現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 初代ニッサン リーフには生活を変える予感があった【10年ひと昔の新車】

ここから本文です

初代ニッサン リーフには生活を変える予感があった【10年ひと昔の新車】

掲載 13
初代ニッサン リーフには生活を変える予感があった【10年ひと昔の新車】

2010年6月、いよいよ12月から発売が開始されるニッサン リーフの最終量産試作車の試乗会が開催された。当時はまだ乗用車の電気自動車の普及が始まろうとしている時期、その魅力や価値を理解してもらうにはなにかと苦労も多かった。ここでは2010年10月の本格生産開始を前に、その最終的な市販決定仕様の試乗テストの模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2010年8月号より)

操作性、生産性を考慮して、あえて既存のデザインを採用
リーフは純粋な電気自動車だが、一見、あまり電気自動車らしくない。専用設計の電気自動車ならば、もっと斬新なデザインにできただろうにとも思うが、これが使いやすく、実によくできている。燃料タンクのある床下に薄型コンパクトなリチウムイオンバッテリーを置き、通常ならエンジンのある位置に搭載される電気モーターで前輪を駆動する。制御ユニットや充電システムもフロントのボンネット内に収まっている。そう、リーフはまるでティーダのようなレイアウトをとっているのがわかる。

●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか

なぜわざわざ既存のレイアウトにこだわったのか、それには理由がある。

まずひとつは、ユーザーがとまどわないようにという配慮。操作系も含めて、あまりに奇抜なものは使いにくいし、好き嫌いがわかれる。適度に新しいことが重要だ。

もうひとつが既存のメカニズムを使うことができること。電気自動車ゆえに既存のモデルとの共通パーツはそう多くはないが、それでも共有できる基本パーツはある。さらに、他のモデルと同じ生産ラインを使うことができるというのも大きなポイントだ。これにより、量産化が可能になり、またより多くのユーザーに親しまれるクルマになるというわけだ。量産化が進めば、さらに価格を抑えることもできる。

電気自動車らしい痛快な加速性能、クルマという概念が変わりそう
「一見、電気自動車らしくない」と書いたが、その内容はまったく新鮮なものだ。試乗は日産自動車の追浜テストコースを1周するだけにとどまったが、電気自動車らしい痛快な加速性能を味わうことができた。

その最大トルク280Nmはガソリンエンジンで言えば3L V6なみ、しかも発進時からすぐにピークトルクを発生するので、その加速はスムーズそのもの。力強いトルクと精密なトルク制御で途切れなく一気に140km/hまで達する感覚は、ガソリン車では味わえないものだ。

コーナリング性能もなかなかのもの。フロントに置かれる電気モーターは小さく、重量物はボディ床下中心部のバッテリーということになるのでヨー慣性が小さく、小気味のいい回頭性を見せる。バッテリーの小型軽量化は著しく、かつてのような重ったるさは感じない。タイヤの空気圧の設定も適度で、乗り心地も悪くなかった。

また、消費電力を節約するエコモードを選択すると回生ブレーキも強まるので、コーナー手前で減速したい時など効果がありそうだ。

実はリーフは、スムーズなコーナリングを実現するために、100分の1秒単位でモータートルクを制御するということまで行っている。これも走りの安定に貢献していると思われるが、これなどガソリン車ではとうていできないことだろう。

携帯端末などを通して、クルマの状況を確認したり、遠隔操作することができるのも電気自動車の魅力だろう。たとえば、バッテリー残量や航続可能距離の確認、充電完了確認、エアコンの作動なども行える。もちろん、タイマー機能もついているので、指定時間にエアコンを作動させたり充電を開始させたりすることもできる。ガソリン車でも一部採用されており不可能なことではないが、クルマという概念が少し変わりそうな機能だ。 

電気自動車の特性を知って使いこなすことが重要
ただ、電気自動車には苦労も多い。モーター音、走行音が小さいため、これまであまり問題にならなかった風切り音やロードノイズが大きな課題となってくる。これを解決するために、ヘッドライト、アンテナ、ドアミラーの形状なども徹底的に見直されている。また、低速時にはノーズ部分に設置されたスピーカーから補助的な走行音を流す車両接近通報装置も搭載している。

