2022年6月、「使用停止を要請するリコール」を届け出て販売を停止していたトヨタ/スバルのbZ4X/ソルテラ。不具合部位とされていたハブボルトへの恒久対策も決まり、10月6日に再販が決まった。半年近くに及んだ販売停止を吹き飛ばす巻き返しに期待したい。
それはさておき、トヨタがホイールの固定にハブボルトを使っていたのを意外と思ったクルマ好きも多いはず。一般的にハブボルトは欧州車が用いる方法で、日本車やアメリカ車ではナット式が主流だからだ。
スタッドレス交換シーズン到来! ホイール固定方式の日欧違いのなぜ 有利なのはどっち?
そこでここではタイヤ交換の際の基礎知識として、「ハブボルト留めとナット留めってなにが違うの?」という点について説明しよう。
文/ベストカーWeb編集部、写真/@Adobestock(トビラ写真=tkyszk@Adobestock)
国産車と欧州車ではネジのオスとメスが反対になる
国産車のホイール装着面。飛び出たボルトにホイールをはめナットで固定する「ナット留め」だ(chaiyasit@Adobestock)
タイヤがパンクしたり、夏タイヤをスタッドレスタイヤに交換したりするときには、クルマをジャッキアップしてタイヤ(ホイール)を脱着しなければならない。
このタイヤの脱着作業なのだが、国産車(やアメリカ車)と欧州車では微妙に作業が異なっている。国産車は車体側(ここをホイールハブという)からネジ山を切ったボルトが飛び出ていて、そのボルトにホイールの穴をはめてナットで固定するのに対し、ヨーロッパ車ではホイールハブ側に穴が開いていて、そこへハブボルトというネジを締めこんでホイールを固定する。つまりネジのオスとメスが逆なのだ。国産車やアメリカ車のような前者を一般的にナット留め、欧州車のような後者をボルト留めと呼んでいる。
こちらは欧州車のホイール装着面。ハブにネジ穴が開いていてここにハブボルトをねじ込ん込む(somchairakin@Adobestock)
どうしてボルト留めとナット留めが存在するのかには諸説あるのだが、双方の特徴をまとめると以下のようになる。
【ナット留めの特徴】
・飛び出たボルトにホイールの穴をはめるのでタイヤ交換などがやりやすい
・ホイールハブ/ホイール間の取り付け剛性がボルト留めに対して劣りがち
・ホイールやスペーサーによってはボルトの長さが足りず装着できない場合がある
【ボルト留めの特徴】
・ホイールハブ/ホイール間の取り付け剛性を高めやすい
・ハブボルトを交換するだけでさまざまなホイール、スペーサーに対応できる
・ホイールの穴をハブ側の穴と合わせてボルトを差し込む必要がありタイヤ交換が面倒
機能的にはボルト式、使い勝手ではナット式に軍配か?
重いタイヤを持ち上げるタイヤリフターという製品も市販されている(画像/エマーソン)
冒頭でも述べたとおり、トヨタ/スバルのbZ4X/ソルテラはこのホイール固定方法が欧州車のようなボルト式だった。とはいえトヨタがボルト式を採用したのはこれが初めてではなく、現行トヨタ・スープラやレクサスIS(2020年のマイチェンモデルから)もボルト式を採用している。スープラはオーストリアのマグナ・シュタイアが製造しているから当然だとしても、レクサスISが採用した理由について、トヨタは「締結力の強化と質量の低減を図ることで、気持ちのいいハンドリングとブレーキングの実現」、「高剛性化とバネ下の軽量化により、すっきりした手ごたえのある操舵フィールと質感の高い乗り心地に貢献」と説明している。
こうした説明を読むと、機能面ではボルト式のほうが優れているようにも思えるのだが、一般ユーザーからしたら取り付けの面倒くささという点でナット式に軍配を上げたい。ボルト式のタイヤ交換は、重いタイヤとホイールをホイールハブの高さまで持ち上げ、ホイールハブとホイールのボルト穴を合わせてボルトを差し込むという難作業を強いられる。特に大きなタイヤを履くSUVなどは大変で、タイヤを持ち上げるためにタイヤリフターという専用工具を購入する人もいるほどだ。
とにかく、愛車のタイヤ交換を始めて行うという人、中でも日本車から欧州車へ乗り換えたなどという人は(その逆も)、タイヤを外したときにポカンとならないように注意しよう。取り付けが終わったらナットやボルトの締めつけを確実に行うことも忘れずに!
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