この記事をまとめると
■ソープボックス(ボックスカート)レースについて解説
史上最悪のクルマにも選ばれた「スポーツカー」!? もはやジョークとしか思えないピール・トライデントの本気っぷり
■今から90年ほど前には誕生しており、自作のカートで坂を下るレースが起源だ
■自動車メーカーが本気で作った車両が参加したこともあるほど盛り上がっている
奇想天外なお手製マシンで大人がガチレース!
おバカな遊びを大真面目にやる、徹底的にやる。
これ、イギリス人の国民性かと思っていましたが、最近はわりとグローバルなトレンドになっているようです。というのも、イギリス発祥のソープボックスレース、あるいはボックスカートレースという重力だけを動力源とした原始的なレースがいまや世界中で大流行りなのですよ。
そもそもは、ソープボックスのネーミング通り粗末な木箱に、これまた廃品回収してきたような車輪を4つ付けただけの乗り物がスタート。イギリス発祥は間違いなさそうですが、いつ頃に始まったのかは不明とするのが無難そう。ですが、アメリカで記録されている最初のレースはなんと1933年だそうです。
で、この乗り物「ボックスカート」でもって坂道を下り、タイムを競うというわけですが、本当に面白いのは競争そのものではないでしょう。
日本でも「鳥人間コンテスト」なんて番組がありますが、あれガチで飛ぼうってチームもあれば、ウケ狙いのコミカルなチームもたくさん出場していますよね。同じく、ソープボックスもウケ狙い、出オチなチームがわんさかいるのです。いや、むしろそっちの方が多いかも。鳥人間コンテストと欽ちゃんの仮装大賞が一緒くたになった雰囲気と言えばわかりやすいかもしれません。
そうしたチームはコアコンピタンスが笑いですから、乗り物からして珍妙です。だいたい4輪あってもクルマっぽいスタイルをしているのは少数派。ワニ、ピラミッド、棺桶、建物などといったおよそ乗り物とは思えないデザインで観客を笑わせ、また乗員やスタート時にカートを押すクルーらがいる場合はこれまた仮装、コスプレでもって攻めてくるのがトレンドとなっています。
それゆえ、乗り物としての性能はお世辞にも高いとは言えません。スタートのステージから下り始めた途端に解体しちゃうとか、シケイン曲がれずに衝突、大破なんてのがまた爆笑を誘うわけで、これまた鳥人間と同じでじつに微笑ましい光景なのです。
自動車メーカーがF1の技術などを投入して参加した過去もある
20世紀中は直線コースがほとんどだったからか、前輪にステア機構のないリジッドマシン(?)でも事足りたのかもしれません。が、いまでは直線コースで競うことは稀でバンクあり、シケインあり、さらにはジャンプ台まで設定されているため、それなりの走行性能がなければ完走も無理。
そこで大真面目なのか、大いにふざけているのか、自動車メーカーがソープボックスレースにエントリーしてくるケースもありました。例えば、ロータスは航空力学、材料工学といったおよそ木箱と車輪のレースにふさわしくないプロフェッショナルを総動員。ついには理論上300km/h超えも可能というマシンを開発してみせました。また、ベントレーが立派なBRGにペイントされたフォーミュラタイプを開発したかと思えば、メルセデスF1チームが大昔のレースカーW25オマージュのマシンを走らせるなど、ソープボックス界の話題をかっさらっていったのです。こうした本格的(?)なマシンはグッドウッド・フェスティバルでデモレースを開催するまでに至っており、大人の遊びとして認められているのがイギリスの素晴らしいところでしょう。
※画像は実車を模したミニカー
また、ボックスカートを世界に広めた立役者はなんといってもレッドブル。日本でも東京で開催されたのでご記憶の方もいらっしゃるはず。伝統的に面白レースとして開催されていますが、かの佐藤琢磨選手までエントリーし、バンクを見事なハンドルさばきでクリアして見せるなどショーとしてのレベルは年々向上している様子。今年は大阪で開催されるとのことなので、ぜひ覗いてみたいものです。
ともあれ、こうした遊びが乗る方も見る方も楽しめるというのは平和な証拠。戦争や内紛なんてのはヤメにして、ソープボックスレースで競い合うほうがよほど大人っぽいと思うのですが、いかがなものでしょうね。
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みんなのコメント
日本も、もう少しこのようなイベントに理解してもらいたいなぁ。