「モータースポーツの常識を覆す可能性を秘めたゲームチェンジャー」を、普通に毎日乗りこなしたらどんな至福の時間が味わえるのか・・・衝撃デビューから4年、新しいGRヤリスは現行型オーナーが思わず乗り換えてしまいたくなるほどに、奥深い進化を遂げたようです。これ、実は実話。新開発、というより「新機軸」と呼びたくなるユニークな8速ATの採用など、単なる改良に留まらないその大きなステップアップを、実際に走ってチェックしてみました。(MotorMagazine2024年8月号より再構成)
モータースポーツ起点の秘密兵器「GR-DAT」概説
GRヤリスの真髄が「1.6L 直列3気筒ターボエンジン×4輪駆動」がもたらす、ラリーステージをはじめシーンを問わない卓越したドライバビリティにあることは、言うまでもありません。改良型ではさらにその刺激を、スキルを問わずより幅広いドライバーに味わいつくしてもらうための秘密兵器が投入されています。
●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか
それが新開発の8速AT「GR-DAT」です。実際の走り味は後半のインプレッションでご紹介しますが、リリースベースでのメリットを箇条書きにしてみました。
(1)プロドライバーに匹敵する神シフトが可能。「最適なギア」=最速という当然
AT制御のソフトウェアに「先読み」要素を追加。これまで減速Gや車速などの車両挙動を感知してから変速制御を行っていましたが、新型ではここにドライバーの運転操作(ブレーキの踏み込み方、抜き方、アクセル操作など)の感知が加わります。操作がもたらす挙動変化をあらかじめ予測することで「ドライバーが何を求めているのか」を判断、より最適なシフト選択を可能にしています。それはまさに「神のみぞ知る」領域での最良のギア選択と言えるでしょう。
(2)世界トップレベルの変速スピードを実現
AT内部の素材を強化することで、さらなるシフト速度の向上に対応しました。具体的には変速用クラッチに高耐熱摩擦材を採用、より「攻めた」AT制御のソフトウェア見直しによってさらなる「速さ」を可能にしています。
(3)「おいしいところ」をもっと活かす走りを実現
カギとなるのはMTの6速に対して2速プラスとなる8速への多段化です。クロスレシオ化が可能となり、もともと抜群にトルクフルな1.6L 直列3気筒ターボエンジンG16E-GTS型の美味しいところをさらに上手に使いきる走りを実現しました。高性能版のRZ“High performance”に採用されたトルセンLSDもまた、アクセル操作による駆動力コントロール性能をアップグレードしてくれるアイテムです。
この他にも、新型GRヤリスの進化は多岐に渡ります。そのあたり、詳細は自動車評論家 岡本幸一郎氏がじっくりテイスティングしてくれました。(ここまでWebモーターマガジン編集部)
戦闘力向上のための外観は「壊しても安心」デザイン
2020年の登場以降も、開発関係者らはモータースポーツを基点とした、もっといいクルマづくりへの終わりなき挑戦として、さらなる戦闘力と商品力の向上を目指し、通常では考えられないほどの手間をかけて、GRヤリスの開発・改良に取り組んできた。
モータースポーツにおいては、さまざまなカテゴリーへの参戦を継続し、「壊してくれてありがとう」を合言葉に、極限の環境下で壊しては直すを繰り返すとともに、ドライバーからのフィードバックを重視した「ドライバーファーストのクルマづくり」を念頭に置いて、彼らの意見を反映し、車両性能を総合的に向上させた。開発に社外のプロドライバーをこれほど起用した例はないそうだ。
その成果が、「進化型」と呼ぶ最新のGRヤリスに凝縮されている。進化の恩恵はモータースポーツにとどまらず、日常的に使うユーザーにとっても、より快適に楽しく高性能を味わえることに直結している。
改良の内容は非常に多岐にわたる。筆者は改良前の車両にもたびたび触れる機会はあったが、とにかくモデルライフの途中でここまでやるとは驚かずにいられないほど各部に手が加えられている。
もちろんその変更点のすべてにモータースポーツに根差した「意味」がある。
外観は一見すると大差がないようで、実はわかる人が見たら即座に判別がつくほど新旧で違う。
フロントはさらなる空力性能や冷却性能の向上を図るための形状変更のほか、バンパー下部が3分割構造とされたのは、破損時に容易に修復できるようするためだ。
リアはテールランプが一文字につなげられ、上下に配置されていたハイマウントストップランプやバックランプを集約したのも、リアスポイラーを好みのパーツに交換しやすくし、パンパーが破損しても灯火類の視認性を確保するためという配慮による。
