ご存知のとおり私は開示請求マニアでもある。固定式オービスの整備数(昔は「設置数」と呼んだ)と、撮影枚数(昔は「取締り件数」)について、それぞれ都道府県別の一覧表を、1996年分からゲットし続けてきた。そうして今回、2023年の一覧表をゲットした。速報しよう!
最初にややこしいお断りを。いま「2023年の」としたが、整備数は2023年度末(2024年3月末)のデータだ。撮影枚数は2023年中の、つまり年度ではなく歴年のデータだ。あと、これら一覧表は発表ものではない。開示請求の手続きを踏み、手数料を支払ってゲットした。
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■固定式オービスはどんどん減少
まずは整備数の、全国の総数から。ピークは2002年、701台(当時は歴年)だった。ここ5年は以下のとおりだ。じつは一覧表に単位はない。「式」と数えるとも聞いたが、とりあえず「台」とする。丸カッコ内は私の計算による。
2019年度末 426台(-31台)
2020年度末 400台(-26台)
2021年度末 383台(-17台)
2022年度末 344台(-39台)
2023年度末 292台(-52台)
どんどん減り続け、2023年度末はついに300台を割った。2023年度末の減り幅が大きいのはなぜか。都道府県別のデータを見てみよう。
■大阪の固定式が激減!
次に、2023年度末の整備数の、都道府県別の上位を見てみる。丸カッコ内は2022年度末の台数だ。
1位 東京 51台(51台)
2位 兵庫 28台(34台)
3位 愛知 26台(26台)
4位 大阪 17台(47台)
5位 岐阜 14台(14台)
兵庫は6台、大阪はなんと30台も減った。いったい何が起こったのか。
従来のオービスは高感度の白黒フィルムに撮影した。1986年頃、日本で初めてデジタルカメラを使い、画像を通信回線で伝送するタイプの、1号機が阪神高速の神戸線に登場した(三菱社員氏の法廷証言による)。
以来、丸いレーダーアンテナがむき出しのものや、大きな筐体に組み込まれたものなど、さまざまな形のオービスが阪神高速だけに多数“増殖”した。いわば阪神高速の固有種だ。2023年度中に、それらが一斉に寿命を迎えた、または迎え始めたのだろう。
さて、次はお待ちかね、固定式オービスによる撮影枚数である。まずはその一覧表をご覧いただきたい。
■固定式オービス、撮影枚数も激減!
※2つの一覧表は、固定式オービスの、左が「整備状況(令和5年度末)」、右が「撮影枚数(令和5年中)」だ。令和5年=2023年。情報公開法の手続きを踏み、警察庁から開示を受けた。
撮影枚数のピークは2000年、18万1758件だった(当時は「取締り件数」)。その後、どんどん減った。ここ5年は以下のとおりだ。
2019年中 4万2454枚
2020年中 3万8689枚
2021年中 3万7516枚
2022年中 4万0342枚
2023年中 2万8549枚
2022年だけ増え、2023年、やけに減った。これはね、大阪と兵庫の激しい増減の影響が大きい。以下は大阪と兵庫の、2021年、2022年、2023年中の撮影枚数だ。丸カッコ内は私の計算による。
・大阪 3478枚 → 7529枚(+4051枚) → 4918枚(-2611枚)
・兵庫 4375枚 → 6925枚(+2550枚) → 4808枚(-2117枚)
なんとも激しい増減である。特に大阪の2022年の増加ぶりは異様だ。なぜこんなことが? 前述の阪神高速の固有種が寿命を迎えるに当たり、設定速度をいじったせいではないかと私は見る。設定速度とは、何キロ超過から撮影する(取り締まる)か、警察のほうで設定する速度だ。下げれば当然、撮影枚数は増える。
■減ったとはいえ…大阪・兵庫で全国の3分の1を占める
次に、都道府県別の撮影枚数である。上位5位までを以下に抜き出そう。丸カッコ内は2023年度末の整備数だ。
1位 大阪 4918枚(17台)
2位 兵庫 4808枚(28台)
3位 東京 4478枚(51台)
4位 愛知 2909枚(26台)
5位 福島 1823枚(5台)
大阪と兵庫は前年に比べて激減したとはいえ、この2府県だけで全国の撮影枚数(2万8549枚)の3分の1を占める。
固定式オービスは赤切符の速度違反(一般道で超過30キロ以上、高速道と自動車専用道で超過40キロ以上)を取り締まる。大阪と兵庫には、オービスを気にせずカッ飛ばす人がやたら多い?
いや、どうだろう、運転者の性行はどこもそう変わりがなく、大阪はオービスの設定速度が低いってだけ、かなとも私は想像する。
■そして東京のオービスに異変が?
気になるのは東京だ。東京の撮影枚数はこうなった。
2021年 9950枚
2022年 9063枚
2023年 4478枚
なんと2023年はマイナス4585枚。半分以下に減った。なぜっ?
じつは私は、主に東京地裁を根城とする裁判傍聴マニアでもある。可搬式オービスの事件に、また、いわゆるあおり運転の事件に遭遇したくて、「道路交通法違反」の裁判を多く傍聴してきた。しかし滅多に遭遇しない。だいたい8割ぐらいは首都高の固定式オービスによる速度違反で、残りの多くは無免許運転、少し飲酒運転がある、そんな感じだった。
ところが! 2023年の秋頃からか、異変が起こり始めた。固定式の事件がぐんぐん減ったのだ。2024年に入り、何カ月間か、新規の固定式の事件にまったく遭遇しなかった。最近、ぽつぽつ遭遇するようになったが、以前に比べて格段に少ない。そして、かつては滅多になかった酒酔い運転&物損事故の裁判に、やけに遭遇する。
「たまたま偶然」では説明がつかないように思う。東京の首都高の固定式は、2023年度末で51台、すべてTKK製だ。いったい何が起こったのか、ドキドキしつつ調べていきたい。
今井亮一 肩書きは交通ジャーナリスト。1980年代から交通違反・取り締まりのジャンルを取材研究し続け、著書多数。2000年以降、情報公開条例・法を利用し、大量の警察文書を入手し続けてきた。2003年から交通違反以外の裁判傍聴にも熱中。
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