ポルシェGT3 RSやフェラーリ・ピスタに並べるのか
text:Matt Saunders(マット・ソーンダース)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
メルセデスAMGのスーパースポーツカーのトップに位置するモデルがGT R プロ。FRの2シーターをハードコアな仕様にアップグレードし、フェラーリ・ピスタやマクラーレン・ロングテール、ポルシェGT3 RSなどを検討するドライバーの候補に加えたい考えだ。
正直、メルセデスAMG GTは、ダイナミクス性能でライバルに並ぶ充分なポテンシャルを備えていなかったことを考えると、かなり高い野望に思える。これまでのメルセデスAMGのモデルで唯一、肩を並べたと思えたクルマはSLSのブラックシリーズくらい。
メルセデスAMGのトップ、トビアス・ムアースは、ポルシェにできることがアッファルターバッハの自社にできないわけがない、と考えているに違いない。君臨するポルシェの座を奪うまで、ムアースが満足することはないはずだ。
一方で、メルセデス・ベンツに詳しい人物によれば、GT R プロは究極のGTというわけでもないようだ。GTのモデル末期を飾るブラックシリーズに通じる、一種の特別仕様らしい。スペック上はサーキット仕様としてかなり手が加えられているが、実際はどの程度の仕上りなのか気になるところ。
動力系統は基本的にGT Rと同じ。V8ターボエンジンの最高出力は585ps。トランスアクスルの7速デュアルクラッチ・オートマティック(DCT)を介して後輪を駆動する。GT Rに標準装備される4輪操舵システムは残されている。トラクションコントロールには10段階の設定があり、ドライバーの好みでドリフトアングルの許容値も調整できる。
サスペンションやボディを重点的に改良
シャシーやサスペンションの変更点は多い。コイルオーバーのサスペンションは最上級のもので、スプリングのプリロードやアンチロール剛性、高速側と低速側のダンパーの減衰力も調整が可能。
ロールケージもシート背後に装備。カーボンファイバー製のアンダーボディ・ブレースとともにボディ剛性を高めている。リアサスペンションは完全にリジッドマウントされる。
英国の郊外の道では悲惨な乗り心地を想像するかもしれない。しかしそんなことはなかった。今回の試乗ではGT Rプロをサーキットで走れなかったから、調整可能なサスペンションの振り幅も確かめられなかった。減衰力の調整ノブは手が届くところに付いているが、スプリングのプリロード量やアンチロール剛性は、ホイールを外さないと変えられない。
試乗車の設定はちょうど中間くらいで、硬さと柔らかさを程々に感じられるところ。日常的に走らせたいと思える味付けだった。標準のGTより硬く衝撃も伝わてくるが、バンプを超えても落ち着きが保たれている。
乗り心地としては騒がしく引き締まっているが、充分に煮詰められたもの。ポルシェRSやサーキット向けのロータスにも似た印象だ。キャッツアイや鋭い隆起部分では衝撃が入ってくるし、低速域では細かい振動が絶えない。だが、総体とすれば快適と呼べる範囲だと思う。
ドラマチックさを楽しめるV8
特ににぎやかなのはリアタイヤ。サスペンションの入力がロールケージを介して直接車内に届くから、振動だけでなくノイズも大きい。
一方で地形に伴う起伏なら、ある程度のスピードが出ていれば、ダンパーは充分なしなやかさを残している。ホイールアーチギリギリに収まる大径ホイールを考えれば、それほど大きなストロークは期待できない。
サスペンションの動きを想像しながら、これまで運転したメルセデスAMGのGTとしては、最良かもしれないと感じた。もっとも、これまでのクルマはさほど良いとは呼べるものではなかったのだが。
パワートレインは、エンジンの回転数やスピード、レスポンスにおいて、ドラマチックさを充分に持っている。V8エンジンを5000rpm以上回せば、怒り狂ったエネルギーを驚きを持って味わえる。大排気量を活かし、低回転域から高いギア比を保ったままスピードを一気に上げることも造作ない。とにかく速いクルマだ。
