2021年3月12日に、1年後の2022年3月をもってS660の生産を終了する旨が発表されるや注文が殺到、同時に最後の特別仕様車としてモデューロX バージョンZも発表されたが、バージョンZだけでなく、すべてのカタログモデルの生産枠が2週間弱で埋まり完売してしまった。
生産終了の判断がなされたのは、2022年より順次、騒音や燃費規制、安全関連などさまざまな法規制への対応が求められるようになるため、今後も販売を継続するには大がかりな開発対応が必要になることを受けて、総合的に検討した結果だという。
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しかしこの生産終了というニュースを受けて、S660の中古車流通台数が一気に減り、高騰しているという。さっそく、中古車事情に詳しいモータージャーナリストの萩原文博氏が徹底レポート!
文/萩原文博
写真/ベストカーweb編集部 ホンダ
【画像ギャラリー】MUGEN RA、Modulo X……ホンダ S660の足跡を写真で辿る
■生産終了がアナウンスされたS660に何が起きてるのか?
受注生産が終了したホンダ S660
20年ほど前、中古車販売店に取材に訪れた時に「外国の方の購入相談下さい」という張り紙を見かけた。当時は30万円以下など価格の安い中古車を中心に海外のブローカーが購入していた時代。
日本から海外に流出するクルマといえば、日本人があまり手を出さない価格の安い中古車が中心で、日産フィガロの中古車が流出したというのはレアケースだった。
しかし、時を経て1980年~1990年代の国産スポーツカーが北米の25年ルールにより、輸入解禁となると情勢が一変。
ご存じのとおり、R32型スカイラインGT-Rをはじめ、マツダRX-7などの国産スポーツカーの海外流出が勢いを増し、流通台数の減少、中古車相場の高騰を招いたのだ。
そのほかにもJDMやアジアのドリフトブームなどさまざまなクルマカルチャーが流行し、国産車がどんどん海外へと流通する「中古車のグローバル化」が進んだのだ。
現在はスポーツカーだけでなく、アルファード/ヴェルファイアなどもアジア圏では非常に人気が高いし、スリランカなどはプレミオ/アリオンは高級車としてどんどんと輸出されているのだ。
そして、この「中古車のグローバル化」の影響で、現在中古車の流通台数が激減、中古車相場が高騰している車種がある。それが先日、生産終了まで1年のカウントダウンが始まった、ホンダS660だ。ここでは、最新のS660の中古車相場で何が起きているのかを検証する。
■生産終了のアナウンス後、2ヵ月の間に500台以上が中古車市場から消えた
生産終了の告知から2ヵ月で中古車市場でのS660は激減した
S660前期型の中古車情報はこちら!
軽オープンカー、ホンダS660の2022年3月で生産終了するとアナウンスされたのが、2021年3月12日のこと。そして3月30日には新車の販売枠が終了したことがアナウンスされた。
このタイミングでS660は実質的に新車購入ができなくなったということになる。その時点では、S660の中古車は、流通台数は約620台。平均価格は約180万円で推移していた。
しかも2020年12月から平均価格はほぼ180万円で推移していて、横這いという状況だった。生産終了のアナウンスがされて、まず動き始めたのが中古車の流通台数だ。
アナウンス直後から減り始め、4月の上旬には400台を割り込み、4月末のゴールデンウィーク前には200台を切ってしまった。5月に入っても減少傾向に歯止めが掛からず、現在の流通台数は約94台(5月19日時点)となんとわずか2ヵ月の間にS660の中古車は500台以上が姿を消してしまったのだ。
S660の中古車の平均価格は4月の中旬までは値落ち傾向が続き、約174万円まで値落ちが進んでいた。しかし、その価格を底値に一気に値上がりへと転じて、現在の平均価格は約194.7万円まで高騰している。
なんとわずか1ヵ月足らずで、平均価格が約21万も値上がりしてしまったのだ。平均価100万円台の中古車で約21万円の値上がり幅というのはもう暴騰としか言いようがない状況だ。
しかも現在でもS660の中古車の流通台数は減少傾向が続いており、値上がり傾向も現在進行形。一体この後いつ落ち着くのかも正直見当が付かない。まさに生産終了のアナウンスがS660中古車狂騒状態を引き起こしてしまったということになる。
■500台のS660は海外へ流出したのか?
