現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 【海外試乗】アウディA1スポーツバックはエンジンサウンドとシャープな挙動で走り心を刺激する

ここから本文です

【海外試乗】アウディA1スポーツバックはエンジンサウンドとシャープな挙動で走り心を刺激する

掲載 更新
【海外試乗】アウディA1スポーツバックはエンジンサウンドとシャープな挙動で走り心を刺激する

新しくなったアウディA1スポーツバック(日本未導入)は、明確に力強さと強靭なイメージを増したエクステリアを採用。エンジンサウンドやハンドリングなど、スポーティ感の好演出が光る。(Motor Magazine 2019年11月号より)

彫りの深さが強調されたフロントマスク
こんなときに限って天気予報が見事に的中して、ミュンヘンで新型アウディA1スポーツバックとSQ2の2台を借り出した私たちは間もなく本降りの雨に見舞われた。まったくカメラマン泣かせの天候だが、A1はブルー、SQ2はイエローと2台揃ってビビッドなボディカラーだったことは不幸中の幸いといえるかもしれない。

トヨタが東京モーターショーで新型フルサイズワゴン「グランエース」を公開へ

とりわけ「ターボブルー」といって、アバンギャルドなレストランのデザートにでも使われていそうなソースを思わせるちょっとおいしそう(?)な色合いのA1は、ドイツの鉛色の空の下でも生き生きとして見えた。そういえば、アウディがこんなに個性的で色鮮やかなペイントを用いるのは、初代TT 3.2 V6に用意されていたパパイアオレンジ以来のことのような気がする。

いや、A1が雨のなかでも強い存在感を放っていたのはボディカラーのせいだけではない。天地に浅く、ややつり目のヘッドライトと、直線とシャープなコーナーの組み合わせで切り取られたエアインテーク類からなるフロントマスクは、これまでのA1とは比べものにならないほど目鼻立ちがくっきりとしている。

同じく人間の顔にたとえるなら「決然たる表情」といっていいかもしれない。雨のなかでもその顔つきがぼんやりとしたものにならなくて済んだのは、そんな造形の妙が効果を発揮していたからだろう。

コンパクトながらアウディデザインの血統をしっかりとアピール
ボディサイドの作り込みを見るとシャープで力強い。キャラクターラインが鋭利な点はこれまでのアウディと同じだが、「彫り込む深さ」はこのA1になってぐっと増した。しかも、ショルダー部分とボディの比較的低い位置に刻まれた2本のキャラクターラインはいずれも直線的で後ろ上がり。デザイナーが疾走感や強い躍動感を描き出そうとしていたのは間違いがない。

このショルダーのキャラクターラインより1段高いところに前後のブリスターフェンダーを設けるのは、マーク・リヒテ氏がアウディのチーフデザイナーに就任して以来のデザイン言語だが、同じ造形がA1にも採用された。

本来、これは4WDのクワトロを表現する手法だが、試乗車はFF。したがってこのデザインはクワトロかどうかを示すためのものというよりは、アウディの正しい血筋を受け継いでいることを示す、デザインモチーフのようなものと捉えたほうが正しいようだ。

キャビンに乗り込んで真っ先に目に飛び込んでくるのは、Q3スポーツバックと同じMMIタッチディスプレイである。インフォテインメントの形式名としてはA6以上の上級モデルと同じだが、Q3やA1などのコンパクト系では上段にタッチディスプレイ、下段にエアコンなどの操作系をコンベンショナルなスイッチやダイヤルでまとめた構成となっている。

実は、これがなかなか使いやすかった。その理由のひとつが、タッチディスプレイがエアコン吹き出し口と並ぶダッシュボードの高い位置に設けられていて、ドライバーの視線移動が最小限で済む点にある。また、大きなディスプレイがドライバーに向けて10度ほど傾けられていることも視認性を向上させる一因といえる。

もうひとつの理由は、運転中はブラインドタッチとならざるを得ない下段の操作系が前述のとおりコンベンショナルなスイッチ/ダイヤル系のため、慣れれば手探りでもコントロール可能なことにある。

上級モデルでは、この部分もタッチディスプレイ式とされているが、私にはQ3やA1で用いたソリューションのほうが理に適っているように思える。40TFSIと呼ばれるグレードの試乗車に搭載されているエンジンは最高出力200ps、最大トルク320Nmの2L直4ターボ。デビュー時にラインナップされたエンジンとしてはもっともパワフルで、ギアボックスはSトロニックという組み合わせだ。

エンジンを始動させる。アイドリング状態でも明確にエンジン音が聞こえる設定は、アウディでいえばもっともスポーティなRSモデル以外ではほとんどお目に掛からなかったもの。もちろん、うるさいわけではないが、ボボボボッという音が常時聞こえる点はいささか意外だった。いままでにはないスポーティさ、もしくは強い刺激を期待する若者向けのセッティングといえるかもしれない。

