12月7日、日産自動車(以下、日産)は、俳優・伊藤かずえさんが30年以上愛用している「シーマ」のレストアを完了したことを発表した。
補修部品、ありました!
伊藤かずえさんは、ドラマや映画での活躍にくわえ、初代シーマの最上位グレードである「TYPEIIリミテッド」(1990年型)を新車から乗り続けていることでも知られている。かつてGQ JAPANでもレストア直前の愛車を取材した。
これまで伊藤さんは、シーマとの日々を、自身のブログやSNSなどで発信していた。そこで日産は、シーマを愛する伊藤さんに感謝し、今後も長く乗り続けていただきたい、との気持ちを込め、レストア(復元)を申し出た。
実際の作業は、2021年4月から日産のグループ会社である「オーテックジャパン」が取り組んでいた。
2桁ナンバー物語 横浜33の日産シーマと女優・伊藤かずえさん 前編/後編
12月7日、NISSAN CROSSING(東京都中央区銀座五丁目8番1号)にてメディア向けに披露された初代シーマは、まるで新車のようにピカピカに輝いていた。
とくにボディが美しい。以前は、伊藤さんとお父様で補修した部分もあったが、すべて塗り直され、ボンネットのマスコットやリアのエンブレムは再メッキによって輝きが復活した。
「エンジンやドアを外して全塗装を施しました。これからも長く乗っていただくため、見えない部分も塗装いたしました」
レストアを担当したオーテックジャパンの生産技術・製造部 一品手配・設計グループの松木良晃さんはそう語る。ただし、当時の「スーパーファインコート」という塗装手法は、ラインが残っていないため出来なかったという。
意外だったのはメーカーの補修部品によってレストアされた箇所が多かったことだ。たとえばドラミラーワイパーやエア・サスペンション関連、フロントグリルなどは補修部品があったという。
「補修部品はバックオーダーがある程度たまるとつくられます。初代シーマも、バックオーダーがたまる部品が今もあります」と松木さん。
ただし、“タイミング”が重要とのこと。調べてもなかった補修部品が、ある日、つくられていた! というケースは多いそうで、根気よくチェックする必要があったという。
ただし、モケットのシート表皮やアルミホイールなどはあらたに製作している。新車当時に限りなく近づけるため、とくにシート表皮は素材にこだわったそうだ。
そのかいあって、インテリアも新車のように美しい。「ドアトリムなどといった樹脂部品の着脱がとくに大変でした。経年劣化で割れてしまう可能性が高いからです。割れてしまうと復元は出来ません。3Dプリンターを使えば、おなじ形のものこそつくれますが、当時の“味”は出せません」と、松木さん。できる限り、当時のものをリフレッシュし、再利用したという。
シーマならではの快適装備に加湿器がある。こちらは内部をクリーニングし、かつ後付けのスピーカー位置を調整することでふたたび使えるようになったそうだ。
エンジンは、すでに1度載せ替えていたこともあって大きな問題はなかったものの、電装品の劣化がひどかったため、手をくわえたそうだ。
以前、取材したとき、伊藤さんは、「最近、都内に出るときは路線バスと電車を乗り継いでいます。そのほうが疲れないので。事故のリスクも減らせますし、ガソリン代も節約出来ますから(笑)。平均燃費ですか? 今はリッター4kmぐらいかもしれません」と、いって、「(都内に向かう)途中で止まる可能性もありますからね」と、冗談めかして笑っていた。
松木さんは「これからは安心しれ乗れます!」と、太鼓判を押す。
今後、一般ユーザー向けにもレストア・サービスを提供する可能性はあるのだろうか?
日産の日本マーケティング部 ブランド&メディア戦略部の松村眞依子さんによると、「レストアをしてほしいという声は多いものの、まだ課題があるため、解決しなくてはなりません。ただし、NISMOでは一部モデルのレストアを手がけています」という。
伊藤さんのシーマを契機に、日産も旧車のレストアを本格的に手がけてくれたらいいのに……と、ちょっぴり思った。
2桁ナンバー物語 横浜33の日産シーマと女優・伊藤かずえさん 前編/後編
現在、マツダが初代「ロードスター」のレストア・サービスを提供したり、トヨタが「AE86」の補修パーツの一部を販売したりするなど“旧車ビジネス”は盛り上がりつつある。日産も、グループ会社のNISMOが「R32型スカイラインGT-R」の補修部品を手がけている。
電動化によってガソリン車の未来はどうなるかわからない。メーカー側が“旧車ビジネス”に乗り出せば、古いクルマの価値は爆上がりになる、かもしれない。
文・稲垣邦康(GQ) 写真・安井宏充(Weekend.)
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みんなのコメント
買い替え需要を促進しているのだろうけれど、調子がよく、燃費も15Km/L以上走りそれほど悪くない車はまだまだ世の中には数多く走っていると思う。
その言う当方もH社ではあるが、14年以上経過しているもののすこぶる快調で、全く壊れる様相など微塵も感じない。
それなのに税金を上げていき、買い替えを促進するというのはいささか本末転倒だろう。
今日NHKで土光氏の放送をしていた。
質素倹約を実践されており、最も省エネを代表するやり方に感銘を受けた。
この税制は全く逆と思われる。
自公政権のばらまきを止める必要があるだろう。
少しそれたが、大事に乗っている車に至ってはむしろ軽減税制が正しいと思う。