7人乗り仕様が加わってファミリー向けの性格になった?
元祖プラグインハイブリッドSUVの「三菱 アウトランダーPHEV」がフルモデルチェンジ。バッテリー容量を先代モデルから40%増の20kWhへと拡大して、EV走行距離は83~87kmに伸びています。日常はほぼEVとして使える性能を実現しながら、従来の5名乗り仕様に加えて、7人乗り仕様を用意したのが注目点となります。
>>三菱 アウトランダーPHEVのおすすめグレードとユーザーの評価を見てみる
では、新型アウトランダーPHEVはファミリーカー的なキャラクターを強めたのでしょうか? よく似たパッケージの「トヨタ RAV4 PHV」と比べてみると、そうではないことがわかります。ポイントはパワートレインの構成にあります。
コーナリング重視の三菱、アシスト重視のトヨタ
アウトランダーPHEVは2.4Lエンジンと前後駆動モーターを組み合わせた電動パワートレインです。モーターの最高出力を前後で比べると、前=85kW/後=100kWと後輪のほうがパワフルになっています。これは初代モデルからの特徴で、“後輪の駆動力によってコーナリング性能を高める”三菱の思想が感じられるスペックです。
RAV4 PHVのハイブリッドシステムと比べると、その違いが際立ちます。RAV4 PHVも2.5Lエンジンと前後の駆動モーターを組み合わせるという点は似ているように見えますが、前後モーター最高出力は前=134kW/後=40kWとなっています。“後輪はあくまでも悪路走破性などの面で前輪をアシストする”という位置づけといえます。
アウトランダーPHEVはライバルと比べると走り重視のSUVであり、前後モーターを活かした電動時代のスポーツドライビングを楽しめるマシンとして開発されているのです。7人乗り仕様が加わったことでファミリーカーとしての評価も高まっていますが、その本質は走りの気持ちよさにあるのではないでしょうか。
燃費やEV走行距離ではRAV4と勝負していない!?
RAV4 PHVとの経済性比較ではそれがさらに際立ちます。
新型アウトランダーPHEVのEV走行距離は83~87kmで、日常的にはガソリンを使わなくて済みますが、長距離を走る場合はハイブリッドカーとして走ることになります。そこで重要になるアウトランダーPHEVのハイブリッド燃費はWLTCモードで16.2km/L。
2tを超える重量級モデルとして悪い燃費ではありませんが、このクラスのガソリンハイブリッドを搭載するSUVとしては「思ったほど良くない」という印象ではないでしょうか。例えば、ディーゼルエンジンを積む「マツダ CX-8」のWLTCモード燃費は15.8km/Lなので、プラグインハイブリッドとしての燃費メリットはそれほどありません。
一方、RAV4 PHVのWLTCモード燃費は22.2km/L。20km/Lを超えると数字以上のインパクトもあり、ハイブリッド燃費は大差をつけられている印象があります。EV走行距離も95kmでアウトランダーPHEVを上回ります。燃費やEV航続距離で言えば、アウトランダーPHEVはライバルほど経済的とはいえないでしょう。
新型アウトランダーPHEVの見どころはハンドリング性能!
後発モデルはライバルの数値をキャッチアップすべく開発されるので、ライバルと目されるモデルに対してスペックで明らかに劣るというのは通常は考えづらいことです。アウトランダーPHEVがRAV4 PHVの燃費性能に届いていないということは、少なくともど真ん中のライバルとは考えていないからでしょう。
つまり、RAV4 PHVは経済的なプラグインハイブリッドのSUVですが、アウトランダーPHEVはハイレスポンスな電気モーターだからこそ実現できるハンドリング性能を磨いたSUVという可能性が高いはずです。ハンドリング性能の進化をどれだけ評価するかで、新型アウトランダーPHEVのユーザー満足度は変わるのではないでしょうか。
文:山本晋也(自動車コミュニケータ・コラムニスト)
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みんなのコメント
ライバルの数値を目指しても技術力が伴わなければ結果として劣る物しかできないのは普通にある
RAV4 PHVの機構は、プリウスにも搭載されるTHS2ですからね。
だからRAV4よりHV燃費が劣るのは当たり前というか。
あとは、三菱は昔から燃費に振るのが苦手というのもあると思いますね。
新型アウトランダーのエンジンも、(アトキンソンサイクル化されているとはいえ)昔から使われている4B12ですし。
ただ、三菱の強みは4WDとその電子制御で、S-AWCは非常に良くできていると思います。
この部分では、RAV4に圧勝でしょう。
エボリューションモデルなんて出たら、さらに面白そうですね。