現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 屋根に太陽光電池を載せて「ソーラー発電」だけで走るクルマ……は今の技術ならできる? マジメに計算してみた

ここから本文です

屋根に太陽光電池を載せて「ソーラー発電」だけで走るクルマ……は今の技術ならできる? マジメに計算してみた

掲載 7
屋根に太陽光電池を載せて「ソーラー発電」だけで走るクルマ……は今の技術ならできる? マジメに計算してみた

 この記事をまとめると

■太陽光を利用して走行するソーラーカーは量産レベルでは実用化していない

電気がなくてもガソスタがなくても走れる! 夢の「ソーラーオフロード車」をオランダの大学作ってガチに砂漠を1000km横断した

■外部充電に頼らずソーラーパネルだけでクルマを走らせるためには課題が多い

■現状のソーラーパネルの発電能力ではリアルタイムに太陽光発電で走るソーラーカーは非現実的

 プリウスPHEVは1年間の太陽光発電で1200km分を賄える

 国家としての国際公約「2050年カーボンニュートラル実現」に向けて、化石燃料の消費を減らし、再生可能エネルギーの活用を増やすことが進んでいる。そうしたなかで、身近な存在として目立っているのがソーラーパネルによる太陽光発電だろう。

 山や丘などの木々を伐採して多量のソーラーパネルを置いた「メガソーラー」と呼ばれる太陽光発電設備を見かけることは増えている。それによる悪影響(土砂災害など)を指摘する声もあるが、日本の発電における太陽光発電の比率はすでに10%を超えているという話もある。逆に火力発電は、直近5年で1割近く減っているという試算もあったりする。

 もはや再生可能エネルギー発電は欠かせない存在となっているのだ。そうしてソーラーパネルで発電した電力を、マイカーのEVやPHEVの充電に利用することで、エネルギー的に自立しているというオーナーも増えているのではないだろうか。

 しかしながら、車両単体で太陽光を利用して走行する「ソーラーカー」については、残念ながら量産レベルでは実用化していないのが現状だ。

 2023年に発売されたトヨタ・プリウス(PHEV)にはルーフをソーラーパネルに置き換え、それによって駆動用バッテリーなどを充電するという機能が設定されているが、そのポテンシャルは1年間で1200km走行相当となっている。

 量産されているソーラーパネルの発電能力は一定ではないが、最大出力としては200W/平方メートル以上が期待できる。ただし、固定される太陽光発電の場合は、常に最大出力が維持できるわけではない。季節によって日照時間も変われば、外気温や天候による影響も受ける。

 ちなみに高温になるとソーラーパネルは性能が落ちるので、太陽光がさんさんと降り注ぐ夏は太陽光発電のベストシーズンでなかったりするのだ。諸条件を織り込むと、200W/平方メートルのソーラーパネルは年間200kWh程度の発電量を見込むことができる。

 前述したプリウスPHEVの電力消費率は7.46km/kWh(参考値)となっている。ここから計算すると、1200km走行に相当する電力量は160kWhと導くことができる。つまり、1年間で160kWhの発電ができるということだ。プリウスPHEVのルーフサイズからすると、標準的な発電能力をもったソーラーパネルが使われているといえそうだ。

 こうしてプリウスPHEVのソーラーパネルによる走行性能を整理すると、ソーラーカーの実現が近づいているという印象も受ける。一般ユーザーの平均的な年間走行距離は5000~6000kmといわれているので、すべての走行をカバーできるほどではないにしても、年間走行距離の20~25%に相当する電力を、ルーフのソーラーパネルで賄えるのだ。

 ソーラーカーを実現するために立ちはだかる壁

 ただし、まったく外部充電に頼らずソーラーパネルだけでクルマを走らせるためには課題が多い。

 仮にワンボックス形状にしてルーフ面積を広げるとしてみよう。ボディ形状が変われば空気抵抗にも影響するのでプリウスの数値をあてはめるのは適切ではないが、あえて7.5km/kWhの電力消費率を固定したまま試算してみよう。

 前述した一般ユーザーの平均的な年間走行距離6000km走行に必要な電力量は800kWhとなり、最大出力800W相当のソーラーパネルを使う必要がある。その場合のルーフ面積はおよそ8平方メートルとなる。

 ノーズなどをもたないカタチを想定したとして、全長4.5m×全幅1.8mの車体が必要となるのだ。その上で、空気抵抗を減らすために全高1.5m以下にすれば、計算上は一年間の走行に使う電力をルーフ部のソーラーパネルだけでカバーできそうだ。

