バイエルンのパフォーマンスセダン/クーペ
text:Greg Kable(グレッグ・ケーブル)
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translator:Takuya Hayashi(林 汰久也)
BMWは、待望の新世代M3セダンとM4クーペを発表。フロントマスクのデザインを一新し、ドライブトレインも大幅に見直された。
来年3月には、より強力なコンペティション・モデルのみが英国で販売される予定だ。コンペティション・モデルは6気筒エンジンから最高出力510psを発揮し、オプションの完全可変式四輪駆動システム「M xドライブ」が初めて採用される。
英国での車両価格はM3コンペティションが約6万5000ポンド(878万円)から、M4コンペティションが約7万ポンド(945万円)からとなる。
M4 xドライブとその兄弟車であるM3 xドライブは、後輪駆動モデルに続いて来年夏に英国のショールームに登場する予定だ。
セダンとクーペに加えて、BMWは史上初のM3ツーリング(ワゴン)、M4カブリオレの後継モデル、M4グランクーペ(4ドアクーペ)も開発しており、さらにパワフルでサーキット走行に特化したCSもラインナップに加わる。
抜本的なデザイン変更
M3とM4のスタイリングは、視覚的インパクトの強さを重視しており、上位に位置するM340i xドライブやM440i xドライブとの差別化を図っている。
35年の伝統を持つ両モデルは、7つの水平ルーバーと大型の縦型グリルを中心とした個性的なフロントマスクを採用している。
グリル形状は新型4シリーズと同様だが、シングルフレーム・デザインではなく2つに分割されている。
さらに、重厚なフロントバンパー、フルLEDヘッドライト、グリルの位置と呼応したボンネット上の2つのエアダクト、ダブルアームのサイドミラーなど、ユニークな仕上げが施されている。
カーボンファイバーで強化された樹脂製のルーフに、空気の流れを最適化する2本の「レール」、トランクに取り付けられたスポイラー、リアディフューザーおよびクロームメッキのテールパイプを備えた新リアバンパーを採用している。
M3の全長は先代モデルから108mm延長され4794mm、全幅は26mm拡大されて1903mm、全高は8mm高くなって1433mmと、全体的に大型化している。
M4の全長はM3と同じだが、全幅は1887mmで先代から18mm伸び、全高は1393mmと1mmだけ上がっている。ホイールベースは両車共通の2857mmで、先代より45mm長くなっている。
両車のボディカラーは、今回公開された車両のサンパウロイエロー(ノンメタリック)とマングリーン(メタリック)に加え、トロントレッド(メタリック)が追加された。
また、オプションのMカーボン・エクステリア・パッケージとMパフォーマンス・パーツセットも用意されている。
エンジンとパフォーマンス
メルセデスAMG C 63のライバルとなる両車は、アルミスチールとコンポジットのボディに、新開発の3.0L 直列6気筒ツインターボエンジン(コードネームS58)を搭載している。
この縦置きエンジンは2種類の出力が設定されており、標準的なM3とM4モデルでは493ps、M3コンペティションとM4コンペティションでは510psを発揮する。それぞれ先代のS55ユニットと比較して52psと56ps向上している。
さらに、M3コンペティションとM4コンペティションの510psは、2018年に発売されたM3 CSとM4 CSから48ps増加させたものだ。
車両重量が1730kgであることから、M3コンペティションは1トンあたり303psのパワーウェイトレシオを実現。一方、5kg軽量化されたM4コンペティションは、1トンあたり304psを達成している。
参考までに、ライバルであるAMGの4.0L V8ターボエンジンは、標準のC 63で475ps、C 63 Sで510psを発揮する。セダンの車両重量は1730kgで同じだ。
M3とM4は、高性能SUVのX3 MとX4 Mに続いて、S58エンジンを搭載した3番目、4番目のBMWである。
可変バルブタイミング機能のバルベトロニックや、可変カムシャフトタイミング機構のダブル・ヴァノスなど、基本的なアーキテクチャーは先代のS55と共有しているが、複数の新要素が追加されている。
変更点としては、ストロークを90mmに微増し、掃引量を14cc増加させて2993ccとしたことが挙げられる。
また、ターボチャージャーの改良、最高350barの圧力で作動する燃料噴射システム、排出ガス削減のためのガソリン・パーティキュレート・フィルター(GPF)なども採用されている。
最大トルクは56.1kg-mで先代と同じだが、2650rpm-6130rpmの回転域を800rpm上げられている。コンペティション・モデルでは、2750rpm-5500rpmで10kg-m増加して64.8kg-mとなっている。新型エンジンは旧型よりもわずかに低い7200rpmまで回転を上げることが可能だ。
こうした性能向上により、シャープな加速を実現した。0-100km/h加速が標準モデルで4.2秒(0.2秒短縮)、コンペティションで3.9秒(0.1秒短縮)となっており、後者は旧型のM3 CSとM4 CSのタイムと同じだという。
最高速度は250km/hに制限されているが、購入時にドライバーズ・パッケージを指定することで、パフォーマンスタイヤとの組み合わせにより290km/hまで上昇させることができる。
標準モデルには、このクラスでは珍しくなった6速MTが引き続き設定される。
一方、コンペティション・モデルには、先代モデルで採用されていた7速デュアルクラッチを廃止し、BMW Mのソフトウェア・プログラム「Drivelogic」を搭載した8速トルク・コンバーターが新たに採用されている。
