「僕は世界チャンピオンのレベルに達していない。単純なことだ」
マクラーレンのランド・ノリスは2024年、ドライバーとして自身がまだ完全ではないと語る際に、厳しすぎる自己批判を理由にメディアから批判を浴びた。しかし同時に、キャリア2勝目を挙げたオランダGPを前にしたザントフールトでの告白は明白なことを述べたに過ぎないのかもしれない。それはメディアに対してだけでなく、ファンに対してもだ。
■マクラーレンF1は狩る側から狩られる側へ。開幕戦制したノリスにタイトル候補としての自覚も「足を掬われかねない」と兜の緒を締める
もしかしたら、ノリスは自分自身に厳しいのではなく、ただ心に思っていることを口にしているだけなのかもしれない。
「ある時は(パフォーマンスを)発揮してきた。多くのレースでね」
「でもその過程で、ちょっとしたことで悔しい思いをすることもあった。だから今シーズンのある部分には満足していないし、それを改善しようと懸命に努力している」
以前ノリスはそう語った。それから半年、彼は努力を結果として証明した。2025年シーズンの開幕戦オーストラリアGPでの勝利は、間違いなくノリスにとって最も完璧なグランプリウィンとなった。週末を通じて完璧だったというのは言い過ぎかもしれないが、一番重要なことは、大事なタイミングで結果を出したということだ。
予選Q3最初のアタックでは、ターン4でトラックリミット違反を取られてタイム抹消となった。しかし終盤には冷静さを取り戻し、マクラーレンのチームメイトであるオスカー・ピアストリにわずかな差をつけてポールポジションを獲得した。
オーストラリアGPでは、昨年のサンパウロGPとは異なり、決勝レーススタートが中断となった場合の正しい手順に従い、そしてポールポジションからスタートを決めてホールショットを獲得した。もうソーシャルメディアに「ノリスはオープニングラップのリードをキープできない」と書き込まれることはない。
それにより、ノリスは57周のレースを通じて、“追われる側”となった。これは2025年シーズンを通じて、慣れなければならないことのようだ。
ノリスは終始最速というわけではなかった。チームオーダーの助けがあったという見方もあるかもしれないが、レース中盤はピアストリに、終盤はレッドブルのマックス・フェルスタッペンに十分なマージンを保ち、どちらもノリスに対してオーバーテイクを仕掛けることはできなかった。混沌としたグランプリでは驚くほど安定した走りだった。
もちろん、ノリスは雨脚が強まった44周目のターン12でコースオフしてしまったが、後方のピアストリとは異なり、コースに戻った時にタイヤは正しい方向を向いており、ピットレーンに飛び込むまでかろうじてリードを保っていた。
それはわずかな幸運だったのか、それとも雨の2021年ロシアGPでスピンを喫したあの経験が役に立ったのか? それはノリス自身にとっても、答えの出ない質問だ。しかし最も重要なのは結果だ。結局のところ、オーストラリアGPであのコーナーに突入し、突然のグリップ低下に見舞われたのはノリスが最初だった。
相棒であるレースエンジニアのウィル・ジョセフにとっても、コミュニケーションがより円滑になり、どんなクレイジーなことが起こっても大丈夫だと思うドライバーを手にしたのだ。それは恐らく、ノリス自身が昨年から追い求めていたドライバー像だ。
ここで考えておくべきなのは、プレシーズンテストでマクラーレンが非常に印象的なパフォーマンスを示し、早々に今季のタイトル候補と呼ばれながらも、ほぼ完璧に近い週末を過ごしたということだ。ノリスはそれに上手く対処した。
そしてマクラーレンが四半世紀ぶりのコンストラクターズタイトルを獲得した2024年の最終戦から2連勝をノリスが果たしたことも大きいだろう。
今のノリスの走りを誇張して、今季のドライバーズタイトルはノリスのモノだと結論づけるのは簡単すぎる。予選Q3の最終アタックでイエローフラッグが出たり、レッドブル有利の路面コンディションになったりしていれば、全く違った結果だったと認めることも重要だ。
ほんの些細なことでノリスが2位フィニッシュとなり、それすらも敗北と見なされるような週末になっていたかもしれない。昨年のマイアミGPで初優勝を果たしてから、ノリスの表彰台や1勝に対する認識は完全に変わった。
チャンピオンを目指すノリスとしては、勝つべきレースで確実に勝利を手にすることが求められる。昨年のアブダビGPではそれができた。しかしレース展開を見ると、オーストラリアGPの勝利の方が印象的だったというのは間違いない。
ノリスが「マシンが全てじゃない」と言うのは正しい意見で、マクラーレンの進歩を活かせるかどうかはドライバーの腕次第だ。チームが苦しんだ時期に残留を決めたことが正しかったかどうかについては、もはや議論の余地はない。しかし現在、ノリスはF1キャリアの中で最も重要な時期を迎えた。
現時点ではマクラーレンがタイトル争いにおいて断然有利にも思えるが、状況が急変する可能性がある。チーム代表のアンドレア・ステラは、マクラーレンは早い段階で2026年マシンの開発にフォーカスを移すことができるというメルセデスのジョージ・ラッセルからのコメントを恐らく無視するだろう。しかしマクラーレンは、レッドブルとフェルスタッペンの脅威を完全にクリアしたと言えるだろうか? 4度の世界チャンピオンを過小評価するのは愚かなミスだ。
またFIAは、F1マシンのフレキシブルウイング取り締まりを強化しており、早ければ第2戦中国GP、そして第9戦スペインGP前にも新たなテスト方式が導入される。まだ勢力図が入れ替わる可能性があり、シーズン序盤の戦いがチャンピオン争いに大きな影響を与えるかもしれない。
昨年は、フェルスタッペンがシーズン序盤にポイントを稼ぎ上げて4度目のドライバーズタイトルを掴んだように、ノリスはマクラーレンの現在の調子を最大限に活かす必要がある。
そして忘れてはならないのは、今季のタイトルを争う最大のライバルは、ノリスの隣のガレージにいるチームメイトだ。
予選最終アタックで、最後のふたつのコーナーで差をつけられるよう、ほんの僅かにタイヤに気を配っていたり、決勝でコースオフした際もマシンを上手く立て直したりと、オーストラリアGPでノリスとピアストリに差をつけたのはやはり些細なことだった。
しかし、急速かつ確実な成長を続けるF1参戦3年目のピアストリがノリスのタイトル挑戦を脅かす存在になることは必至だ。
ノリスは現在、マクラーレンが今季のタイトル候補であることを認め、オーストラリアGPでの走りが「チャンピオンに相応しいパフォーマンス」に限りなく近いことを強く示唆している。ただ、チャンピオンに相応しい走りをすることと、チャンピオンになることには明確な違いがある。
確かにオーストラリアGPの走りは、ノリスにとってF1キャリアの中でも最も説得力のあるパフォーマンスのひとつだったが、一度だけでは十分ではない。本人もそれをはっきりと理解している。
「こういう週末をまとめあげることは簡単じゃない」とノリスはオーストラリアGPで語った。
「ストレスはかかるが、自分の実力は分かっている。自分に何ができるかは分かっているんだ」
これは「世界チャンピオンのレベルに達していない」というコメントに比べ、見出しを飾るような発言ではない。しかし自分に厳しく、あるいは思ったことを素直に口にするドライバーの言葉だけに、ライバルにとっては脅威になるはずだ。
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