ドライバーファーストの内装は、快適性にも貢献
大きく変わったのは、むしろコクピットのほうだ。
まさしくドライバーファーストに向けた運転環境の整備を最優先して、操作パネルとディスプレイを運転席側へ15度傾け、さらに競技用シートベルトで身体を固定した状態でも操作しやすいスイッチ配置とされた。
これらは機能性の向上はもとより、日常をより快適に使うことにも大いに寄与する。ドライバーを囲むように配されたインパネは、見た目にも存在感が増した。
さらに、初期型ではやや高い感のあったドライビングポジションも、ヒップポイントを25mm下げるとともに、ハンドル位置を調整して、より適切なポジションが取れるように変更された。たしかに進化型のほうが座った瞬間からしっくりくるような気がする。
細かいところではルームミラーを上部に移設したり、センタークラスターの上端を下げるなど視界を改善するための工夫も施されている。フルモデルチェンジではないのにインテリアをここまで大きく作り変えるのは前代未聞のことだ。
いかに力を入れて改良に臨んだかが窺い知れる。
もうGRカローラが羨ましくない(かもしれない)パワーアップ
走りに関しても大きな進化を遂げていることは明らかだ。
もともと世界最強の3気筒エンジンであるG16E-GTS型は、GRヤリスの初期型では最高出力が272psだったところ、約2年後に登場したGRカローラでは304psに引き上げられ、その304ps版が改良型GRヤリスにも与えられたわけだ。32psと30Nmの上乗せによる違いは、乗ればすぐにわかる。
参考までに記すと、1618ccという排気量は、WRCのホモロゲーションを意識したものだ。87.5×89.7mmとストロークが若干長いスクエア型で、10.5の圧縮比を持ち、筒内直噴とポート噴射を併用し、吸気ポートをストレートにするなどして急速燃焼を実現しているのが特徴だ。
進化型では、もともと強力なエンジンをさらにパワーアップするためにブースト圧を高め、それに合わせて冷却や排気効率を高めるとともに、燃料ポンプ(高圧)の容量を増やしたほか、ウエストゲートの制御を工夫するなどして俊敏なレスポンスを確保している。
これまでも十分すぎるほどパワフルだったところ、300psオーバーを実現した進化型は、より力強く伸びやかな吹け上がりを楽しめるようになった印象を受ける。
ピストンの重量合わせも効き、トップエンドまで引っ張ってもまだまだいけそうな余韻を残しつつ7000rpm前後まで回る。
MTと同等以上に「自由自在」な8速ATを新採用
進化型では、そんなGRヤリスならではの価値をもとに、「幅広いドライバーがスポーツ走行を楽しめ、レースでMTと同等に戦えるAT」を目指して開発したという「GR‐DAT」がラインナップされたのが最大のポイントだ。
この新開発の8速ATはタダモノではない。トルコン側に多板クラッチを組み合わせて全ギアで瞬時のロックアップを実現したスグレモノだ。
さらに、高性能版のRZ“High performance”にはよりポテンシャルを引き出すべく、前後デフともにトルセンLSDが組み合わされている。
扱いやすくて故障の不安も小さく、なにより性能が高い。これまでスーパー耐久レースや全日本ラリー選手権などさまざまなモータースポーツシーンとドライバーの走行を通じて国内外のサーキット評価で鍛え上げ、まさに壊しては直すを繰り返しことで、幅広い方が楽しめる速さと信頼性を実現したという。
GRではこのATのことを「モータースポーツの常識を覆す可能性を秘めたゲームチェンジャー」だと表現している。ATの追加設定を歓迎するユーザーは少なくなく、初期受注のAT比率は実に約50%と、イメージよりもかなり高いことにも驚かされた。
自ら操る感覚を自然に演出。実はサウンドにもこだわる
トルコンATと聞いて先入観で残念に思っている人もいることだろうが、意識改革したほうがいい。
実際にドライブしても、MTと比べても遜色ないほどダイレクト感があることに感心する。あえて変速ショックを感じるようにし、ATとはいえ自ら操っている感覚が強い。スポーツモードにするとシフトチェンジが素早くなる。かたやMTも、あらためてシフトフィールの良さを再確認できた。適度にショートで刻みが掴みやすく、ガシッとしたレーシーな操作感で操ること自体に楽しさを感じる。だからMT派の期待を裏切ることはない。
音にも大いにこだわっていて、ATには雑音を低減するアクティブノイズコントローラーが、MTにはさらに音による演出を加えるアクティブサウンドコントローラーが装備されており、聴覚でも性能を楽しむことができる。
