馬車用ボディで創業したジェームズ・ヤング
英国のコーチビルダー、ジェームズ・ヤング社は、多くの同業者のように馬車用のボディ製造で事業をスタート。軽量なブロムリー・ブロアムという仕様で、優れた定評を築いている。
【画像】優雅で機能的 ロールス・ロイス・ファントム 現行型と最新EVのスペクターも 全135枚
自動車のボディ製造へ乗り出したのは、1908年。英国のメーカー、ウーズレーのシャシーへ載せられた。第一次大戦が始まると商用車のシャシー製造へ注力し、その後は自動車メーカーのサンビームとタルボのため、ボディを量産した。
技術開発に熱心で、走行中の共鳴を防ぐ内装のヘッドライナーは、コーチビルド・ボディとして初採用している。サイドのスライドドアでは、特許を取得。後にフォルクスワーゲンが権利を購入し、コンビに採用されている。
1937年には、カーディーラーのジャック・バークレー・グループの傘下へ。アルファ・ロメオなど欧州メーカーの高級ボディを製造していたが、それを期にロールス・ロイスのみへ提供ブランドは絞られた。
第二次大戦後の従業員は120名。年間に60台前後のコーチビルド・ボディを生産し、6割は海外へ輸出された。1940年代から1950年代には、HJ.マリナー社に次ぐ規模へ成長を遂げていた。
しかし、量産車は徐々にシャシーとボディが一体のモノコック構造が主流に。新技術への対応で、ジェームズ・ヤング社は苦労することになる。
ロールス・ロイスとベントレーも、シルバークラウドとSシリーズを最後にセパレートシャシーを終了。伝統的なコーチビルド・ボディの開発は、困難なものになった。
105年に及んだ歴史 最後のボディの1つ
ジェームス・ヤング社は、2ドアのシルバーシャドウとベントレーT1を遺作として生み出し、1968年に事業を終了。105年に及んだ歴史へ幕を閉じた。熟練の職人は解雇され、多くが牛乳配達や郵便配達などの仕事へ就いたという。
今回ご紹介するのは、PV16型のファントムV。廃業する直前、1968年に初代オーナーだった実業家に納車されている。同社最後のボディの1つであることは、間違いない。
フーパー社風のクオーターウインドウを備えており、製造数は5台のみ。ミッドナイト・ブルーの塗装に、ベージュのレザー内装で仕立てられ、取り扱ったディーラーはジャック・バークレー社。当初は858 HUWのナンバーで登録された。
10年後、エンジンが換装された時点での走行距離は約14万5000km。現役で使用されてきたことがわかる。1980年代初頭からは、ロンドン西部のノッティングヒルに住む人物が所有し、1988年に映画監督のコリン・クラーク氏が購入している。
1989年に不動産業者が買い取り、1993年には香港へ。そのオーナーは4万5000ポンドを投じて、ボディの上半分を再塗装し、化粧トリムはリフレッシュ。デュアルエアコンが追加された。
現在の所有者は、とあるビジネスマン。クラシックカー・ディーラーのクラシック・オートモービルズ・ワールドワイド社によって、新たな後継者が募られている。
不安なく軽やかに流れていく巨大なボディ
筆者は幸運にも、少しの時間運転させていただいた。ボディは巨大だが、扱いにくくは感じられなかった。美しいスタイリングの仕上げは細部まで見事で、ドア開口部の境目は近寄らない限り見えないほど。
6.2L V8エンジンはシャープに回り、動力性能に不足はない。アクセルペダルへの反応は滑らかで、110km/hまで加速しても、回転数を問わず力強い。
ステアリングの反応には締まりがあり、操縦系のすべてに適度な重み付けがある。自慢のエアコンは良く利く。パワーウインドウやリアシート側を仕切るデバイダーも、静かにスルスルと動く。
同時代のシルバークラウドより全幅があるとはいえ、運転席からの視界は広く、すぐに前後左右の感覚を掴める。6m以上ある全長も、不思議と問題には感じられない。グレートブリテン島の広くはない田舎道を、不安なく軽やかに流れていく。
ドラムブレーキは、サーボが弱くなる低速域では強めにペダルを踏む必要があるものの、ある程度の速度なら頼もしい制動力を発揮する。前後のバランスも良く、漸進的に効く。
ロールス・ロイス社製の4速オートマティックは、至ってシームレスに次のギアを選ぶ。すべてがスムーズで、ドラマチックさは薄い。
優雅で実際に機能的 世界最高のリムジン
路肩へ停め、広いリアシートへ座り直す。その空間は、まさに走る応接間。あるいは、役員のオフィス。
太いリアピラーが、マリナー・パークウォード・ボディにはないプライベート感を生み出す。背もたれへ寄りかかれば、殆ど外からの視線は気にならなくなる。
ラム・ウールが贅沢に用いられたカーペットが敷かれ、目の前には補助席。インテリアの一部へ、ラジオが美しく埋め込まれている。サイドウインドウやデバイダーのスイッチも、同じく巧妙にレイアウトされている。
数10年前と異なり、通信手段の進化で、余程の実業家でも現地へ実際に足を運ぶ必要性は低くなった。それでも、1分1秒を争うような人のための移動オフィスとして、ファントムVは2024年でも活躍できそうに思える。
取り引きに疲れたら、運転を楽しむのも悪くない。これほどまでに優雅で威厳を漂わせつつ、実際に機能的なクラシックカーを、筆者は他に思い浮かべることが難しい。
同時期のシルバークラウドとシルバーシャドウは、少し競合へ劣るところがあったかもしれない。だが、ジェームズ・ヤングのロールス・ロイス・ファントムVは、世界最高のリムジンだったといって過言ではない。その評価は、現代でも的外れではなさそうだ。
協力:クラシック・オートモービルズ・ワールドワイド社
ロールス・ロイス・ファントムV ジェームズ・ヤング(1959~1968年/英国仕様)のスペック
英国価格:9700ポンド(新車時)/20万ポンド(約3800万円/現在)
生産数:196台
全長:6045mm
全幅:2007mm
全高:1765mm
最高速度:162km/h
0-96km/h加速:13.8秒
燃費:4.5km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:2722kg
パワートレイン:V型8気筒6230cc 自然吸気OHV
使用燃料:ガソリン
最高出力:223ps(予想)
最大トルク:46.9kg-m(予想)
トランスミッション:4速オートマティック(後輪駆動)
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みんなのコメント
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