなら難しい

IMkによる、EVのシティコミューターへの原点回帰。

こうした考えで先行しているのが、ダイムラーのスマートだ。

スマートの基本構想は1970年代に生まれ、90年代に時計メーカー・スウォッチとの連携によって量産されたが、多モデル化の中で、事業規模の拡大で限界を向かえた。

その際、ダイムラーがとった戦略が、CAR2GO。都市内でワンウェイでの乗り捨て自由型カーシェアとして普及した。これを基盤に、スマートは全車EVとなった。

さらに、BMWのDrive Oneと融合して事業拡大を目指すも、北米事業からの早期撤退を余儀なくされるなど、新しいサービス事業の確立で再び、苦労している状況だ。

こうしたダイムラーの事業について、日産は当然、詳しく検証しているに違いない。

仮に、IMkが200万円を切る精力的な価格付けになっても、プロパイロット2.0が標準装備になったとしても、5Gを活用したコネクティビティ技術が満載されたとしても、単純な売り切り型ビジネスとするだけでは、IMk量産モデルの販売は大きく伸びないと思う。

IMkを小型シティコミューターと呼び、枕言葉には「新時代」「革新的」と並べるからには、日本を含めた世界各国で一気に普及するような「隠し玉サービス事業」があるのだろうか?

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