ギアのステップ比は、ATも6速までがMTと同じぐらいクロス気味になっている。8速はかなりワイドで、100km/h巡航時のトップギアでのエンジン回転数はMTが約2500rpmに対し、ATが約1800rpmと低い。それも効いて、中~高速走行時と低速主体の走行時で燃費の公表値が逆転しており、実際に走った感触もまさにそのとおりだった。
現行型オーナーを翻意させた?洗練された乗り心地と安心感
足まわりの進化も小さくない。試乗した高性能版のRZ“High performance”には、サーキットを攻め込むことを念頭に、限界域での速さとコントロール性を追求したチューニングが施されているが、走り出してすぐに感じるのは乗り心地が良いことだった。
スポーティな初期型が悪かったわけではないものの、跳ねや微振動が見受けられたが、引き締まっていながらも動き始めから足がよく動くようになった進化型は、同じタイヤを履くとは思えないほどグリップ感が増して、質の高い走りになっている。しっかりとしなやかに路面を捉える感覚がハンドルからも伝わってくる。
GRヤリスの車両重量の軽さとホイールベースの短さは、ワインディングロードでは大きな強みとなる。強力な動力性能とともに、キビキビと意のままに操れるのもGRヤリスなればこそである。
さらに、シャシとボディが強化された進化型は、そこに上質さと安心感が加わった。タイヤがしっかり路面を捉える感覚が伝わってくるおかげで、より快適で不安なく走れるようになった。
これには走りの精度感が増して、ハンドルを微舵の領域から切ったとおりに応答遅れなく動いてくれるのも効いている。その恩恵はワインディングロードはもちろん、公道をごく普通に走っても十分に味わうことができる。
自動車検査証によると、後軸重は同じ510kgで、前軸重は790kgと770kgと20kgばかりAT仕様が重い。それもあってATの方が、ハンドリングと乗り心地が微妙にマイルドに感じられた。
新調されたドライブモードがもたらす、新たな醍醐味
さらに、高性能なアクティブトルクスプリット4WDのモード選択により走りが変わり、FFベースの4WDながら後輪駆動のような走りを楽しめるのも魅力である。
基本性能が向上した進化型は、より各モードでの走りのキャラクターの違いが明確で、駆動力をリアよりにしても4WDには違いないので安定性が高く、多少の操作ミスに寛容なのもありがたい。
また、ドライブモードセレクトで好みの走りのテイストを選べるが、MTとATで若干違いがあり、アクセルレスポンスが、MTはノーマルモードが「ノーマル」で、スポーツモードが「アジャイル」となるのに対し、ATはどちらも「アジャイル」となり、コンフォートモードでのみどちらも「コンフォート」となるあたりも、ATの位置づけが窺える。
GRヤリスの小さな車体には、モータースポーツで勝つためのメカニズムとノウハウがギッシリと凝縮されている。世界の頂点で戦うパフォーマンスの片鱗を味えるところに、GRヤリスに乗る醍醐味がある。世にある高性能車の中でも、ひときわ異彩を放つ存在に違いない。
そんなGRヤリスがさらに進化し、2ペダルでもその世界観を味わえるようになったことを歓迎したい。(文:岡本幸一郎/写真:井上雅行)
[ アルバム : 新型GRヤリス 攻める楽しさを公道チェック はオリジナルサイトでご覧ください ]
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
愛車管理はマイカーページで!
登録してお得なクーポンを獲得しよう
5速MT搭載! トヨタ“新型”「超スゴいAE86」に反響多数! 「買う」「乗りたい!」 「パンダトレノ」に画期的「テンロクNAエンジン」搭載! 最新「GRトレノ」登場
「90万円」台から販売中! ダイハツ新型「軽ハッチ」に反響殺到! 「コスパ最強」「めちゃ低燃費」「MTも欲しい」の声も! 超オトクな「ミライース」に熱視線!
約180万円から! ダイハツ本気の「AWDスポーツカー」に反響あり! パワフルな「ターボ×専用エンジン」搭載! ド迫力ボディを“5速MT”で操る「辛口モデル」X4に大注目!
“約172万円”のホンダ新型「フィット」登場! 大人気「コンパクトカー」がやっぱりスゴイ! 全長4m級の「4代目モデル」の魅力とは
「世界一高い」日本の自動車諸税、ついに変えられる? カギは「国民民主党」!? 躍進で状況一変のワケ
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!
みんなのコメント
この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?