レーサーとして体験した現実と見事にマッチした作品
モータースポーツをテーマにした映画は世の中に数多くあれど、ノンフィクションは別として真実の姿を如実に表している作品は意外と少ない。映画である以上、娯楽性は重要だが、ストーリーは別として描かれるレースシーンがめちゃくちゃではクルマ好きとしては興ざめしてしまうのだ。
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そこで、これまで見た映画と、自分がカーレーサーとして体験した現実とが見事にマッチして表現されている幾つかの名作を紹介してみたい。
その1「栄光のル・マン」
ご存じル・マン24時間レースを舞台に故スティーブ・マックイーンがレーサー役を演じて話題となった不朽の名作だ。1970年に封切りされ。国内では1971年に上映された。当時中学生だった僕はこの映画を見てレース界の過酷さとか迫力とか、レースマシンのカッコ良さなどを知った。僕がレースに引き込まれるきっかけとなった映画と言ってもいい。
このレースのオープニングは米国人レーサーでマックイーンが演じる「マイケル・デラニー」が愛車ポルシェ911に乗ってフランスの田舎道を走りル・マン市に到着するシーンから始まる。もの静かなオープニングシーンはこれから始まる迫力あるレースシーンへの誘いとして、まあよくある手法なのだろうと思って見ていた。しかし、このシーンだけでも今になって見返すとじつに奥が深い。
まず米国人であるデラニーがドイツの名門・ポルシェチームの一員として採用されていることが興味深い。そして愛車と思われたポルシェ911はおそらくはチームから支給され、移動用に使っていた設定だったと思われる。それはワークスドライバーの恵まれた姿が描かれていたわけだ。
ル・マンの舞台となるル・マン市に到着したデラニーはとあるレストランの見える場所に911を停め、哀愁に満ちた表情で景色を眺めている。そして彼の脳裏に前年の事故シーンが蘇るのだが、911を停めた場所こそはル・マン最大の特徴である6kmの直線区間ユーノディエールの始まりで、ル・マン通の人には知られるレストランテ「オーベルジュ・ド・ユーノディエール」の見える場所だったのだ。1989年、僕が実際にポルシェ962Cのドライバーとしてル・マンを訪れた時にもこの「オーベルジュ・ド・ユーノディエール」は映画の中そのままにそこにあり(現在も存在し経営も続いている)、そこを通過するたびにその先に続く長い直線区間を走る覚悟を決める場所でもあった。その時初めて映画の中のシーンが現実であったと気付いたのだ。
ル・マン出場ドライバーが実際に体験するシーンも!
さらにデラニーは911で市内を走り、とある教会の前を進む。フランスの田舎町を想わせる演出と思っていたが、その教会はサン・ジュリアン大聖堂だ。毎年教会前のジャコバン広場でル・マン24時間レース出場車とドライバーが集い車検とパレードを行う場所なのだった。これも1989年に現地で初めて現実と知った。映画のオープニングシーンの5分ほどだが、じつは現実の世界が展開されル・マン出場ドライバーが実際に体験するシーンが描かれていた訳だ。
ル・マン24時間レースの闘い方はさまざまだが、ポルシェのようなワークスチームはパドック裏にキャンピングカーを置き、各ドライバーには1台ずつ与えられる。食事はケータリング用の巨大なテント内で24時間いつでも自由に無料で取れる。そうしたシステムも正確に描かれていた。これも事実と同じで1989年にもエントラント用にキャンピングカーが与えられ、ケータリングも同様だった。
映画の中で描かれたことをひとつひとつ実際に経験しながら僕のル・マンウィークは進み、同時にこの映画には再現性の高い現実が描かれていたのだと知ったのだ。
映画に出場するマシン群は今ではマニア垂涎の的となっている名車ばかり。デラニーが乗るのはGulf(ガルフ)カラーの鮮やかなワークス・ポルシェ917K。1970年のル・マンに実在した車両がベースになっている。対するフェラーリはワークスチームの512Sを実車投入。激しいデッドヒートやクラッシュシーンでは917Kや512Sが大破するシーンも含まれ、現代なら天文学的な費用がかかっただろう。これを現代のようなCGではなく実車で撮影しているところが凄いのだ。
ドライバー交代し、恋人や家族、スポンサー、チーム監督などと過ごすシーンややり取りも現実的だったことが今の僕ならわかる。この映画を観て以来レーサーは「ポルシェ911に乗ってサーキット入りする」のが粋であり、それを実現すべく自身もポルシェ911を買いそれでレース場へ向かったもの。まあポルシェ・ワークス契約なら自分で買う必要はなかっただろうけど、それは敵わなかった。
※後編へ続く
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みんなのコメント
けっしてなんでも一番のスーパーヒーローではない描き方のマックイーン節が
かれのニヒルな笑顔とあいまって独特のトーンの映画になってる
映画として見るよりも仮想ドキュメンタリーとして見るとそれなりに面白いです。