現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 私がBMW ALPINA「B3」に満点を投じた理由

ここから本文です

私がBMW ALPINA「B3」に満点を投じた理由

掲載 更新 32
私がBMW ALPINA「B3」に満点を投じた理由

■連載/金子浩久のEクルマ、Aクルマ

 2020-2021年日本カー・オブ・ザ・イヤーの特別賞「パフォーマンスカー・オブ・ザ・イヤー」を獲得したのが、BMW ALPINA「B3」。筆者も満点を投じた。BMWをベースにして独自のチューニングによって、高性能車を仕立て上げていくというALPINAの手法とコンセプトは、これまでと変わらない。

ネイキッド、アドベンチャー、スポーツタイプ、とことん走りを楽しめるホンダの最新ビッグバイク4選

機械として優れているか? ★★★★★ 5.0(★5つが満点)

 新型「B3」用のエンジンも、BMW「M3セダン/M4クーペ」に搭載されている「S58」型ユニットをベースとしている。3.0L 直列6気筒ツインターボで、最高出力462PS/5500~7000rpmと、最大トルク700Nm/2500-4500を発生する。「M3セダン/M4クーペ」は、最高出力が480PS/6250rpm、最大トルクが550Nm/2650-6130rpm。

 新型「B3」は、最高出力では「M3セダン/M4クーペ」に及ばないものの、最大トルクでは大きく上回っている。回転数を高めて得られる最高出力ではなく、最大トルクを追求する方向性がALPINA流だ。それも2500rpmから発生するというから、一般道をゆっくりと流すような場合でも、アクセルペダルをほとんど踏むことなく余裕たっぷりに加速していく。

 高速道路に上がって、前方の交通が空いていることを見計らって右足を少し深く踏み込んでいくと、「B3」は力強く加速していく。回転の上昇とともにパワーが高まっていき、そこにターボパワーが上乗せられていく。ドカンと一気に増強されるのではなく、滑らかに少しずつ強まっていく。時間にすればわずかなものなのに、永遠に続いていくかのように息が長い。「B3」の加速はジェントルそのものだ。0-100km/hの加速が3.8秒、0-200km/hの加速が13.4秒、最高速度303km/hという超俊足なのにガサツな振る舞いを一切感じさせない。

 エンジンパワーが極めて滑らかにトランスミッションやデフなどのコンポーネンツを伝わって、4本のタイヤに伝えられていく様子が可視化されてイメージできそうなほどだ。超絶スムーズで強力な加速にZF社製の8段ATの貢献も大きい。状況に応じて、キメ細かに変速していく。

 走行モードは「コンフォート・プラス」「コンフォート」「スポーツ」から選べる。他の高性能車ならば、ここにほぼ必ず「スポーツ・プラス」も加えて、これ見よがしな強烈な加速を見せ付けられるところだが、アルピナはそうした不躾な振る舞いはしないのである。新設計のスプリングにプログラミングが最適化された電子制御ダンパーが組み合わされており、アンチロールバーにも独自のチューニングが施されている。

 BMWのxDriveをベースとした4輪駆動システムはトルクを前後のアクスルに連続的に可変配分している。タイヤは、「クラシック」ホイールを履いたピレリの「Pゼロ」20インチだったが、「ダイナミック」ホイールを履いた19インチ仕様も用意されている。20インチもの大径ホイールを履いた太いタイヤでは、タイヤの上下動がボディーの揺れを拡大させてしまうのではないかと心配してしまうが、新型「B3」にとっては杞憂で終わった。不快な振動もなく、タイヤとサスペンションが路面からの入力を受け止めても、乗員が感じる前にすべて吸収してしまっている。

 豊饒でありながら繊細なパワーを洗練された所作でいつでも発揮できる安心感がある。超高性能を有しながら快適な乗り心地という矛盾のように聞こえる乗り心地もこれまで通りのALPINA流の大きな魅力だ。最新のBMWをベースにしているだけあって、ACCやLKASなどの運転支援機能もそのまま「B3」に引き継がれている。運転中の安全に寄与し、特に長距離走行でのドライバーの負担を軽減する運転支援機能は最新のものを選びたい。その点でも、B3は抜かりない。

商品として魅力的か? ★★★★★ 5.0(★5つが満点)

 筆者が2020-2021年日本カー・オブ・ザ・イヤーの特別賞「パフォーマンスカー・オブ・ザ・イヤー」として、ALPINA「B3」に満点を投じた理由について書いてみたい。まず第一は、文字通り「B3」のパフォーマンスが素晴らしいことにある。前述した通り、「B3」の走行パフォーマンスは唯一無二のもので、他のクルマでは堪能できない素晴らしさが備わっている。