エンジンの反応は、ヨーロッパの最新排出ガス規制をクリアしたアウディの多くがそうであるように、低速域でやや心許ない印象を抱いた。エンジン回転数が上がってしまえば力強いしレスポンスも良好なのだが、ボトムエンド付近では踏み込んだ瞬間にぐいっと背中を押されるような力強さが薄い。

もっとも、この辺はヨーロッパ仕様特有の問題であるような気がしている。というのも、国際試乗会でヨーロッパ仕様をテストし、その後、日本で改めてハンドルを握ったTTやQ8は、いずれも国際試乗会での印象が信じられないくらい力強いトルクを生んでいたからだ。同じことがA1でもあてはまるかもしれない。

躍動感を強調する味付けと質感は上級車と同等
同様に、サスペンションセッティングの解釈もアウディは少し方針を改めたようだ。ひと言でいえば、これまでよりダンピングが強めでどっしりとした乗り心地なのである。おかげでボディがフラットに保たれる傾向は強まったのだけれど、路面からゴツゴツという軽いショックが伝わってくることがこれまでよりいくぶん増えた。

もちろん、直接的な衝撃が乗員に伝わるわけでもなければ、不快な振動が残るわけでもない。そういう意味でアウディらしい上質さは残っているのだけれど、その表現の仕方がよりビビッドで若者向けになったような気がする。

ステアリングフィールは相変わらずレスポンスが鋭く、そして正確だ。しかも前後のグリップバランスが良好で、ハンドリング特性の変化が少ない。リアのスタビリティが高く、このようなウエットコンディションでも安心感が強いのはアウディらしい美点といえる。

試乗を終えて、アウディらしさが明瞭に感じられる部分と、変わりつつアウディの方向性の両方が見えたような気がした。

前輪駆動ベースのシャシでも優れたハンドリングや乗り心地、洗練さを表現できるのがアウディの強みだ。このうち、乗り心地や洗練さではやや若者向けに振ったようだが、絶対的な品質感の点では引き続きアウディらしいアドバンテージを感じた。

先代のA1の試乗会に参加した際、アウディのエンジニアから「装備の豊富さでいえばもちろんA8にかないませんが、すでにそこに装備されているものの素材やクォリティに関していえばA8とA1で差をつけることはありません。それはアウディ流です」という言葉を聞いたことがあるが、その点はまったく変わっていないように思う。

ただし、クルマの躍動感、元気さの表現という面はもう少しわかりやすく強調されたように感じた。前述のとおりアウディは品質感が優れているので、これまでは余計な味付けを前面に押し出さない傾向があった。料理にたとえれば、良質なダシがベースで薄味の京料理のようなものである。

ただし、このままではコンパクトカーの主なターゲットである若者層の支持が得にくいと判断されたのかもしれない。そこで新型A1ではうまみの強いダシはそのままに、そこに加える調味料を少しだけ多めにしたようなのだ。

いっぽうで、アウディの最新モデルを見る限り、A4以上の上級モデルはこれまでどおりの上質ダシ+薄味の方向性が維持される模様。元気なコンパクトモデルと上品な上級モデル。このふたつのラインが、今後のアウディを形作っていくことになるのだろう。(文:大谷達也)

試乗記一覧

■アウディA1スポーツバック40TFSI 主要諸元
●全長×全幅×全高=4029×1740×1433mm
●ホイールベース=2563mm
●車両重量=1260kg
●エンジン= 直4DOHCターボ
●排気量=1984cc
●最高出力=200ps/4000-6000rpm
●最大トルク=320Nm/1500-4400rpm
●駆動方式=FF
●トランスミッション=6速DCT

[ アルバム : アウディA1スポーツバック はオリジナルサイトでご覧ください ]

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油7円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

