三菱自動車のモータースポーツ活動担当
三菱自動車が2020年度の決算報告において、2009年度で主たる活動を停止していた「RALLIART(ラリーアート)」ブランドの復活を宣言した。復活といっても11年ぶりだ。「ラリーアート」という名前を知らない世代も増えているかもしれない。
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とはいえ熱心な三菱ファンにはWRCを頂点とするラリー系モータースポーツの運営やサポートで知られているだろう。また、古いファンの中には1985年に開催された日本初のグループAレース「インターテック」において日本代表として奮闘したスタリオンのフロントバンパーに貼られたRALLIARTのロゴが印象深いという人もいるのではないだろうか。
そもそもラリーアートは、三菱のモータースポーツ活動を支える組織として1984年4月に設立された。プライベーターへの部品供給といったモータースポーツに関するユーザー支援もその役割であった。
また2000年代になってからはワークスチューニングのブランドとしても知られるようになっていった。スポーツマフラーやサスペンションなどで愛車をチューニングしたという人も少なくないだろう。
さらに、コルト・ラリーアート、ギャランフォルティス・ラリーアートのように、スポーティグレードにつけられるサブブランドといったキャラクターも与えられていた。
簡単にいえば、日産におけるNISMOのような位置づけのブランドだったといえる。
リコール隠しがラリアートの活動に大きく影響した
そんなラリーアートが主たる活動を停止する要因として、2005年に故・益子修氏が三菱自動車の社長に就任したことが大きく影響しているとする意見は多い。たしかに益子氏にはモータースポーツ嫌いという側面はあったようだ。
しかし、三菱商事出身の益子氏が三菱自動車の社長に就任したそもそもの背景には、長年のリコール隠しによる経営危機があったことは忘れてはならない。
あらためて整理すれば、三菱自動車のリコール隠しというのは2段階で社会問題となった。まず2000年には23年間にわたるリコール情報の隠蔽工作が明らかとなった。これは、計69万台ものリコール情報が隠されていたことが匿名で通報されたことで表に出ることとなった。この段階で三菱自動車の信頼は地に堕ち、資本提携をしていたダイムラー(当時はダイムラークライスラー)から社長を迎え入れ、再建を図ることにする。
ここで膿を出し切ることができていればまだよかったのだが、2004年には再びリコールを隠していたことが発覚する。ここに至り、ついに筆頭株主であるダイムラーから財政支援を打ち切られ、三菱自動車はまさに路頭に迷う状況に陥ることになる。そして三菱グループからの人材として三菱自動車の再建を託されたのが故・益子氏であった。
リコール隠しが発覚する以前は、国内市場では4位のポジションにつけていた三菱自動車のブランド力は完全に失われた。社会人野球など三菱自動車の企業スポーツ活動も休止に追い込まれるほどで、モータースポーツへの参戦を続けることも批判的な声があった。さらに、かつては最強といわれた三菱自動車のWRCマシンもレギュレーション変更を機に低迷していた。
つまり2005年に益子社長就任をきっかけに突如モータースポーツ活動を中止したというより、背景として三菱自動車のモータースポーツが縮小したことは「仕方がない」というムードもあった。モータースポーツ活動の縮小・撤退とそれに伴うラリーアートの実質的な消滅は、メディアやファンも納得せざる得ない状況もであった。
ラリーアートのブランド力でスポーツイメージの強化を図る
そんな風に実質的に消えてしまったラリーアートが復活を宣言した。おそらく、その背景にはスポーツイメージによってブランディングするという方向性があるだろう。ラリーアートというブランドを上手く活用することで、付加価値をプラスすることが期待できる。
また、注目すべきは日産がスポーツカーによってブランド価値を高めるという方向性を発表していることだ。ご存じのように三菱自動車は日産の傘下にある。そしてルノー日産三菱アライアンスではプラットフォームなどの共有化を進める方針を発表している。
日産がフェアレディZをフルモデルチェンジするなどスポーツカーをブランディングの軸にするということは、そのリソースをルノーや三菱が利用するといった可能性もあるということだ。そのとき、ルノーにはルノースポールがあり、日産にはNISMOがあって三菱に同様のブランドがないのではバランスに欠ける。
つまり、ラリーアートの復活には、三菱自動車単独でのブランド展開だけでなく、アライアンスでのリソースの活用という可能性も想像させるのである。このリソースの活用で期待したいのはなんといってもランエボの復活だが……。
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みんなのコメント
三菱の現状を見る限りは以前の様なモータースポーツに関わる事は無いと思いますね。
だいたい、投入可能な車なんて無いでしょうが。