トランスアクスル・レイアウトとなる7速DCTは、スポーツ寄りのドライビングモードでは、低速域でシフトショックが強い場合がある。だがコンフォートモードにしておけばスムーズで変速タイミングも予測可能。マニュアルモードならキビキビ選んでいける。
ダイナミクス性能で気になる点といえば、やや過敏気味のハンドリング。通常のGTと同様にフロントタイヤはドライバーのかなり前方にある。そのレイアウトを補うために、可変ステアリングと4輪操舵システムによって、機敏さを高めることを目指している。
違和感の残るハンドリング
しかしそれがうまく機能していない。システムがしばしば予測しない制御が入り、実際のドライバーと前後タイヤとの位置関係と、クルマの反応とが一致しないことになる。操縦と反応が、完全に心地よく同調したようには感じられない。
むしろ横方向の剛性を高め、俊敏性を良くしようとしたGT R プロの場合、印象としては若干悪化した向きすらある。ランナバウトや交差点でステアリングホイールを大きく切り込んでいくと、伝わってくる手応えの変化にも驚かされる。
切り始めはステアリングにしっかりとした重さと感触がある。しかしダイナミック・モードでスピードを上げたり、荷重を加えていくと、それらが失われる。
チャレンジングな道で、素晴らしいドライバーズカーとしての輝きを増そうという場面で、残念ながらGT R プロは扱いが難しく感じられるのだ。ある領域までは素晴らしい走りをするのだが、予測の難しさが顔を出し、気持ちを削がれてしまう。
メルセデスAMG GTの最高のクルマが欲しいのなら、GT R プロを選んで間違いないだろう。宝石の原石状態だったGTに磨きをかけ、明確な進化を感じさせる輝きを得ている。ブランドのイメージと同じように。
フロントにV8エンジンを搭載したホットロッド的なマシンとして、これほど綿密に設計され、優れた動的性能を得ているクルマは他にない。現代のスーパーカーの運転のしやすさに飼いならされたドライバーにとって、AMGの少しやんちゃなハンドリング性能には、新鮮さを覚えるかもしれない。
メルセデスAMG GTとしては最高のでき
メルセデス・ベンツらしく効果的な電子制御技術も搭載されているから、路面状態を問わず、一般道で楽しむことも難しくないだろう。かといって、ポルシェ911 RSやフェラーリ488ピスタ、マクラーレン・ロングテールの領域に到達しているのだろうか。
まだサーキット走行を試していないから、明言は難しい。しかし、今回の一般道での印象を振り返るに、高い期待は持てないことは明らかだ。
ライバルモデルは、グリップの限界領域でも自然な操縦性や、最高のスピードと安定性、濃密な感触やハンドリングの奥行きなどを、複合的に持ち合わせている。彼らは軽量で自然で、鋭い。攻め込んだ走りをした時の、ドライバーが得られる達成感も素晴らしいものだ。
メルセデスAMG GT R プロが同等の水準に到達していないとは思う。メカニカルグリップは高く、ライバルに負けないスピードも得ているかもしれないが。
メルセデスAMGのムアースへ、改めて問いたい。パワーやダウンフォース、グリップ力、電子制御技術は充分かもしれない。しかし、ドライバーが得られる自信感はどうだろう。ブラックシリーズとしての更なる高みが、残されているのではないだろうか。
メルセデスAMG GT R プロのスペック
価格:19万1425ポンド(2679万円)
全長:4544mm(GT)
全幅:1939mm(GT)
全高:1287mm(GT)
最高速度:318km/h
0-100km/h加速:3.6秒
燃費:7.8km/L
CO2排出量:-
乾燥重量:1575kg
パワートレイン:V型8気筒3982ccツインターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:585ps/6250rpm
最大トルク:71.2kg-m/2100-5500rpm
ギアボックス:7速デュアルクラッチ・オートマティック
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