現在の3シリーズに至る源流、マルニのさらに源流となった1600-2
2024年10月9日~10日、米国ペンシルヴェニア州のテーマパーク「ハーシーズ・チョコレートワールド」で開催されたクラシックカーミーティングのオフィシャルオークション、RMサザビーズの「Hershey」セールは、BMWの出品が豊作となりました。今回はその出品車両のなかから、BMWの記念碑的モデルともいうべき「1600-2」をピックアップ。モデルのあらましとオークション結果についてお伝えします。
「マルニ」ことBMW「2002」が600万円弱で落札! 人気の丸テールにヨーロッパ仕様のディテールがおしゃれなノイエクラッセを紹介します
名車「マルニ」のオリジン、BMW 1600-2とは?
BMW「1600-2」は、第二次世界大戦の終結後に長らくBMWを苦しめていた債務超過からの救世主ともいうべき革新的なミドル級セダン「ノイエ・クラッセ」から発展した、コンパクトなスポーツサルーンである。
ノイエ・クラッセで初披露された直列4気筒SOHCクロスフローユニット、前:マクファーソンストラット/コイル、後:セミトレーリングアーム/コイルの4輪独立懸架などの優れたテクノロジーはそのまま、ホイールベースおよび全長×全幅ともに小型化。
ドアの数も4枚から2枚に減らされた分、よりリーズナブルな価格で販売されたこのモデルは、ダウンサイジングの結果として得られた軽量化によってノイエ・クラッセよりも活気にあふれ、より速いスポーツサルーンとなった。
車名の「1600」は1.6Lを意味する
車名の「1600」は1.6LのM10型直列4気筒SOHCエンジンを搭載すること、「2」は2ドアボディであることを意味し、1966年のジュネーヴ・モーターショーにおいて「1600-2」と命名されてデビューした。
このモデルは1971年には「1602」へと改名。直接の後継車である普及版「1502」が登場する1975年に至るまで、ツインキャブレター化された「Ti」バージョンや限定生産のバウアー製カブリオレ、「ツーリング」と命名されたハッチバックモデルなど、さまざまなスタイルで生産されることになった。
当初から高い人気を誇ったこのモデルは、スポーティで日常的な自動車メーカーとしてのBMWの名声を確立したものの、自動車の歴史における最大の功績は、よりパワフルで高い人気を誇る「2002」への道を開いたことといわれている。
そして、一連の「02」ファミリーの大ヒットこそが、現在に至るBMWの保守本流「3シリーズ」へと継承される起源となったのだ。
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歴史的価値と人気を秤にかければ……?
2024年10月初旬、「Hershey 2024」オークションに出品されたBMW 1600-2は、「1602」へと改名される前年、1970年に生産された1台。カラーコード023の「グラナダ」で仕上げられ、イタリアに新車で納車された。2017年にオランダのディーラーが入手するまで、イタリアに保管されていた。
2017年当時、このクルマは驚くほどに無傷で、年式の割に摩耗が少なかったという。また、その以前の段階で工場出荷時の正しいボディカラーであるグラナダ・レッドで再塗装されており、オリジナル性が高いと思われていたようだ。
今回のオークション出品者でもある現オーナーは、同じ2017年にオランダでこの1600-2を入手。すぐに母国であるアメリカに送り、自身が所有するクラシックBMWの素晴らしいコレクションの一角に加えた。
正確さとディテールにこだわる現オーナーは、2018年に1万ドル以上を投じて、ショックアブソーバーやゴム製のシール類、ブッシュ、ホース、そのほかの機械部品や化粧部品の多くを交換し、このクルマを路上へと復帰させることに成功した。
いっぽうインテリアは、もとより年式からするとありえないほどきれいで、おそらくこの1600-2がずっと愛され、あまり乗られず、大切に保管されていたことを示している。
近年のマーケット相場からすると高め……?
このBMW 1600-2について、RMサザビーズ北米本社は「希少なファクトリーカラーとアロイホイールを備えたこの素晴らしい1600-2は、自動車関連の集まりで話題になること間違いなし」というPRフレーズを添えるとともに、2万5000ドル~3万5000ドル(当時のレートで約370万円~約518万円)という、現在の2002の相場価格に近いエスティメート(推定落札価格)を設定。また、このロットについては「Offered Without Reserve(最低落札価格なし)」で行うこととした。
この「リザーヴなし」という出品スタイルは、ビッド(入札)価格の多寡を問わず確実に落札されることから会場の購買意欲が盛り上がり、エスティメートを超える勢いでビッドが進むこともあるのがメリット。しかしそのいっぽうで、たとえ出品者の意にそぐわない安値であっても落札されてしまうという不可避的な落とし穴もある。
そして迎えたオークション当日の競売は、リスクを冒したことが裏目に出てしまったようで、終わってみればエスティメート下限を下回る2万3100ドル、日本円に換算すれば約355万円という、出品者側からすれば不本意だったとも推測される落札価格で、競売人の掌中のハンマーが鳴らされることになったのだ。
ただし、このハンマープライスは1600-2ないしは1602のマーケット相場からすればけっこう高めであるのも事実。現在の3シリーズに至るオリジン「マルニ」のさらに開祖という歴史的価値があっても、国際マーケットですでに人気モデルとなっている2002の相場に拮抗するまでは行かない……、ということなのだろう。
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