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誕生から50年を迎えた奇跡のラリーマシン「ストラトス」とは?

掲載 更新 8
誕生から50年を迎えた奇跡のラリーマシン「ストラトス」とは?

■スーパーカー史に異彩を放つ「ストラトス」は、誕生50年を迎えた

 ランチアブランドが消滅の危機にある今こそ、われわれクルマ好きは、ランチアというブランドの歴史を振り返り、その功績をたたえ、歴代モデルの魅力に感動しなければならない。

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 ランチアというクルマへの、ひとりひとりの熱い想いが重なりあい、大きなうねりとなってFCAの経営陣に届いたとき、今とはもう少し異なる流れも生まれうるだろう。

 もっとも、今となってはどこに本社があるのかも不明な会社に、どうやって熱波を送りつけてやればいいものやら……。それはともかく。ランチアの歴史を紐解いたとき、燦然と輝くスター、どころか、まったくもって異彩を放つ存在がある。それが、「ストラトス」だ。

 その名も「成層圏」と作ったメーカーが名付けるほどだから、このクルマの異次元感は当然か。もっとも、「どこか違う種類のクルマ」という感覚は、当のランチアのみならず、他の歴史的名車やスーパーカーと並べても際立っている。

 要するにストラトスは、ロードカーとして、まったく異質な存在。そう考えていい。

 なぜなら、このクルマは、通常のスポーツカーにあるようなコンセプトワークから生まれたものではないからだ。

 スーパーカーマニアであれば、ストラトスはパーパスビルトマシンだ、というフレーズを読んだり聞いたりしたことがあるだろう。パーパス=目的のためにビルト=作られたマシン。

 よく知られているように、ストラトスは、フィアットグループになったのち、「フルビア」ラリーで新たなブランドイメージ向上のキッカケをつかんだランチアが、いっそうの活躍を目指して計画したモデルであった。

 1970年、トリノショーで生産モデルのプロトタイプデビュー。1972年、市販を前に早くもラリープロトタイプクラスへテストを兼ねて参戦。1973年にはラリー・ファイアストンとツール・ド・フランスを制するなど、早くもパーパスビルトマシンの面目躍如となった。1973年末には市販モデル「HF」の生産がようやくはじまり、1974年には待望のグループ4ホモロゲーションを獲得。

 そこから本格的な快進撃が始まったが、市販モデルの生産は1975年までおおこなわれたのみだった。

 と、簡単な時間軸を並べてみただけで、ストラトスの異様さが浮かびあがるだろう。本格的な生産の始まる前にラリーへ参加。連続する12か月の間に500台を生産しなければいけないグループ4規定を生産途中に取得してWRC参戦。結果的に、総生産台数は500台弱。

 コンペティションシーンにおけるイタリアンメーカーの「インチキ」はとりたてて珍しい話ではない。むしろ、その強引さが面白い物語をレース界に残しているとさえ思う。

 この事実から伺えるのは、ストラトスはパーパスビルトマシン、どころではなく、ラリー必勝マシンとして計画されたという真実だ。ストラトス誕生に関わった天才たち、たとえばマルチェロ・ガンディーニやジャンパオロ・ダラーラといったスーパーカー界の若きスターたちは、そんな大メーカーのプレッシャーにもめげずに、後世に残る名車を、短期間のうちに作り上げた。

 とくに、HFプロトティーポがデビューした1971年といえば、ランボルギーニからカウンタックも登場している。正に、彼らの黄金期にあって、稀代のラリーカー・ストラトスは誕生したのである。

■ストラトスは世界最強ラリーマシンだった

 V型6気筒エンジンをミドに積む「ストラトスHFストラダーレ」をスーパーカーに列する理由は、パフォーマンスでも、ハンドリングでも、いわんやブランド力でも、ラリーにおける数々の勝利でもない。

 マルチェロ・ガンディーニ×ジャンパオロ・ダラーラがデザインした「必勝ラリーマシン」である、というただ1点だ。

 ストラトスをじっくり観察してみれば、驚くほど、同時期にデザインされた「クンタッチ」と似ていることが分かる。

 意外に思われるかも知れない。けれども、並べてみれば誰もがその類似点に気づくはずだ。たとえばノーズサイド下方の折れ目、たとえばダイナミックにうねるショルダーライン、たとえばリアフェンダー後方のふくらみ……。

 取材車両はグループ4タイプであるため、基本のフォルムが隠されてしまっているが、1971年のトリノショーに飾られた市販プロトタイプやアイデアレンダリングをみれば、まるでクンタッチのショートホイールベース版のようである。

 そこには、「クンタッチLP400」とまさに同じく、1インチでもデザインを間違えてしまえば、すべてが一気に崩壊してしまいそうな、繊細なデザインの奇跡があると思う。

 ガンディーニのスタイリングには、常に人を当惑させ、ドキドキハラハラさせ、しまいには魂を吸い取ってしまう魔力のような「何か」がある。

 彼の奥底に秘められた、カースタイリングへの途方もない能力が、「ラリー必勝」というシンプルな目的に向かって合理的に発揮されたとき、恐らくは最初で最後の、恐ろしいまでにプリミティブでストイックなスーパーカー、ランチア・ストラトスが生まれたのだった。

 世界ラリー選手権におけるランチアのメイクスタイトル獲得は、1974年から3年連続におよんだが、もちろん、そのときの主役はストラトスであった。WRC通算18勝。恐るべきマシンである。

 けれども、ストラトスの凄さを、それだけで表現するのは不十分である。

 ストラトスは設計開発段階から未来を見据えて作られた必勝マシンであった。ベースモデルがあって、それを規定に沿って改造し、連続12ヶ月のあいだに500台作ってグループ4のホモロゲーションを取得するのが通常の考え方であるが、その逆、どころか、500台さえ作らなかった、作れなかったのだから、必勝への必死の期し方も分かるというものだろう。

 だからこそ、素晴らしい記録を見つけることができる。1976年のメイクス選手権獲得を最後に、フィアットグループはワークスマシンとしてフィアット「131アバルト」を選んだ(実はこのマシンも2年連続でメイクスを獲得している)が、ストラトスはその後もプライベーターたちによって、積極的にWRCその他のラリーにエントリーされ続け、なんと1981年のツール・ド・コルスで優勝、さらに翌年にはヨーロッパ選手権でも2勝するなど、ワークス引退後も高い戦闘力を持ち続けた。これこそ、ストラトスが世界最強ラリーマシンであったことの、証というべきではあるまいか。

 ちなみに、ロードカーからグループ4規定へのメーカーによる改造は、主に1976年ごろおこなわれたといわれている。

 スーパーラリーカー、ストラトス。その勇姿を今もなおナマで見ることのできる我々は、シアワセだというほかない。

 ランチアよ、永遠に!

* * *

●LANCIA STRATOS
ランチア・ストラトス
・全長×全幅×全高:3710mm×1750mm×1114mm
・エンジン:水冷V型6気筒DOHC
・総排気量:2418cc
・最高出力:190ps/7000rpm
・最大トルク:23.0kgm/4000rpm
・トランスミッション:5速MT

●取材協力
DREAM AUTO

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みんなのコメント

8件
  • 懐かしいな。
    当時何台か持ってたよ。

    カー消しだけれども・・・
  • 私はカウンタックよりディノ308/208gt4に似ていると思うがな。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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