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モーターショーというコンテンツはもはや終焉を迎えた? 令和を迎え変革が求められる自動車業界でのモーターショーのあり方を考える

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モーターショーというコンテンツはもはや終焉を迎えた? 令和を迎え変革が求められる自動車業界でのモーターショーのあり方を考える

近年、モーターショーは出展社数も入場者数も減少の一途をたどっている。デトロイトもパリも東京も。そして今年のフランクフルトショー(IAA)もまさにそうだった。

日本のメーカーで唯一出展していたのは、ホンダのみ。欧州ではPSAグループ(プジョー、シトロエン、DS)やFCA、アメリカ系、そして多くのイタリアンブランド(フィアット、アルファロメオ、ランチア、マセラティ)が姿を見せなかった。

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自動車ショーはもはや終焉を迎えたのか?Oliver Tamagniniそれでも話題になったのは、自国のドイツブランドから数多くのワールドプレミアが披露されたからにほかならない。メルセデス・ベンツは高級EVのコンセプトカー「ヴィジョンEQS」を、BMWは2ドアクーペのコンセプトモデル「コンセプト4」を、アウディはオフロードEVのコンセプトモデル「AI:TRAILクワトロ」や新型「RS7スポーツバック」を、フォルクスワーゲンは新型EV「ID.3」の量産モデルを公開した。さらにランボルギーニが初となるハイブリッドモデル「シアンFKP 37」を、ランドローバーが新型「ディフェンダー」を、ホンダがコンパクトEV「ホンダe」の量産モデルを発表した。VWグループが一堂に介したホール3は往時のモーターショーらしい雰囲気を感じるものだった。

Oliver Tamagnini会場となるフランクフルト・メッセは、12ものホールを有し世界最大規模を誇る。例年はそのほとんどのホールが展示で埋め尽くされ、さらに恒例として地元であるメルセデス、BMW、VWグループなどのドイツメーカーが競い合うように常設ホールよりも立派な特設ブースをつくりあげてきた。目をみはるようなスケールで、さらっと流して見てまわるだけでも数日間を要したものだ。それが今年は、自動車メーカーは従来の半数以下にまで激減していた。

BMWが発表した2台のコンセプトカー。写真左がヴィジョンiNEXT、右がM NEXT。ヴィジョンiNEXTは2021年ごろから生産開始を予定している次世代EV、iNEXTを見据えたもので、M NEXTはMシリーズの電動化された未来を表現している。Oliver Tamagnini一方で、中国メーカーが台頭し、そして完成車メーカーの減少とは裏腹にサプライヤーが大きなホールの一角を占めるようになっていた。日本からもアイシンやデンソー、積水化学、トヨタ紡織といった欧州メーカーとの取引の多い企業が出展する姿が見られた。

3月のプロトタイプ発表に続き、ついに正式発表されたホンダe。ホンダ・パーソナル・アシストという人工知能を搭載しており、音声で様々な指示を行うことができる。Oliver Tamagniniまた、大規模な会場をつなぐ中庭のアウトドアエリアには、オフロードコースや電動モビリティ、自動運転シャトルなど数々の体験型アクティビティが用意されていた。さらにそのアウトドアエリアを活用して、コンパクトながらボルボの電動化ブランドであるポールスターやマクラーレンのブースもあった。

中国のラグジュアリー・ブランド、紅旗が発表したスーパーカー、S9。V8ハイブリッドエンジンを搭載し、最高速度は400km/h、0-100km/hをわずか1.9秒で加速するというOliver Tamagnini背景にあるのは情報伝達の多様化ここで、いまなぜモーターショーはこれほどまでに縮小傾向にあるのかについて考えてみる。まず要因の1つとして挙げられるのが、インターネットやSNSの普及だろう。

フランクフルトモーターショーのような国際見本市は、そもそもは企業が自社の新製品や近い将来に向けての新技術、新たなサービスに関する情報を発信する展示会だ。プレスデイにはメーカー関係者や報道関係者が一堂に会するため、取材や会合には絶好の機会。プレスカンファレンスで新車発表を行えば、各メディアが一斉に報道してくれる。かつてのモーターショーにはそういったスケールメリットがあった。