実際に購入を考えるユーザーにとって重要なのは価格だろう。コストを抑えたリチウムイオンバッテリーや部品の共通化により車両価格376万円を実現、補助金を考慮すると実質価格は約300万円ということになる。さらに走行あたりの燃料代/電気代は、ガソリン車の約10分の1と言われているから、少々高めの車両価格もランニングコストで相殺される計算だ。

充電は、急速充電のほかに、200V家庭電源でも可能。時間は必要だが、別のことをしながら充電することもできるので、たとえば深夜に充電しておくといったことも可能だ。

航続距離が短く、しかも使用条件によってそれが大きく変化するなど、電気自動車には欠点もあるが、こうした特性をふまえて、電気自動車をうまく使いこなすことができれば、リーフはこれまでにはない価値、新しい豊かな生活をもたらしてくれることだろう。(文:Motor Magazine編集部 松本雅弘/写真:永元秀和)

ニッサン リーフ 主要諸元
●全長×全幅×全高:4450×1770×1550mm
●ホイールベース:2700mm 
●車両重量:未発表
●モーター:交流同期モーター
●最高出力:80kW
●最大トルク:280Nm
●バッテリー容量:24kWh
●バッテリー出力:90kW以上
●駆動方式:FF
●最高速:140km/h以上
●航続可能距離:200km(JC08モード)
●車両価格:376万円 (2010年当時)

[ アルバム : ニッサン リーフ はオリジナルサイトでご覧ください ]