佐藤万璃音を擁してWEC・LMGT3に参戦するユナイテッドAS、マクラーレン720S GT3エボの新リバリー発表
佐藤万璃音を擁してWEC・LMGT3に参戦するユナイテッドAS、マクラーレン720S GT3エボの新リバリー発表
AUTOSPORT web
【詳細データテスト】プジョー5008 経済性は良好 走りと快適性は及第点 実用性や居住性は不満も
【詳細データテスト】プジョー5008 経済性は良好 走りと快適性は及第点 実用性や居住性は不満も
AUTOCAR JAPAN
「スーパーフォーミュラしかない!」念願かなったルーキーたちの課題は。2レース制増も影響か
「スーパーフォーミュラしかない!」念願かなったルーキーたちの課題は。2レース制増も影響か
AUTOSPORT web
こ、これアウトランダーじゃね!? 決算説明から見えた[日産PHEV第1号車]は三菱からのOEMか?
こ、これアウトランダーじゃね!? 決算説明から見えた[日産PHEV第1号車]は三菱からのOEMか?
ベストカーWeb
日産「フェアレディZ」にワゴンが登場!?  実は「ステージア」ベースで「リーフ」リアゲートを移植…車検をとって公道走行可能なカスタムカーでした
日産「フェアレディZ」にワゴンが登場!? 実は「ステージア」ベースで「リーフ」リアゲートを移植…車検をとって公道走行可能なカスタムカーでした
Auto Messe Web
実はサーキットより面白い? 本気のオフロード走行のススメ SUV人気の裏にある魅力
実はサーキットより面白い? 本気のオフロード走行のススメ SUV人気の裏にある魅力
AUTOCAR JAPAN
「オートモビリア」って、なに? ミニカーや古本などがずらりと並んだ「アミューズメントゾーン」にはキャンギャルも登場して熱気に包まれてました
「オートモビリア」って、なに? ミニカーや古本などがずらりと並んだ「アミューズメントゾーン」にはキャンギャルも登場して熱気に包まれてました
Auto Messe Web
「これが売れなかったら四輪撤退…」→超ロングセラーに! 世界の「シビック」を生んだ“妙な納得感のある理論”とは
「これが売れなかったら四輪撤退…」→超ロングセラーに! 世界の「シビック」を生んだ“妙な納得感のある理論”とは
乗りものニュース
沼にハマる 『レトロモビル2025』でフランス車の魅力に迫る 高い技術力と芸術的デザインの融合
沼にハマる 『レトロモビル2025』でフランス車の魅力に迫る 高い技術力と芸術的デザインの融合
AUTOCAR JAPAN
トヨタ「86」&スバル「BRZ」用クラッチは「歯打ち音」を低減!「ヤリス」用は半クラが扱いやすい…待望のアイテムが「小倉クラッチ」からリリース!
トヨタ「86」&スバル「BRZ」用クラッチは「歯打ち音」を低減!「ヤリス」用は半クラが扱いやすい…待望のアイテムが「小倉クラッチ」からリリース!
Auto Messe Web
先端の「クマ」も再現 ブガッティ・タイプ57 S コルシカ(2) 受賞多数のオープンボディ
先端の「クマ」も再現 ブガッティ・タイプ57 S コルシカ(2) 受賞多数のオープンボディ
AUTOCAR JAPAN
帽子を焦がしたレーシングシャシー ブガッティ・タイプ57 S コルシカ(1) バラバラからの再生
帽子を焦がしたレーシングシャシー ブガッティ・タイプ57 S コルシカ(1) バラバラからの再生
AUTOCAR JAPAN
トヨタ勝田貴元、惜しくも優勝逃す2位フィニッシュ……3.8秒差で僚友エバンスに軍配|WRCラリー・スウェーデン
トヨタ勝田貴元、惜しくも優勝逃す2位フィニッシュ……3.8秒差で僚友エバンスに軍配|WRCラリー・スウェーデン
motorsport.com 日本版
スズキの超ハイルーフ「本格SUV」に期待大!「ジムニー」超える“悪路走破性”に「まるで軍用車!?」な斬新デザイン採用! 日常から“アウトドア”まで大活躍の「エックスヘッド」コンセプトがカッコイイ!
スズキの超ハイルーフ「本格SUV」に期待大!「ジムニー」超える“悪路走破性”に「まるで軍用車!?」な斬新デザイン採用! 日常から“アウトドア”まで大活躍の「エックスヘッド」コンセプトがカッコイイ!
くるまのニュース
10トン超えのバッテリーを搭載して航続距離500km……ってホントにエコ? 大型トラックはBEVよりもFCVのほうが最適解
10トン超えのバッテリーを搭載して航続距離500km……ってホントにエコ? 大型トラックはBEVよりもFCVのほうが最適解
WEB CARTOP
被災3年…ついに架設スタート! 阿武隈川を渡る国道399号“軽くなる”新しい橋の姿は?
被災3年…ついに架設スタート! 阿武隈川を渡る国道399号“軽くなる”新しい橋の姿は?
乗りものニュース
“ランクル250”をハードコアにカスタマイズ!? オフロードチューニングのスペシャリストが最新コンプリートカー「AT37」を発表!
“ランクル250”をハードコアにカスタマイズ!? オフロードチューニングのスペシャリストが最新コンプリートカー「AT37」を発表!
VAGUE
FDJ2がMIDホイール一色に! 公式ワンメイク化でドリフトシーンに新時代到来!!…大阪オートメッセ2025
FDJ2がMIDホイール一色に! 公式ワンメイク化でドリフトシーンに新時代到来!!…大阪オートメッセ2025
レスポンス

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

249.0330.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

25.0178.0万円

中古車を検索
A1の車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

249.0330.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

25.0178.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村