2016年10月3日に限定660台、289万円で発売されたS660 MUGEN RA
この短期間で500台という中古車が市場から姿を消すというのは摩訶不思議な現象だ。そこで、知り合いの中古車販売店スタッフに話を聞いてみた。
関西圏で中古車販売店を営む知り合いに聞いたところ「S660の中古車は生産中止という情報が流れてから、海外で一気に火が付いたようで、香港やイギリスのバイヤーが買い集めているようです」という返事だった。
そして、海外市場にも精通する知り合いに聞いてみると「私の香港の知り合いは関わっていないと話していましたが、そういった動きはあるかもしれない」という返事が来た。
確定とは言えないが、香港やイギリスといった海外のバイヤーが、軽オープンカーという今後登場することのないレアなクルマということで、S660の中古車を手に入れて、海外に輸出する可能性が高いようだ。
これは25年ルールでも当てはまるのだが、1度でも海外に流出してしまったクルマは2度と日本の地に帰って来ることはない、と言われている。
そうなるとS660の中古車は大量に海外に流出したことで、国内に流通している中古車の流通台数は減少、相場は高騰という最悪の事態は避けられない状況となっているのだ。
ちょうど、生産終了がアナウンスされた時のS660の中古車の価格帯は約103万~約400万円。その時点でのグレード構成は、αが約480台、βが約55台、モデューロXが約23台。ファーストエディションと呼べるコンセプトエディションとムゲンRAがそれぞれ約14台だった。
そして、トランスミッションはCVTとMTの比率はほぼ50:50となっていて、価格帯はCVTが約103万~400万円。MT車は約118万~約400万円と若干MT車のほうが高くなっていた。
■価格の安い中古車やMT車が激減!
2020年1月にマイナーチェンジを実施。ボディカラー追加やホイールデザインの変更などがトピック
S660後期型の中古車情報はこちら!
現在のS660の中古車の価格帯は約123万~約420万円と最安値、最高値とも20万円アップしている。3月の時点では約160台あった160万円以下の中古車はわずか6台へと激減。価格の安い中古車がごっそり姿を消してしまっているのだ。
グレード構成はαが約64台、βが約20台、コンセプトエディションが約3台、モデューロXが2台そしてムゲンRAが約1台。そのほかが約4台となっており、価格の安いクルマだけでなく、モデューロXやムゲンRAといったスペシャルモデルも大幅に減少している。
そして、最も驚いたのは、トランスミッション。約94台の中古車のうち約74台がCVT車で、MT車はわずか20台と激減してしまったのだ。
ホンダS660は2015年2月にαとβの2グレードで販売開始された。この時に発売を記念して、660台限定の特別仕様車「S660コンセプトエディション」を発売。
2017年5月にαをベースとした特別仕様車「ブルーノレザーエディション」を発売。同年10月にはβのCVT車をベースとした「コモレビエディション」という特別仕様車を発売。
2018年5月には一部改良を行うとともに、コンプリートモデルの「モデューロX」を追加している。同年12月にはαをベースとした特別仕様車の「トラッドレザーエディション」を発売。そして2020年1月S660は初のマイナーチェンジを行い、内外装の変更を行っている。
■モデューロX バージョンZの未使用車は約420万円というプレミアム価格!
S660最後の特別仕様車、Modulo X Version Z。ボディカラーは「ソニックグレー・パール」(写真手前)と、「プレミアムスターホワイト・パール」(写真奥)の全2色
S660モデューロXの中古車情報はこちら!
そして2021年3月12日にファイナルモデルともいえる「モデューロX バージョンZ」を発売した。この変遷により、2015年3月から2019年12月までを前期型、2020年1月のマイナーチェンジ以降を後期型とすると、現在中古車のうち約90台が前期型、残りの4台が後期型となっている。
2021年3月に生産終了のアナウンスがあったものの、まだ1年弱はS660の新車は生産される。しかし、2021年式のモデューロXの未使用中古車が約420万円というプレミアム価格になっているように、今後市場に出回るS660の中古車はこういったプレミアム価格の未使用中古車が多くを占める可能性は高い。
また、現在所有しているオーナーが手放したとしても、100万円台の中古車として出回る可能性は現在の情勢からするとかなり期待薄だ。
新車は定価があるが、中古車は需要と供給のバランスで価格が決まるものである。海外のバイヤーが高値を付けて、どんどんと海外流出してしまうと日本国内のユーザーにとってS660の中古車は高嶺の花というものになってしまう。
もし、購入を考えているのであれば、この値上がり傾向がいつまで続くかわからないので、すぐにでもアクションしたほうが良いだろう。できれば、この値上がり傾向が1日でも早く落ち着いてもらいたいが、その見通しは立っていないのが現状だ。
まさに、この寝耳に水ともいえるS660の中古車の流通台数の減少、そして値上がりは、「中古車のグローバル化」によるものだろう。
また、ホンダが2040年にはEV、FCVをグローバルで100%にするという社長会見の影響も拭いきれない。
ミドシップにエンジンを搭載した軽オープンカーという唯一無二のS660の存在が世界に認められたともいえるかもしれないが、今後このような生産終了とともに急激な相場の高騰は珍しいことではなくなるのかもしれない。
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ホンダは再生産を発表してぎゃふんとしてほしい