ナビのデータを使いコーナー手間で減速する仕組みの搭載車も
カーナビの未来予測や最適な選択を考えるのは非常に難しい。スマートフォンのアプリを使うと地図データが最新かつプローブ情報も使えるので便利という意見もあれば、カーAVメーカーが作るナビシステムは多機能で使いやすいという見方もある。しかし、自動運転に向かっていくとするならば、カーナビは純正品一択となる可能性が高い。その理由は、自動運転では車両制御と地図データは切っても切れない関係になるからだ。また、セキュリティの面からも後付け的なデバイスを利用するというのは考えづらい。
いまどきクルマはスマホナビで十分……というが十分ではないケース3つ
さて、ナビと車両制御が連携するというのは未来の話ではない。すでに実装されている機能である。そのルーツといえるのがトヨタの「NAVI・AI-SHIFT」だ。1998年に誕生した高級セダン「プログレ」に初採用されたこの機能は、地図データによりカーブや交差点に近づいていることを検知すると、シフトダウンしたりシフトホールドしたりとスムースな加減速につながるようなシフト制御をするというものだった。
さらに地図にはない勾配のデータは車両側センサーにより演算して検知するという工夫もなされていた。この制御は、マークIIやクラウンなどにも展開され、トヨタ車ではお馴染みとなっていく。
その後「ナビ協調シフト」など地図データに合わせてシフト制御を行なう機能はどんどん洗練されていった。分岐・合流地点ではシフトダウンによりエンジンブレーキを強めたり、加速を維持するシフト制御をしたりといったことも可能になっていった。その進化における現時点の最高峰といえるのがレクサスLSに搭載されているACCとナビデータの協調制御だろう。ACCでの走行中にコーナーが近づくと、エンジンブレーキを強めるシフト制御を行ない、車線維持ステアリングも地図データとリンクするほどだ。
自動運転にはナビのデータが必要になる
こうした機能はトヨタだけが有しているわけではない。欧州メーカーではACCとナビを連動させて減速をコントロールしているモデルも増えている。また、日産の「ナビ協調変速制御」も地図データと運転操作からエンジンブレーキを有効に使う制御を可能としたものだ。安全運航と省燃費、そして運転支援といった要素においてナビとの連動が有効な時代となっている。こうした機能を持たないコンパクトカーなどであれば後付けナビやスマホナビという選択もあり得るかもしれないが、ナビと車両の協調制御域はどんどん拡大していくだろう。
さらに自動運転の実現においては地図データが車両制御に欠かせない要素となっていく。たとえば、日産スカイラインは「プロパイロット2.0」という高速道路においてハンズオフ(手放し)運転ができる先進運転支援システムを採用しているが、その実現にはより情報の緻密な3D高精度地図データは欠かせない。このデータの精度は高く、サードパーティのナビで代替することは考えられないレベルにある。自動運転は純正ナビとの協調制御が実現する機能といえるのだ。
もちろん、GoogleのようなIT企業がプローブ情報も利用して、自動運転用の高精度マップをどんどんアップデート、それを前提に自動運転が作動するという可能性も否定できない。それにしても自動運転の制御と地図データはほぼ一体化するという未来像であることには変わりない。
いずれにしても、車両とリンクしない後付けのカーナビというのは少なくとも自動運転の時代には存在しているとは考えられない。せいぜい、スタンドアロンのナビは歩行者やサイクリストが利用するものという形になるだろう。
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