 第2の理由は、ALPINA流のクルマ造りの可能性の大きさに着目したからだ。ALPINAというメーカーは、創業以来、既存のBMW各車に手を加え、元のBMWよりも魅力的なクルマを生み出すという手法を採ってきた。この手法が、これからの時代に大きな可能性を秘めているように思えてならないのだ。

 これからの時代の自動車は「CASE」と略称される運転の自動化や電動化、インターネットへの常時接続などといった新しい課題を克服していかなければならない。それらを克服するためには技術や資本を集約しなければならないだろう。でき上がったクルマは事故を起こさず、CO2排出量もゼロかゼロに近く、所有しなくてもシェアリングで便利に使えて、移動のためだけにはことが足りるようになる。99%の人たちはその状況を大歓迎するはずだ。

 しかし、それでは満足できない1%の人たちがいて、その人たちがALPINAのような特別仕立てのクルマを熱烈に歓迎するに違いないのだ。その時代に、BMWがどんなクルマを造っているかわからないから、ALPINAもどんなクルマを造っているかはわからない。だが、「自動車メーカーが大量生産したクルマに独自のノウハウにもとずくチューニングを加えて特別のクルマを少数台数だけ造っていく」という方法は、近未来にこそ生きてくるのではないか?

 それは、ALPINAだけにとどまらず、すでにポールスターがボルボをベースに、独自のクルマを造り始めている。モーターとバッテリーだけで走る電気自動車(EV)ともなれば、一台を構成するパーツの数は現在のエンジン車の数分の一で済むようになり、バッテリーも乾電池の「単一、単二、単三」のように規格化されるかもしれない。モーターや補機類なども規格化されたら、“もはや大量生産されるクルマに違いはない。どれも同じだ”と言われるようになるかもしれない。そうした時にこそ、アルピナの方法は輝きを増すに違いない。

 現在でさえ、クルマは大量生産される工業製品だが、近未来にはメーカーの数が減り、車種が集約されればされるほど、それとは反対の少数台数しか造られない特別なクルマの価値が増してくる。そうなったら何もボディーからパワートレインまで独自のものを造る必要はなく、既存のクルマをチューニングすればよい。電動化が進めばパーツの数が減り、チューニングもやりやすくなっているはずだ。

 130年以上前に自動車が生まれ、これまでおびただしい数の自動車メーカーが生まれ、消えていった。現存するメーカー数は、もっと減っていくことだろう。電動化や自動化などのCASEを克服するためには、寡占化せざるを得ない。寡占化して、車種の数も減っていけばいくほど、それで物足りない人たちがALPINAやポールスターのような少数台数生産のクルマを求めることになる。

 また、CASEによって所有されるクルマの数が減っていくのならば、大量生産&大量消費といった20世紀から続く経済モデルそのものも根本から見直されることだろう。だから、これからの時代では、ALPINAの価値は増してくるし、ALPINAのような少数台数生産という方法が見直され、後を追うメーカーが生まれてくるだろう。

 そのように、ALPINAの存在と方法は示唆に富んでいる。B3のパフォーマンスに圧倒されながら、その有望な近未来について考えた。「パフォーマンスカー・オブ・ザ・イヤー」受賞は、大いに的を射ていると思った。

■関連情報
https://alpina.co.jp/models/b3/highlights/

文/金子浩久(モータージャーナリスト)