 ただし、上記の計算はあくまで机上の空論でしかない。

 いうまでもなくソーラーパネルは天候などの諸条件によって発電能力が変化する。単純に夜間はほとんど発電できないので、ソーラーパネルによる電力をリアルタイムに消費した走行だけを想定するのはあり得ない。ある程度は走行用バッテリーをもち、そこに充電して走ることになる。

 年間6000kmしか走らないといっても毎日ちょっとずつ走っているわけではなく、平日はほとんどの時間が駐車場に置いてあって、週末に遠出するといった使われ方が多いだろう。仮に外部充電を使わずに、ソーラーパネルだけで消費電力をカバーしようとすると、週末に利用する電力相当のバッテリーを積んでおき、それを平日にソーラーパネルで充電する必要が出てくる。ソーラーパネルで発電できるようにしても、バッテリー搭載量を大幅に減らすことにはつながらない。結果として、ソーラーパネルによる発電機能をもったEVもしくはPHEVとなってしまう未来しか描けないのだ。

 欧州などでは外部充電に頼らず、太陽光発電だけで走行できるソーラーカーの実現を目指すスタートアップも出てきているが、上記の理由から走行用バッテリーをもたないソーラーカーを実現するのは不可能だろう。

 そもそも、現状のソーラーパネルに期待される最大出力からすると、バッテリーを使わずに走行するのは不可能といえる。

 前述したプリウスPHEVを市街地モードで走らせたときの消費電力は、カタログ値で113Wh/kmとなっている。最大出力800Wのソーラーパネルで、リアルタイム発電だけで走行する場合の距離を計算すると1時間で7kmにしかならない。また、電力ロスをゼロだと仮定しても、瞬間最大出力800Wの電力で1.5t前後の乗用車を走らせることは難しいといえる。

 すなわち、現状のソーラーパネル発電能力、車両重量や走行抵抗などからすると、リアルタイムに太陽光発電だけで走る量産ソーラーカーは非現実的といえる。ただし、ソーラーパネルで車載バッテリーを充電する機能を持つEVやPHEVを「新ソーラーカー」と定義するのであれば、ほとんど自然エネルギーで走ることのできるクルマを生み出すことは可能といえそうだ。