標準モデルは、電子制御アクティブMディファレンシャルを備えた後輪駆動で、コンペティション・モデルには、2020年半ばからBMWの完全可変M xドライブシステムが採用される。両モデルに四輪駆動が採用されるのは初めてとなる。
走行モードはM5と同様に、4WD、4WDスポーツ、ダイナミック・スタビリティ・コントロール・システムをオフにした2WDの3つが用意されている。後者は、パワーの大部分を後輪に集中させる。
新シャシー ボディ剛性アップ
M3とM4のシャシーは、M340iとM440iのシャシーをベースに、アルミニウムを多用したダブルウィッシュボーン(フロント)と5リンクのリアサスペンションとアダプティブ・ダンピング・コントロールを組み合わせている。
アロイホイールはフロントが18インチ、リアが19インチで、それぞれ275/40、285/35プロファイルタイヤを装着している。
フロントキャンバーの増加、各スプリングとダンピングレートの向上など、独自のサスペンション設定となっている。
また、フロントのトレッドは1617mm、リアは1605mmと、先代よりもそれぞれ34mm-38mm増加している。
BMWのM部門は、M3とM4のボディ剛性を高めるため、さまざまな工夫を凝らしている。エンジン・ベイの前部とフロント・サスペンション・タワー、そしてサブフレームを備えたリアボディにはブレースが装備されている。
両車ともに、可変レシオを特徴とするMサーボトロニック・ステアリング・システムが標準装備されているほか、ブレーキ・システムのM専用バージョンが採用されており、2種類のブレーキ・レスポンスとペダル・フィールを設定することが可能だ。
インテリア M専用装備が充実
インテリアでは、M340iとM440iを踏襲し、新開発のMスポーツシートを採用。ベンチレーターも初めて選択できる。
また、走行モードを簡単に操作できるMモード・ボタンを備えたMスポーツステアリングホイール、M専用デザインのデジタルメーターやインフォテインメントシステムなど専用パーツが装備されている。
標準装備としては、クラウドベースの衛星ナビ、アップル・カープレイとアンドロイド・オートに対応したBMWのライブ・コックピット・プロフェッショナルをはじめ、トライゾーン・クライメート・コントロール、LEDアンビエントライトなどがある。
新しい運転支援システムも多数用意された。
M専用グラフィックを採用した最新世代のヘッドアップ・ディスプレイ、カメラを使って車両周辺の映像を記録する「BMWドライブ・レコーダー」、超高輝度レーザー・ヘッドライトなどをオプションとして選ぶことができる。
また、M3とM4には、オプションのMドライブ・プロフェッショナル・システムも新たに追加された。
このシステムには、ダイナミック・スタビリティ・コントロールを10段階に調整できるMトラクション・コントロール機能や、通常のラップ・タイマー機能に加えて走行データを記録・評価するドリフト・アナライザーが搭載されている。
BMW M3の歴史
E30 製造:1986~1991年 エンジン:4気筒 1990-2467cc 最高出力:191-238ps 重量:1165-1360kg
この記念すべき初代M3は、元々はドイツのDTMレースシリーズのためのホモロゲーションスペシャルとして作られたもので、5000台しか生産される予定がなかった。
だが、最終的には1万8000台近くが生産され、その中には、ボアアウトされたシリンダーを備えた限定生産のスペシャルモデルも含まれていた。また、コンバーチブルも用意された。
E36 製造:1992~1999年 エンジン:6気筒 2990-3201cc 最高出力:286-316ps 重量:1460-1515kg
6ポットエンジンを搭載し、新たにセダンボディが追加されたにもかかわらず、E36は初代のような伝説的な存在になることはなかった。しかし、最近は人気が高まっている。
また、SMGオートマチック・マニュアル・トランスミッションを搭載した最初のM3でもある。7万台以上が製造された。
E46 製造:2000~2006年 エンジン:6気筒 2990-3201cc最高出力:286-316ps 重量:1460-1515kg
ドライバーの視点から見ても最高のM3の1台として広く知られているE46は、E36のパフォーマンスを踏襲しつつ、快適性を向上させている。
装備を簡略化したCSLバージョンも登場したが、セダンは用意されなかった。エステート(ワゴン)のプロトタイプが作られたが生産されることはなかった。
E90/E92/E93 製造2007~2013年 エンジン:8気筒 3999-4361cc 最高出力:420-450ps 重量:1580-1810kg
2000年代半ば、BMWはM3の公式を覆し、定評のある直列6気筒を廃止して、パワフルかつ高回転のV8を採用した。
この変更には多少の賛否両論はあったものの、ライバル車との差別化が図られたほか、セダンのボディスタイルも復活した。
注目すべきは、不器用なSMGに代わってデュアルクラッチ・トランスミッションが新しく採用されたことだ。
F80 製造2014~2019年 エンジン:6気筒 3027cc ツインターボ 最高出力:430-500ps 重量:1572-1622kg
F80は直列6気筒エンジンを搭載することでM3のルーツに立ち返ったが、ターボチャージャーを初めて採用するなど、一工夫を加えている。
最大トルクは大幅に増大し、ワイルドなハンドリングを実現した。しかし、新排ガス規制の影響で生産は早期に終了。クーペモデルは初めてM4と名付けられた。
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