こんな記事も読まれています

段付きGTAから身をよじって走りそうなZまで!タミヤのカーモデル再販&バリエーション【第62回 静岡ホビーショー2024速報】
段付きGTAから身をよじって走りそうなZまで!タミヤのカーモデル再販&バリエーション【第62回 静岡ホビーショー2024速報】
LE VOLANT CARSMEET WEB
全長3.7mの「小さな最高級車」あった!? コンパクトなのに“匠仕上げ”の「超豪華内装」採用! 570万円超えの「贅沢すぎコンパクトモデル」がスゴい
全長3.7mの「小さな最高級車」あった!? コンパクトなのに“匠仕上げ”の「超豪華内装」採用! 570万円超えの「贅沢すぎコンパクトモデル」がスゴい
くるまのニュース
電動バイクの未来を変える!?実用化待望の「全固体電池」とは
電動バイクの未来を変える!?実用化待望の「全固体電池」とは
バイクのニュース
御嶽山でオフロード走行&キャンプを楽しむ「EXPLORER CAMP MEETING」の参加申し込み受付がスタート!
御嶽山でオフロード走行&キャンプを楽しむ「EXPLORER CAMP MEETING」の参加申し込み受付がスタート!
バイクブロス
インプレッサはBMW MINI アウディに勝てない? 日本の「小さなプレミアムカー」はなぜ成功しないのか?
インプレッサはBMW MINI アウディに勝てない? 日本の「小さなプレミアムカー」はなぜ成功しないのか?
ベストカーWeb
メルセデスベンツ『CLE カブリオレ』に「AMG 53」、電動ターボで449馬力
メルセデスベンツ『CLE カブリオレ』に「AMG 53」、電動ターボで449馬力
レスポンス
ホンダの斬新「軽ピックアップ」が超カッコいい! 流行りの「アウトドア」にも最適! 万能すぎる「軽トラ」は日本にピッタリな商用車!
ホンダの斬新「軽ピックアップ」が超カッコいい! 流行りの「アウトドア」にも最適! 万能すぎる「軽トラ」は日本にピッタリな商用車!
くるまのニュース
空力マシマシのMotoGPマシンは「決して戻らないし戻してほしくない」ベテランからは批判も若手ジャンアントニオはお気に入り
空力マシマシのMotoGPマシンは「決して戻らないし戻してほしくない」ベテランからは批判も若手ジャンアントニオはお気に入り
motorsport.com 日本版
最近流行のクルマの「サブスク」! ぶっちゃけ「何がよくて」「ネガな点はどこ」なのかまとめてみた
最近流行のクルマの「サブスク」! ぶっちゃけ「何がよくて」「ネガな点はどこ」なのかまとめてみた
WEB CARTOP
マイアミGP、アメリカ史上最多のF1中継視聴者数を記録。サーキットにも27万人が詰めかける
マイアミGP、アメリカ史上最多のF1中継視聴者数を記録。サーキットにも27万人が詰めかける
motorsport.com 日本版
トヨタ新型「カローラ」発売! 精悍さアップの「スポーツ」仕様も!? デビューから約“60年”「ずっと人気」維持し続ける秘密とは
トヨタ新型「カローラ」発売! 精悍さアップの「スポーツ」仕様も!? デビューから約“60年”「ずっと人気」維持し続ける秘密とは
くるまのニュース
レッドブル、スタッフ流出の噂気にせず。メルセデスから220人引き抜き「自分たちのことを心配したら?」
レッドブル、スタッフ流出の噂気にせず。メルセデスから220人引き抜き「自分たちのことを心配したら?」
motorsport.com 日本版
「鳥取‐島根150km」ついに一本に! 山陰道「出雲・湖陵道路」「湖陵・多伎道路」2024年度開通に反響集まる
「鳥取‐島根150km」ついに一本に! 山陰道「出雲・湖陵道路」「湖陵・多伎道路」2024年度開通に反響集まる
乗りものニュース
日産が新型ミニバン『タウンスター・エバリア』を発表…EVも設定
日産が新型ミニバン『タウンスター・エバリア』を発表…EVも設定
レスポンス
アウディの高性能コンパクト「S3」が激進化! 333馬力エンジンを搭載する改良新型が欧州で登場 SNSでの反響とは
アウディの高性能コンパクト「S3」が激進化! 333馬力エンジンを搭載する改良新型が欧州で登場 SNSでの反響とは
VAGUE
日産「新型スカイライン」今夏発売! 史上最強でレトロ風デザイン採用!? 匠“手組みエンジン”搭載した特別仕様、947万円から
日産「新型スカイライン」今夏発売! 史上最強でレトロ風デザイン採用!? 匠“手組みエンジン”搭載した特別仕様、947万円から
くるまのニュース
どうすれば取得できる? バイクのお医者さん的存在「二輪自動車整備士」資格
どうすれば取得できる? バイクのお医者さん的存在「二輪自動車整備士」資格
バイクのニュース
最後尾スタートのリカルド、トラフィックに苦しみ15位「スプリントと違い、本来のペースを発揮できなかった」F1第6戦
最後尾スタートのリカルド、トラフィックに苦しみ15位「スプリントと違い、本来のペースを発揮できなかった」F1第6戦
AUTOSPORT web

みんなのコメント

32件
  • アルピナは、一度は乗ってみたい。

    それにしても見にくい逆回転のタコメーターをなんで採用したのだろう?あの変なメーターと向き合うのは嫌だ。
  • 身内にF型のM5に乗っている方とB5に乗っている方がいるので、幸運なことに乗り比べをする事ができましたが、M5はとにかくスポーツ性能重視で脚も固けりゃ、マフラー音も音が大きく、乗り心地よりもサーキットタイムという印象でした。
    一方でB5は、パワーこそ同じ550馬力でしたが、脚周りはしっとり軽くロールしながら動く感じで乗り心地も良く、快適に走るトルクフルなエンジンっという印象でした。
    同じ車をチューニングして、カタログスペック上は同じ様な数字が並んでいるのに考え方がずいぶん違っていて、全く違う車に仕上がっているんだなと感じて、とても興味深かったですね。
    個人的には快適で見た目もシンプルなALPINAの方が好みでしたが…
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村