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

イモトアヤコ、600万円超の「“オシャ”ハイエース 」購入! 「車中泊楽しそう」「テンション上がる」反響多数のゴードンミラー「GMLVAN V-01」とは
イモトアヤコ、600万円超の「“オシャ”ハイエース 」購入! 「車中泊楽しそう」「テンション上がる」反響多数のゴードンミラー「GMLVAN V-01」とは
くるまのニュース
日産、英国のゼロ・エミッション義務化に「早急」な対応求める 政府目標は「時代遅れ」と批判
日産、英国のゼロ・エミッション義務化に「早急」な対応求める 政府目標は「時代遅れ」と批判
AUTOCAR JAPAN
「柏の杜オークション」会場で「パラモトライダー体験走行会」開催! 参加者だけでなくボランティア活動にも興味を持ってもらえた1日でした
「柏の杜オークション」会場で「パラモトライダー体験走行会」開催! 参加者だけでなくボランティア活動にも興味を持ってもらえた1日でした
Auto Messe Web
WRCラリージャパンで発生した“一般車両コース侵入事件”、FIAは「非常に深刻な問題」として調査へ。来季大会にも暗雲
WRCラリージャパンで発生した“一般車両コース侵入事件”、FIAは「非常に深刻な問題」として調査へ。来季大会にも暗雲
motorsport.com 日本版
サンパウロGP3位の勢いそのままに……ガスリーがラスベガス予選3番手「最後のアタックはアドレナリンが溢れたよ!」
サンパウロGP3位の勢いそのままに……ガスリーがラスベガス予選3番手「最後のアタックはアドレナリンが溢れたよ!」
motorsport.com 日本版
【旧車高騰の背景を見たり?】足を運んだファンは過去最大の1万2500人! 全米最大のJDMイベント
【旧車高騰の背景を見たり?】足を運んだファンは過去最大の1万2500人! 全米最大のJDMイベント
AUTOCAR JAPAN
アルピーヌ、東京オートサロン2025に『A110 Rチュリニ』など出展へ。山野哲也のトークショーも実施
アルピーヌ、東京オートサロン2025に『A110 Rチュリニ』など出展へ。山野哲也のトークショーも実施
AUTOSPORT web
12月1日は岡山国際でドラテク磨き! 初心者向け「カルガモクラス」もある「TOYO TIRES PROXES DRIVING PLEASURE」は要チェックです
12月1日は岡山国際でドラテク磨き! 初心者向け「カルガモクラス」もある「TOYO TIRES PROXES DRIVING PLEASURE」は要チェックです
Auto Messe Web
F1第22戦水曜会見:レースディレクター交代は「知らなかった」と驚くラッセル。一方で対話を続ける意思も明かす
F1第22戦水曜会見:レースディレクター交代は「知らなかった」と驚くラッセル。一方で対話を続ける意思も明かす
AUTOSPORT web
大人気の輸入車コンパクトSUVが進化! VW改良新型「Tクロス」はどう変わった? 乗って思った「これでいいんだよ」感とは
大人気の輸入車コンパクトSUVが進化! VW改良新型「Tクロス」はどう変わった? 乗って思った「これでいいんだよ」感とは
VAGUE
いすゞ新型「FRマシン」発表! 斬新「スポーティ顔」採用&四駆設定あり! “新開発エンジン”と8速AT搭載の「D-MAX」「MU-X」タイで発売!
いすゞ新型「FRマシン」発表! 斬新「スポーティ顔」採用&四駆設定あり! “新開発エンジン”と8速AT搭載の「D-MAX」「MU-X」タイで発売!
くるまのニュース
トラックの頭と積荷が載ったトレーラーの知られざる接続部! 最後のロックはあえて「手動」にしていた
トラックの頭と積荷が載ったトレーラーの知られざる接続部! 最後のロックはあえて「手動」にしていた
WEB CARTOP
いよいよラリージャパン最終日。勝田貴元の“全開プッシュ”は見られるか?「難しい1年を支えてくれたチームのために仕事をしたい」
いよいよラリージャパン最終日。勝田貴元の“全開プッシュ”は見られるか?「難しい1年を支えてくれたチームのために仕事をしたい」
motorsport.com 日本版
伝説のジャガーXJSが現代に蘇る、660馬力V12スーパーチャージャー搭載『スーパーキャット』誕生
伝説のジャガーXJSが現代に蘇る、660馬力V12スーパーチャージャー搭載『スーパーキャット』誕生
レスポンス
ヒョンデのタナクが総合首位をキープ。トヨタのエバンスとオジェが続く……勝田貴元5番手|WRCラリージャパンDAY3午後
ヒョンデのタナクが総合首位をキープ。トヨタのエバンスとオジェが続く……勝田貴元5番手|WRCラリージャパンDAY3午後
motorsport.com 日本版
岩佐歩夢の気になる去就。「F1に向いているハイブリッド思考」担当の小池エンジニアが話すローソンとの比較
岩佐歩夢の気になる去就。「F1に向いているハイブリッド思考」担当の小池エンジニアが話すローソンとの比較
AUTOSPORT web
F1ラスベガスGP FP2:好調メルセデスのハミルトンが最速。角田は初日10番手、アルピーヌやハースもトップ10入り
F1ラスベガスGP FP2:好調メルセデスのハミルトンが最速。角田は初日10番手、アルピーヌやハースもトップ10入り
AUTOSPORT web
レクサス「FRスポーツカー」がスゴイ! 5リッター「V8」&4.7m級の“美しすぎる”「流麗ボディ」採用! 豪華内装もイイ「LC」とは
レクサス「FRスポーツカー」がスゴイ! 5リッター「V8」&4.7m級の“美しすぎる”「流麗ボディ」採用! 豪華内装もイイ「LC」とは
くるまのニュース

みんなのコメント

7件
  • sae********
    かなり昔に鉄腕ダッシュで古いソーラーパネルで日本一周やってたけど、今の技術でもだめなのか?
  • shi********
    考え方が逆なんだよね
    一般に年間6000km走る人だとソーラーカーじゃ無理だよね・・・じゃなくて
    年間1500kmしか走らない人ならソーラーカーで十分だよね・・・となる
    仮に一日10km、年間3650kmしか走らないのならバッテリーも小さくて済む
    地震や水害などで停電も増えて来た昨今、ソーラーカーに限らずエネルギー的に自立したソーラーパネル住宅の需要はこれから益々高まっていくでしょう
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

275.0460.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

0.0789.0万円

中古車を検索
プリウスの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

275.0460.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

0.0789.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村