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

日産、英国のゼロ・エミッション義務化に「早急」な対応求める 政府目標は「時代遅れ」と批判
日産、英国のゼロ・エミッション義務化に「早急」な対応求める 政府目標は「時代遅れ」と批判
AUTOCAR JAPAN
「柏の杜オークション」会場で「パラモトライダー体験走行会」開催! 参加者だけでなくボランティア活動にも興味を持ってもらえた1日でした
「柏の杜オークション」会場で「パラモトライダー体験走行会」開催! 参加者だけでなくボランティア活動にも興味を持ってもらえた1日でした
Auto Messe Web
WRCラリージャパンで発生した“一般車両コース侵入事件”、FIAは「非常に深刻な問題」として調査へ。来季大会にも暗雲
WRCラリージャパンで発生した“一般車両コース侵入事件”、FIAは「非常に深刻な問題」として調査へ。来季大会にも暗雲
motorsport.com 日本版
サンパウロGP3位の勢いそのままに……ガスリーがラスベガス予選3番手「最後のアタックはアドレナリンが溢れたよ!」
サンパウロGP3位の勢いそのままに……ガスリーがラスベガス予選3番手「最後のアタックはアドレナリンが溢れたよ!」
motorsport.com 日本版
【旧車高騰の背景を見たり?】足を運んだファンは過去最大の1万2500人! 全米最大のJDMイベント
【旧車高騰の背景を見たり?】足を運んだファンは過去最大の1万2500人! 全米最大のJDMイベント
AUTOCAR JAPAN
アルピーヌ、東京オートサロン2025に『A110 Rチュリニ』など出展へ。山野哲也のトークショーも実施
アルピーヌ、東京オートサロン2025に『A110 Rチュリニ』など出展へ。山野哲也のトークショーも実施
AUTOSPORT web
12月1日は岡山国際でドラテク磨き! 初心者向け「カルガモクラス」もある「TOYO TIRES PROXES DRIVING PLEASURE」は要チェックです
12月1日は岡山国際でドラテク磨き! 初心者向け「カルガモクラス」もある「TOYO TIRES PROXES DRIVING PLEASURE」は要チェックです
Auto Messe Web
F1第22戦水曜会見:レースディレクター交代は「知らなかった」と驚くラッセル。一方で対話を続ける意思も明かす
F1第22戦水曜会見:レースディレクター交代は「知らなかった」と驚くラッセル。一方で対話を続ける意思も明かす
AUTOSPORT web
大人気の輸入車コンパクトSUVが進化! VW改良新型「Tクロス」はどう変わった? 乗って思った「これでいいんだよ」感とは
大人気の輸入車コンパクトSUVが進化! VW改良新型「Tクロス」はどう変わった? 乗って思った「これでいいんだよ」感とは
VAGUE
いすゞ新型「FRマシン」発表! 斬新「スポーティ顔」採用&四駆設定あり! “新開発エンジン”と8速AT搭載の「D-MAX」「MU-X」タイで発売!
いすゞ新型「FRマシン」発表! 斬新「スポーティ顔」採用&四駆設定あり! “新開発エンジン”と8速AT搭載の「D-MAX」「MU-X」タイで発売!
くるまのニュース
トラックの頭と積荷が載ったトレーラーの知られざる接続部! 最後のロックはあえて「手動」にしていた
トラックの頭と積荷が載ったトレーラーの知られざる接続部! 最後のロックはあえて「手動」にしていた
WEB CARTOP
いよいよラリージャパン最終日。勝田貴元の“全開プッシュ”は見られるか?「難しい1年を支えてくれたチームのために仕事をしたい」
いよいよラリージャパン最終日。勝田貴元の“全開プッシュ”は見られるか?「難しい1年を支えてくれたチームのために仕事をしたい」
motorsport.com 日本版
伝説のジャガーXJSが現代に蘇る、660馬力V12スーパーチャージャー搭載『スーパーキャット』誕生
伝説のジャガーXJSが現代に蘇る、660馬力V12スーパーチャージャー搭載『スーパーキャット』誕生
レスポンス
ヒョンデのタナクが総合首位をキープ。トヨタのエバンスとオジェが続く……勝田貴元5番手|WRCラリージャパンDAY3午後
ヒョンデのタナクが総合首位をキープ。トヨタのエバンスとオジェが続く……勝田貴元5番手|WRCラリージャパンDAY3午後
motorsport.com 日本版
岩佐歩夢の気になる去就。「F1に向いているハイブリッド思考」担当の小池エンジニアが話すローソンとの比較
岩佐歩夢の気になる去就。「F1に向いているハイブリッド思考」担当の小池エンジニアが話すローソンとの比較
AUTOSPORT web
F1ラスベガスGP FP2:好調メルセデスのハミルトンが最速。角田は初日10番手、アルピーヌやハースもトップ10入り
F1ラスベガスGP FP2:好調メルセデスのハミルトンが最速。角田は初日10番手、アルピーヌやハースもトップ10入り
AUTOSPORT web
レクサス「FRスポーツカー」がスゴイ! 5リッター「V8」&4.7m級の“美しすぎる”「流麗ボディ」採用! 豪華内装もイイ「LC」とは
レクサス「FRスポーツカー」がスゴイ! 5リッター「V8」&4.7m級の“美しすぎる”「流麗ボディ」採用! 豪華内装もイイ「LC」とは
くるまのニュース
フェルスタッペン、特化仕様のリヤウイングがなく「2戦を棒に振っている」予算の影響で2022年から”割り切り”
フェルスタッペン、特化仕様のリヤウイングがなく「2戦を棒に振っている」予算の影響で2022年から”割り切り”
motorsport.com 日本版

みんなのコメント

13件
  • そこに東京電力が加わってオール電化のEVシティを作ろうと企画した。
    そしてその半年後、東京電力が地震で爆発した。
  • デザインが凄く良かった、ひと目でリーフだと判るデザインは素晴らしい
    現行も格好いいけど、あまりに無難すぎて初代の雰囲気が引き継がれず残念だわね
    バッテリーに問題もあったが黎明期の国産EVだもの、生暖かい目で見よう
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

408.1583.4万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

9.0451.0万円

中古車を検索
リーフの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

408.1583.4万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

9.0451.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村