フォルクスワーゲンが発表した量産EV、ID.3。EV専用に設計された新プラットフォーム「MEB」を使用した最初の市販車となる。発売は2020年を予定している。ところが、もはや会場に足を運ばずともカンファレンスの様子は世界中に配信され、新型車の情報はあっという間にインターネット上に拡散されるようになった。また報道関係者のみならず、メーカー自身や、あるいは個人でもサイトやブログやyou tubeなどのオウンドメディアをもつことが可能になった。

ヒュンダイが展示したコンセプトカー、45コンセプト。ヒュンダイのEVの方向性を示すものであり、「Sensuous Sportiness」というデザインコンセプトに則って設計された。Oliver Tamagniniこれによって起きたのが、情報発信の多様化、分散化だ。例えば、今年のフランクフルトショーを辞退したフェラーリは、プレスデイの前日にイタリアで「812GTS」と「F8スパイダー」という2台の新型車を発表した。同社が所有するフィオラノ・サーキットに特設会場を設け、この報道発表会を皮切りに「Universo Ferrari(フェラーリの世界)」というブランド展示をオーナーやファン向けに行っている。

じつはポルシェも初のEVである「タイカン」のワールドプレミアを、フランクフルトショーのときではなく、あえてその1週間前に、主要なマーケットである欧州、北米、中国の世界3カ所で同時に行った。太陽光、水力、風力という自然エネルギー発電所に特設舞台をつくった非常に大掛かりなもので、そこに費やされた予算はおそらくフランクフルトショーの展示コストの何倍、何十倍にも及ぶものだろう。そのモデルがもつ意味やTPOに応じた情報発信の場が選ばれているというわけだ。

ただ、モーターショーの縮小傾向といってもそれはかつての自動車先進国で行われてきたモーターショーに限ってのものだ。先のポルシェがタイカンのワールドプレミアを中国で行ったように、多くの自動車メーカーにとっての最重要市場は中国になりつつある。現に中国の上海モーターショーや北京のモーターショーの出展社数や入場者数は年々増加している。おそらくその傾向はしばらく続くだろう。

変化が求められているもう1つの要因として、多くの人のライフスタイルにおいて自動車という商品の位置付けが変わってきたことが挙げられる。2016年に当時のダイムラーの会長、ディーター・ツェッチェ氏が4つのキーワードの頭文字をとった“CASE戦略”(「Connected」:接続性、「Autonomous」:自動運転、「Shared & Services」:カーシェアリングなど、「Electric」:電気自動車)を打ち出して以降、それは加速している。

メルセデス・ベンツが発表したEVセダンのコンセプトカー、EQS。EQSのSは、Sクラスを表している。最大700kmの航続距離を実現しているとし、最高速度は200km/h。そしていま、自動車業界は100年に一度の大変革期を迎えたと言われる。にも関わらず、これまでと同じ手法を用いたモーターショーというコンテンツが発展し続けると考えるほうがおかしくないだろうか?

Oliver Tamagnini自動車がそうであるように、かつての自動車先進国のモーターショーはかわるべきタイミングにあるということだ。すでに米国の最先端の家電見本市である「CES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)」やスタートアップの一大イベント「SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)」に参加する自動車メーカーだって数多くある。

アウディが発表した電動キックボード、e-toronスクーター。スケートボードの要素も併せ持っており、ハンドルを握りながら体重を移動することによって操ることができる。Oliver Tamagniniちなみに今年10月24日にはじまる東京モーターショーに出展する海外メーカーは、「メルセデス・ベンツ」、「スマート」、「ルノー」、「アルピナ」のわずか4ブランドのみ。本来の会場である東京ビッグサイトの一部が来年のオリンピックに使用される影響で、ビッグサイトの西&南展示場と約1.5km離れた青海展示棟、メガウェブというように会場を分けての開催となる。海外メーカーの出展数は激減、会場移動の便は悪い。

Oliver Tamagniniとはいえ、東京モーターショーは、もはやグローバルショーである必要はない。日本にはトヨタをはじめ乗用車メーカーだけで9つもあり、優れたサプライヤーも数多い。誰の言葉か知らないが“終わりは新たな始まり”という名言もある。さまざまなスタートアップも巻き込んで、これからの東京モーターショーは世界に名だたる“ローカルショー”を目指せばいいと思う。

文・藤野太一 写真・IAA 編集・iconic

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